第3話「自重しろ自重を!」


  牟児津は自分の発言を後悔していた。内容は事実だからまだいい。この状況であんな言い方をしてしまったことがまずかった。無意識に名探偵然とした言い回しをしてしまったことで、完全に益子のジャーナリスト根性に火を点けてしまった。さらにこの場には、日頃から牟児津が厄介事に巻き込まれては解決していると知っている樹月と宝谷、そしてなぜかあんこ飴ひとつですっかり牟児津に懐いてしまった鳳がいた。自分を支持する人間が多すぎる。


 「おっ、おおっ……!真白クン!それはまさか……君がこの事件を解決するという宣言か!?」

 「えっ、いや」

 「そうですよ!ムジツ先輩はこういう状況に慣れっこなんですから!まあクローズドは初めてですが、なんとかしてくれるでしょう!」

 「無責任なこと言うなバカ!このバカ!」

 「いや待て!そもそも一番怪しいのはアンタじゃないか!なに探偵面してるんだ!」


 牟児津に期待の眼差しが集まりつつある流れに、加賀美が待ったをかけた。花束の中からカメラが現れたとき、真っ先に牟児津を拘束しに動いたのが加賀美だった。その目は猜疑心に満ちている。そして、ファンクラブの曳木と徳井も同じ考えのようだった。


 「鳳部長!よく考えてください!花束の中に隠しカメラがあったんですよ!そいつが持ち込んだ花束だ!明らかに怪しいじゃないですか!」

 「そ、それは……確かにそうだが」

 「そいつはきっと、隠しカメラが入った花束を鳳部長に渡すために来たんだ!2年生の、それもDクラスの生徒が生徒会長の代理なんてどう考えてもおかしい!きっと汚い手を使ったに決まってる!」

 「あわわっ」

 「出口に鍵をかけたのだってそうだ!ここに鳳部長を閉じ込めて、何か企んでるんだ!そうだろ!」

 「待ちなさい、加賀美さん」


 ヒートアップしていく加賀美だが、樹月の一言でその追及はぴたりと止まった。まさに水を打ったような静けさが訪れる。


 「少なくとも鍵に関して、牟児津さんを疑うのは道理に悖ります。そうですね?」

 「えっ……?そ、そなの?」

 「はい。ムジツさんに鍵をかけられるタイミングはありませんでした」


 樹月の言葉に便乗して、戸惑う牟児津に代わり瓜生田が一歩前に出た。


 「私たちはこの部屋に入ってすぐ、鳳先輩の側に招かれました。そこでお話した後、花束贈呈に移ったんです。その間、出口の近くにはファンクラブの皆さんか演劇部のどなたかが常にいらっしゃいました。ムジツさんはこの部屋に入ってから、扉に近付いてさえいません。鍵をかけるタイミングなんてありませんよ」

 「へ、部屋に入ったときにかけたのかも知れないだろ!」

 「ムジツさんは、樹月先輩と加賀美先輩に先導していただいている、すぐ後ろにいたじゃないですか。入ってすぐを鍵をかけたら、私や益子さんはこの部屋には入れていません」

 「そーだそーだ!いいですよ瓜生田さん!もっと言ったりましょう!」

 「煽んなって!」

 「くっ……!」


 冷静に、論理的に、瓜生田は牟児津が鍵をかけた犯人ではあり得ない根拠を述べる。感情的な加賀美の追及は、瓜生田の言葉の前では説得力に欠けるように感じられた。悔しげに歯噛みする加賀美は、樹月に視線を投げかける。鋭くも弱々しい、悲壮な視線だ。


 「私も瓜生田さんと同意見です。加賀美さん。迅速に動くことも大切ですが、まずは落ち着いて状況を見極めなければいけません。学年長としての資質を疑われてしまいますよ」

 「……はい、すみません」


 加賀美の追及が止むと、同じく牟児津を疑っていた曳木と徳井も視線を外した。しかし、牟児津への疑惑が全て晴れたわけではない。むしろ、鍵より隠しカメラ問題の方が牟児津にとっては重大だ。それが隠されていた花束は、間違いなく牟児津がこの部屋に持ち込み、鳳に手渡したものだからだ。


 「ただ、隠しカメラの件については、詳しいお話を聞かなければいけません。ご承諾いただけますね、牟児津さん」

 「は、はい……」

 「いや、待ってください。そっちが先ですか?」


 加賀美に向けたそれと同様の厳しい視線を、樹月が牟児津に向ける。そこに口を挟んだのは、曳木だった。よくこの樹月に口を挟めるな、と牟児津は他人事ながら戦慄した。


 「隠しカメラは確かに問題です。でも、ここから出ることの方が優先じゃないですか?」

 「わ、わたしもそう思います!この中に鍵をかけた犯人がいるのでしょう!?わたし、恐ろしいです……!」

 「ううん。えーこ。さっちゃん。悪いけど、隠しカメラの方が重要だよ」

 「えっ……!?ファン先輩……!?」


 ファンクラブの異論を収めたのは、ファンクラブ会長の出町だった。それは、決して樹月に忖度して話を合わせているのではない。出口にかかった鍵よりも花束から現れた隠しカメラの方が先に解決すべき問題だと、確信している様子だった。

 牟児津には疑問だった。普通に考えて、隠しカメラはそれが見つかった時点で役割を終えている。壊すなりバッテリーを抜くなりして無力化してしまえば、それ以上カメラによる被害は生じない。しかし部屋から出られないのは、鍵を外して扉を開放するまではずっと被害の真っ只中だ。牟児津たちはいま、正体不明の犯人とともに監禁状態にあるのだ。


 「ではまず、はっきりさせましょう。このカメラはいったい誰のものなのか」


 それでも、樹月を初めとした一部の生徒、この部屋にいる3年生たちは揃って、鍵よりもカメラの存在を危険視しているようだった。それが一体なぜなのか、牟児津の頭の中でその疑問が反響していた。


 「盗撮犯じゃないですか?普通に考えて」

 「……!」

 「おい1年生。当たり前のことを言うな。その盗撮犯が誰かを明らかにしようと、樹月副部長はおっしゃってるんだ」

 「いや、明らかにするもなにもないでしょう。少なくとも3年生の先輩方にしてみれば、盗撮犯なんて決まり切ってるんじゃないですか?」

 「はあ?何をわけの分からないことを──!」

 「ど、どうしてそれを……知っているんだ……!?」


 益子が口にした言葉に、鳳が強く反応する。怒る加賀美とは違う、戦慄した表情だ。


 「私は新聞部員ですからね!過去の大きな事件はだいたい頭に入っていますよ!鳳先輩は1年生の頃、かなり大規模な盗撮の被害に遭っていましたね。学園内で写真を売りさばかれるほどに!」

 「ッ!?しゃ、写真……だと!?」

 「はああッ!?そ、そうなの!?緋宙知らないんだけど!?初耳!」

 「そりゃそうですよ。その後、この事件については箝口令が敷かれたようですからね。伊之泉杜学園でまさかの不祥事!生徒が生徒を盗み撮りした上に学園内で違法な売買をしていたとあれば!そりゃあもう!」

 「そんなことまで……!」


 おそらくその箝口令はまだ生きている。にもかかわらず、益子は閉鎖空間であるのをいいことに、ペラペラと事件の詳細を語る。牟児津と瓜生田は先に聞いていたし、おそらく今の3年生には周知の事実だ。しかしそれ以外の1、2年生にとって、その話は衝撃的だった。鳳がそんな被害に遭っていたことは知らされていなかったし、何より盗撮という内容は、いま目の前に横たわっている問題とリンクしている。


 「かくして、その盗撮犯は厳しく罰せられたとのことです。めでたしめでたしですね」

 「口を慎め!何がめでたいんだ!」

 「鳳センパイ……今の、本当ですか?」

 「……あ、ああ。本当だ。驚いたな……!まさか、1年生でこの話を知っている人がいるなんて」

 「人の口に戸は立てられないんですねえ」

 「で、ですが!それは2年も前の話では!?そちらのカメラがその方のものかどうかなんて分かりません!」

 「徳井さんのおっしゃる通りです。仮にその前提があったとしても、今回の事件と関係あるかなんて」

 「だったら、なんで皆さん、そんなに怯えてるんですか?」

 「……!」


 鳳の過去の盗撮被害があったとして、なお目の前のカメラ問題は何も解決していない。過去の盗撮犯のものにしろ、そうでないにしろ、判断する材料が何もないのだ。が、牟児津にはそうは思えなかった。何よりも、鳳たちの態度を見る限りは。


 「盗撮犯の話、実は私とうりゅは、先に益子ちゃんから聞いてました。それでも隠しカメラが出て来たとき、私たちは何がなんだか分かりませんでした。それでも、3年生の皆さんは素早く動いてました。演劇部の3人だけじゃなく、出町さんまで。もしかしたら……カメラが隠されてる可能性を考えてたんじゃないですか?」

 「な、なにを……!」

 「盗撮犯がまた何かしてくるかも知れない。この2年間、みなさんはずっとそれを警戒してたんじゃないですか?だから、とっさの事にすぐ対応できた」

 「……!」

 「私が怪しいっていうのも分かります。だけど3年生の皆さんにとっては、もっと怪しい人が他にいる。違いますか?」


 鳳たちは黙りこくってしまった。牟児津の追及を否定することができなかった。ただ、否定できないだけで、それ以外の可能性を追及することまでできなくなったわけではない。


 「だけど……それは牟児津が犯人ではないという根拠にはなりません。仮にカメラが牟児津のものでなかったとしても、その盗撮犯との共犯とも言い切れないはずです」

 「ぐぬぬ……そ、それはそうだけど……」

 「かがみんひっどーい!マッシーがそんなことするわけないじゃん!クラスじゃ名探偵なんだよ!」

 「そんなこと、アタシには関係ない」


 先ほどより落ち着いた加賀美が、チャンスとばかりに牟児津への疑いを強調する。確かに牟児津は、自分以外にも怪しい人物がいると言っただけで、自身の潔白を示してはいない。共犯の可能性まで出されてしまっては、もはや無実の証明はかなり難しくなってしまった。


 「あの、加賀美先輩。ムジツさんは今日、藤井先輩からチケットを頂いてたまたま来たんです。お花の中にカメラを仕込むタイミングなんてありませんよ」

 「どうだか。劇場に来るのが早かったとか、劇が始まる前に長時間席を立ったとか、チャンスはあったんじゃないか?」

 「あっ……そういえば」

 「おおおおい!しっかりしろうりゅ!私がそんなことするわけないでしょ!」

 「えとえと……うぅん。ダメかも」

 「うりゅ〜〜〜!!」

 「んもう。しょうがないですねえお二人とも。こういうときのために、私こと実耶ちゃんがいるんじゃないですか。吉永先輩。そのカメラ、ちょっと見せてもらってもいいですか?」

 「え?はあ……」


 加賀美に追い詰められる牟児津と、それを庇おうと頭をひねる瓜生田。何もできずに頭を抱える二人を横目に、益子が吉永からカメラを預かって型番や設定を調べる。そして何かを見つけたのか、にっこり笑った。


 「確認する方法ありますよ!このカメラの持ち主!」

 「へっ?」

 「な、なんだと!?」


 全員の注目をしっかり集め、益子は自分のスマートフォンを取り出した。


 「このカメラ、登録したスマホやパソコンと無線で通信してデータのやり取りができるんですよ。だから撮った写真をすぐに転送できる優れものなんですね!」

 「まあ、今時のカメラならだいたい付いてる機能でしょうね」

 「だったら気になりません?このカメラ、どのスマホやパソコンと通信してるのか……!」

 「わ、分かるのか!?」

 「こういうのは一度接続した機器を記憶して、自動で接続するようになっています。だから、いま全員のスマホを取り出して、このカメラとつながっているかどうかを確かめればいいんです!」


 なるほど、と聞いている全員が思った。確かに、このカメラを仕掛けた犯人なら、どうにかして撮影した写真なり動画なりを自分の手元に収める手段が必要なはずだ。それは後から回収するのかも知れないし、リアルタイムで送信しているのかも知れない。いずれにせよ、カメラと他の機器を接続しなければならない。接続を記憶した機器は、いかなる状況でも、空気を読まず接続する。

 いち早く、牟児津は自分のスマートフォンを取り出した。一刻も早く潔白を証明してこの状況を変えたい。そんな思いから、いの一番にカメラとの接続を試した。当然、何の反応もしない。


 「ふむ。接続しませんね。どうやらムジツ先輩のカメラではないようです!セーフ!」

 「っしゃ!セーフだって!これで信じてくれる!?加賀美さん!」

 「……いや、まだだ!アンタのじゃないからって、アンタが盗撮犯とつながってないとも限らないだろ!チャットの履歴を見せろ!」

 「うええっ!?そ、そこまで!?」

 「なんだ。見せられないものでもあるのか」

 「うう……分かったよ、見せるよ。見せればいいんでしょ。恥ずかしいけど」


 なおも加賀美に疑われる牟児津は、カメラとの接続履歴がないことを確かめられたばかりか、チャットアプリや通話記録などの連絡手段を徹底的に調べられた。今時珍しくSNSの類をほとんど使っていないことに驚かれはしたが、結局どこからも怪しいやり取りは出て来ず、加賀美は再び悔しげな顔で牟児津にスマートフォンを返した。


 「ちっ」

 「つまり、これで牟児津さんはこのカメラを仕掛けた犯人ではないし、2年前の盗撮犯とも一切関わりがないということが言えるのね」

 「初めからずっとそう言ってますよ!」

 「じゃあいったい誰が……」

 「ちょっと待ってよかがみん」


 牟児津の潔白が証明され、加賀美は不機嫌な態度を隠そうともせず、自分の椅子に座ろうとした。しかし、それを宝谷が引き留めた。初めに見せた天真爛漫な表情とは違う、真剣な表情だった。宝谷がこんな顔をするのは珍しい。


 「なんだ」

 「散々マッシーのこと疑っといて、何もないの?結局マッシーは犯人でもなんでもなかったじゃん。言うことあるでしょ」

 「怪しまれるようなことをするからだ。誰だって疑うだろ」

 「それでいいの?言うべきことは」

 「……くっ……!おい牟児津!」

 「ひゃい!?」

 「…………疑って悪かった」

 「あ、はい……あの、大丈夫です。全然。ホントに」


 顔を真っ赤にして、目線を合わせたり外したりを繰り返しながら、歯の隙間から絞り出すように、加賀美は謝罪の言葉を口にした。人から疑われることにすっかり慣れていた牟児津にとっては、その悔しげな謝罪はむしろ、謎の罪悪感を湧き上がらせるものでしかなかった。それでも、それを言わせた宝谷は満足げに加賀美の頭を撫で、キツい張り手で払われていた。


 「ごめんねマッシー!かがみんって鳳センパイの強火オタクだから、今回みたいなのすっごい許せないんだと思うんだ!でもこう、まっしぐらなだけなの!悪気があるわけじゃないから許してあげて!」

 「い、いや全然いいよ……私だって逆の立場だったら疑ってただろうし、宝谷さんに謝ってもらわなくても」

 「たはーっ!やっぱ場数踏んでる人間はデッカいね〜!あ、そうだ!せっかくだし、かがみんもスマホ出してよ!」

 「は?なんで私が」

 「このカメラと接続するかどうか確認!あと、盗撮犯って人とのやり取りがないか。全員の分やるんでしょ?マッシーだけ確認するなんていじめてるみたいで可哀想じゃん!あ、鳳センパイも一応」

 「はあっ!!?」

 「はい、みゃーちゃん。緋宙のスマホ。勝手にいじっていいよ」

 「どーもですー。じゃあ、ちょいと失礼して」


 宝谷は率先して自分のスマートフォンを差し出した。こうなると、加賀美や3年生たちもそれに続かざるを得ない。宝谷のあまりの無邪気さを前にすると、スマートフォンでの確認を渋ることが自らの疑わしさを強めることになると、何も言わずとも理解できた。

 ひとり、またひとりと自分のスマートフォンを取り出して、カメラに自動接続されるかどうか、カメラロールや通話記録などに異常がないかを、お互いに確認できるよう見せ合う。

 ただひとり、吉永を除いて。


 「うん?どうした、小雪クン?」

 「い、いや……なんでもありません。あの、地下なのでスマホが使えなくて……」

 「機器の接続は外部との通信不要ですよ。それ以外も履歴を見るだけだからマナーモードでもできます」

 「あ、あの……そうなんだけど……」

 「吉永センパイ?」


 明らかに様子がおかしい。スマートフォンが使えないと言う割に、それを取り出してさえいない。先ほどまでとはまるで態度が違い、そこに余裕や冷静さは見られない。誰がどう見ても、吉永は動揺していた。


 「吉永さん?どうしたんですか。変な記録がないことが分かればいいんですから、全部見せる必要はないですよ。恥ずかしいかも知れませんけど、お願いします」

 「あ、あの……そうではなくて……!」

 「むむっ!」


 牟児津の横で、益子がいかにも嬉しそうな声を出した。何か、人の弱みを見つけてそれに飛び込もうとするときの声だ。


 「吉永せんぱぁい?いけませんねえ。ひとりだけスマホを見せないなんて、いかにも何か隠すべきものがありますって態度じゃないですかあ!このとおり、私たちは何もありませんでした!白です!吉永先輩だけですよ!まだ確認してないのは!」

 「くっ……!」

 「おい1年生。誰に向かって口をきいてる。吉永監督がこんな卑劣なことをするわけがないだろ。気にしないでください監督。もともと演劇部員がカメラを仕掛ける理由なんて──」

 「それは違うよかがみん!そういういい加減な判断しないために見せっこしたんでしょ!吉永センパイにもしっかり見せてもらうよ!」

 「ううっ……!」


 益子だけではない。ファンクラブも、同じ演劇部員も、吉永に向ける目は徐々に疑念に染まりつつあった。それは吉永も納得できる。誰だってそうなるだろう。しかし、それでも吉永はスマートフォンを見せようとはしなかった。


 「ご、ごめんなさい!どうしても、見せられない……!」

 「そ、それは……まさか、吉永さん!」

 「ち、違うよ!私は盗撮なんかしてない!とも関係ない!だけど……そうなんだけど……!」

 「せめて見せられない理由だけでも仰ってもらえませんか?」

 「……ごめんなさい」


 瓜生田の質問にも吉永は答えない。見せられない理由を言えば、それは見せているのと同じことだ。頼まれようと疑われようと、吉永は頑として譲らない。しかし、そんな態度が許されるはずがなかった。


 「吉永さん。1年生の頃から切磋琢磨してきたあなたを疑いたくありません。手荒な真似をしますが、甘んじて受け入れてください」

 「そうですよセンパイ!ナントカはカントカにウンタラです!」

 「何が言いたいのか分かりません!」

 「ええい問答無用!見せてもらいますよ!とりゃー!」

 「ひゃああっ!?」


 にじり寄った宝谷が奇声とともに吉永に飛びかかった。加賀美は止めようとするも間に合わず、宝谷は吉永の体をまさぐる。ジャケットからスカートまであらゆるポケットに手を突っ込まれ、とうとうスマートフォンを奪われてしまった。油断して顔認証まで許してしまい、吉永のスマートフォンはあっという間にセキュリティを突破されてしまった。


 「あっ、ああ!」

 「すみません吉永センパイ。さ〜てどれどれ……なあんだ。何も隠すようなことないじゃないですか」

 「本当?ちょっと見せて宝谷さん──あ」


 スマホを奪われた吉永は、その場にへたり込んでしまった。宝谷に全身を触られたことで力が抜けたのか、はたまた中身を見られたことに絶望したのか。いずれにせよ、樹月にははっきりと分かった。吉永がなぜ頑なにスマートフォンを見せようとしなかったのか。


 「ど、どうした日向……?まさか、本当に小雪クンが……?」


 鳳の問いかけに、樹月は笑顔で応えた。


 「ううん。違うわ。吉永さんは盗撮犯じゃない。その証拠に、カメラと接続されないわ」


 感情を必死に押し殺している、不自然な笑顔だ。牟児津にはその笑顔が恐ろしく感じられた。まるで人形のようだ。


 「いや、だったらあんな必死になって隠す意味が分からないんですけど」

 「普通よ普通。そうよね、宝谷さん」

 「はい!普通にパパやママと仲良く写ってる写真とか、スタンプ爆撃家族グループチャットとかばっかりでしたよ!」

 「……言ってしまうのね、それを」

 「へえ?」


 全員の頭にクエスチョンマークが生えた。樹月は人形の顔のまま、宝谷を見て──否、睨んでいた。当の宝谷は何が起きたか分からないという顔で間抜けに樹月に視線を投げ返し、吉永は顔を真っ赤にしてうずくまっていた。


 「パパとママって……吉永先輩のご両親のことですか?あの超シブくて仕事に真面目で舞台あいさつでも滅多に笑わないあのパパさんと!?クールで知的でミステリアスで、大人の女性の象徴みたいなあのママさんですか!?」

 「あの二人が、仲良く家族写真!?スタンプ爆撃グループチャットォ!?全っ然イメージと違う!!」

 「説明しないでいいからあ!!」


 益子と加賀美が叫ぶ。ははあ、と牟児津はなんとなく理解した。牟児津は詳しいことまで知らないが、吉永の両親はどちらも有名俳優だ。片や強面の激渋俳優、片やクールでミステリアスな女優。その二人が、娘と仲良く写真に収まっていたり、グループチャットでスタンプを連打していたりというのは、イメージとかけ離れているように感じた。

 つまりはそういうことだ。吉永は、俳優としての両親のイメージを損なわないために、写真やチャットの履歴を隠そうとしていたのだ。俳優はイメージが大切だという鳳の言葉を、牟児津はぼんやり思い出していた。


 「あ、あの、どうか……!どうかこのことは秘密に……!こんなことでお父さんとお母さんに迷惑かけたら、私……私……!」

 「いや、そんな頭下げなくても大丈夫ですよ。誰にも言いませんから」

 「そこの1年生!メモを取るな!」

 「ひょっ!?バレたあ!!」

 「益子さん。それはさすがにダメだよ。私たちは吉永先輩を傷つけたいわけじゃないんだから」

 「ちぇ〜っ。まあ学園関係ないですし、記事にできないか……」


 加賀美に指摘されて益子が飛び上がった拍子に、瓜生田がメモとペンを取り上げた。深々と頭を下げる吉永を前にして、よくそんな無慈悲なことができるものだ、と牟児津は呆れ返った。

 それよりも、これで吉永も盗撮犯とは無関係だと分かった。どうやらこの部屋の中に、盗撮犯やその関係者はいないと考えてよさそうだ。つまりこのカメラは、重大な問題であると同時に、今は解決できない問題にもなった。なんとも気持ちの悪い決着だが、これ以上はどうしようもない。


 「吉永さん。疑って本当にごめんなさい。こんなことになるとは思ってなかったの」

 「あ〜、怖かった。盗撮犯まで一緒に閉じこもってたらどうしようかと思ったわ」


 樹月はうずくまった吉永を立ち上がらせてスマホを返し、休憩スペースの畳に座らせた。この短時間で精神的にかなり消耗したのか、そのまま隅の方に寄ってじっとしてしまった。出町が安堵の言葉を吐いたのを区切れ目に、なんとなくカメラの一件は幕を閉じた雰囲気になった。



 〜〜〜〜〜〜



 「それでは、カメラより先に、あの鍵を解決しなくてはいけなくなりましたね」

 「普通そっちが優先だって」


 牟児津は改めて錠前を観察してみる。装飾の少ないシンプルな造りで、どこか古くさい雰囲気を感じる。むらなくスミレ色に塗られているのも不思議だった。


 「こんな変な錠前、どこから持って来たんだろ」

 「変な錠前とはなんだ!あなた、今日の舞台観てなかったの!?」

 「うぎゃっ!?」


 錠前を調べようと手を伸ばしたら、突然背後から声をかけられ、牟児津は驚いてひっくり返った。瓜生田も驚いたが、少し眉を上げただけで穏やかに振り向いた。声をかけたのはファンクラブ会長の出町だった。カニのハサミのようになった髪が幼さを感じさせ、年上なのだがあまり年上に感じられない。

 出町は牟児津とドアの間に体をねじ込み、錠前を手に取って力強く解説を始めた。


 「これは今日の舞台に登場した、鳳さん演じる主人公の肉体が閉じ込められていた部屋の錠前よ!肉体から離れた心が、無限に広がる世界を渡り歩いて成長していく。だけどそれは全て一夜の夢。空想する力の果てしなさをドラマチックに描いたステキな脚本よね!」

 「そ、その錠前がなんでここに……?」

 「舞台のセットなんじゃないんですか?」

 「そんなわけないでしょ。これは物販よ」

 「物販?」

 「オリジナルグッズのこと。演劇部は公演の物販で、物語の重要アイテムや、キービジュアルのクリアファルとかを売って収益を得ているのよ。これは錠前と鍵のセットね。もちろん私も買ったわ」

 「女子校の部活の発表会で錠前を売るなんてことがあんのか」

 「あるんだねえ。そんなことも」

 「ファンならひととおりのグッズは買って当然よ!どれもこれも鳳さんや演劇部の素晴らしさを伝える、愛の篭もったグッズなんだから!」

 「愛、ねえ……」


 そう言って出町は、抱えていた大きなカバンから、扉にかけてあるのと同じ錠前と鍵のセットを取り出した。鍵を穴に挿し込んで回すと、金属の擦れる耳に痛い音がして、錠前は口を開けた。つまり、この錠前と鍵が対応する1セットであり、扉にかかっている錠前はこの鍵で開けられない、ということだ。


 「あ、じゃあその大きなカバンも、物販でたくさん買うために?」

 「そ!今回は買えないのもあったけど、おおよそコンプしたわね。古参ファンとしてはそれくらいしないとね!」

 「お金とか大変じゃないですか?」

 「そんなの大した問題じゃないわ!推し活で大事なのは“お気持ち”よ!」

 「お金じゃん」


  出町の足元には、パンパンに荷物が詰まったカバンが転がっている。今日の公演で購入したグッズだけではなく、これまでに収集した分も持ってきているようだ。他のファンクラブメンバーも同様に大荷物を抱えているので、おそらく同じようなものなのだろう。それほどまでに何かに夢中になれるということが、牟児津には縁遠く感じられた。


 「よく分からないね」

 「ムジツさんだって、塩瀬庵の新作買うためなら早起きするしいくらでも奮発するでしょ。そういうことだよ」

 「よく分かったわ」

 「みんな何かのオタクなのよ。誰の言葉だったかしらね」


 瓜生田の説明で、牟児津は一発でしっくりきた。つまり、好きなもののためならなんなりと、ということだ。それが甘いあんこ菓子か、演劇部のスターかだけの違いだ。


 「今日はどんなのを買われたんですか?」

 「そうね。クリアファイルももちろん買ったし、トレーディングアクリルチャームのBOX、Tシャツにボールペンにマステ、それから……」

 「めっちゃある!そしてめっちゃ紫!」

 「スミレ色よ。演劇部のイメージカラーなの。あなたたち、そんなことも知らないで今日観に来たの?逆にすごいわね」

 「は、はあ、ども。すんません」

 「謝ることないわ。鳳さんは有名人だし演劇部も大きい部活だから、逆にそこまで知識を入れずに観られるのって貴重なことなのよ。初めての感動っていうのは格別なんだから。羨ましいわ」

 「あ、よかった。面倒じゃない方のオタクだった」


 部屋に入ってからというもの、牟児津はとことん疑われたり激しく怒られたりして、心が荒みつつあった。そんな心のささくれを、出町の気さくな性格が撫でつけてくれるようだった。


 「ま、鍵をいくら調べても開いてくれるわけじゃないわ」


 錠前を触りながら、出町が言った。


 「開けるには鍵が必要で、それを持ってるのは犯人のはず。だから私は、みんなの荷物を検査するべきだと思うの。牟児津さんはどう思う?」

 「へっ?あ、そ、そうですね。確かに、荷物検査はやっといた方がいいかと」

 「そうよね!よかった!牟児津さんが賛成してくれるなら心強いわ!」

 「な、なんでですか?」

 「だって、学園の名探偵なんでしょ?いくら私がファンクラブの会長でも、所詮は一介のファンだし、演劇部の皆さんの荷物を漁りたいって下心から言ってると思われたら困るもの。牟児津さんってその辺のことずけずけ言ってくれそうだし、味方になってくれると助かるわ!」

 「味方っていうか別に……」

 「でも確かに、荷物検査はやっとくべきだよね。みなさーん、ちょっといいですか?」


 犯人も一緒に閉じ込められているということは、何らか脱出の手段を用意しているに違いない。秘密の抜け道や隠し扉などという大袈裟なものではなく、単純に錠前に対応した鍵がこの部屋のどこかにあるはずだ。おそらく犯人が隠し持っている。逆に言えば、錠前に対応した鍵を持っている人物が鍵をかけた犯人だと言うこともできる。上手くいけば、荷物検査をするだけで犯人を特定することが可能だ。

 早速、瓜生田が全員に声をかけた。牟児津の名前を借りて、荷物検査を実施しようと提案したのだった。


 「バカな!荷物検査より先に部屋の中を探した方がいいに決まってる!」

 「え」


 自分の案でもないのに、牟児津は加賀美に真っ向から反対された。困惑して瓜生田と出町を見るが、二人とも目を逸らしてしまう。誰もこの状態の加賀美に怒られたくないのだ。いつの間にか牟児津は矢面に立たされていた。これでは出町にいいように利用されただけだ。


 「荷物検査なんて、閉じ込められて最初にやってもおかしくないことだ。そんなことでボロが出るような犯人なら、初めからこんな大それたことはしない。むしろこの部屋のどこかに隠す方が、見つかっても誰の仕業か分かりにくい。狡猾な犯人の考えそうなことじゃないか」

 「一理ある」

 「えーこ!?なんであなた加賀美さんの味方なの!?」

 「……牟児津が気に入らない、から?」

 「めっちゃ個人的な理由じゃない!」


 どうやら曳木は、加賀美ほど露骨でないにしても、まだ牟児津のことを疑っているようだ。結局、鍵をかけた犯人を見つけないことには、牟児津が二人の疑念から逃れることはできないらしい。ひとまず流れに身を任せるため、牟児津は加賀美の案に従った。いちおう、部屋を調べた後に荷物検査もやるという約束をしておいた。

 部屋を調べるにあたり、11人全員で同じ場所を調べるのは効率が悪いので、班に分かれることになった。音頭を取ったのは樹月だ。


 「それではまず、5つの班に分かれます。班には演劇部員を必ず含めてください」

 「なんで?」

 「普通に考えて、私たちかファンクラブのどちらかに犯人がいるからですよ。演劇部員がこんなことする理由がありません」

 「なるぅ……」


 牟児津の疑問は益子の耳打ちによってすぐ解消された。樹月が演劇部員であることを差し引いても、部外の人間が犯人であると考えるのが普通だ。犯人の目的は分からないが、部内の人間が同じ部の人間をこの部屋に閉じ込める可能性は低い。可能性が低いことは、ひとまず考えない方が事態を把握しやすい。


 「せっかくだから鳳センパイはファンクラブの誰かと組んじゃえば?出町センパイとか!」

 「キアッ!?い、いや私がそんな、そんな一緒になんて……!私たち、そういうのと違いますから!」

 「そういうのってなに」

 「『鳳ファンクラブの掟』第一条〜〜〜!ファンとしての距離感を保つべし!」

 「全然分からん」

 「ファンで居続けるため、演者の方とは一定の距離を置くべき、ということです。近付き過ぎて親密になるとファンではなくなり、不都合も出てしまうので」

 「というわけで鳳先輩。何卒あっちの人たちと」

 「好きすぎて逆に突っぱねるんだ。難儀なこったなあ」


 出町たちは鳳と班を組むことを拒絶した。よかれと思って提案した宝谷が申し訳なさを感じるほど強く。牟児津には、そんな出町たちの理屈が全く理解できなかった。自分が他人にあんこを勧められたら、一切迷わず受け取るのに。


 「それじゃあ僕は、真白クンと──」

 「私も勘弁してください!もう加賀美さんと曳木さんからの視線に耐えられないですから!」

 「そ、そう……じゃあ、瓜生田クン。いいかな?」

 「はい喜んでー」


 牟児津は鳳のファンではないが、これ以上一緒にいると加賀美たちの敵意を煽るだけなので、鳳の誘いを食い気味に断った。鳳はあからさまにしょんぼりしてしまったが、自分の身を守るためにはやむを得ない。

 結局、牟児津は演劇部で唯一知り合いの宝谷と、それ以外のメンバーは益子やファンクラブと一緒に部屋中で鍵を探し回ることになった。広い部屋といえど五組に分かれて探すには狭く、それぞれが担当する範囲で鍵を隠せそうな場所は少ない。

 牟児津と宝谷は、化粧台とテーブルセット及びその周辺を担当した。


 「よーしマッシー!緋宙たちで鍵見つけちゃおう!気合入れて探そうね!」

 「う〜ん、ぶっちゃけ私は荷物検査の方が意味あると思うし、あんまり期待できないって言うか、宝谷さんみたく前向きになれないんだよね……」

 「探すだけ探してみよって。ほら、たとえばこういうテーブルの下とか」


 宝谷はテーブルの下に潜り込んで仰向けに寝転がった。背中はべったり床についている。


 「ゴミ箱の中とか下とか」


 宝谷はテーブルや化粧台の上に置かれた小さいゴミ箱の中をひっくり返して、ゴミをひとつひとつめる。菓子の包み紙や化粧に使ったティッシュなどもお構いなしだ。


 「鏡の裏の隙間とか盲点っぽくない?」


 化粧台の上に膝乗りになって壁にを押付け、化粧台の照明に目を焼かれながら鏡の裏側に目を凝らす。鍵の捜索に一直線な宝谷を、牟児津は、ようやるわ、という視線で見ていた。


 「めっちゃ調べるじゃん」

 「そりゃそうでしょ!マッシー出たくないの?」

 「出たいよ。けど犯人だったら、もっと違うところに隠すと思うんだよね」

 「どういうこと?」

 「なんというか……あんまり込み入った隠し方をしない、んじゃないかな?だって、最後にはここから出たいはずだから、やっぱり自分で隠し持ってるのかな……?でもボディチェックとか普通するのは想像つくはず。だから、見つかりにくい、けど見つかりにく過ぎないような……」

 「何言ってんの?」


 牟児津は、小さな気付きや直感から考えを深めていく。もし犯人ならどうするか。鍵を自分で隠し持つか、それともどこか別の場所に隠すか。それぞれ、何が最善か。そう思考していったとき、果たして自分の捜査方法は適切なのか。数え切れないほどの疑問を、ひとつひとつ検証していく。


 「最終的には、犯人もここを出て行くことになる」

 「うんうん」

 「そのときに、鍵を隠し持ってたら……こっそり開けておいて、何かのタイミングでそれに気付いてもらうのを待つか……」

 「じれったい話だね」

 「どこか別の場所に隠すとして、簡単に見つけられない場所だと、鍵を回収するときに怪しまれる、よね?」

 「……あ、そっか。変なことしないと取れない場所に隠してたら、その変なことでバレちゃう」

 「だからたぶん、もっとシンプルところに隠してるんだよ」

 「でもそれ、どこ?」

 「……」


 それが分からないと意味がない。それが分かれば苦労しない。二つの言葉が同時に牟児津の口から飛び出そうになり、ぶつかって対消滅した。こうして頭の中で考えているより、宝谷のように体を動かした方がマシかも知れない。なんだかいつもより不安が大きい。自分のしていることに意味があるのかが分からない。答えに近付いている気がしない。何の手応えも感じない。粘つく水の中で、必死に手足をばたつかせて進もうとしているような、漠然とした無力感と不安感。一体どうすれば、何をすればいいのだろう。

 そう考えている間にも、宝谷は手と目を動かして担当する範囲を隈無く探す。しかし結局、なんの成果も得られなかったようだ。


 「あ〜ん!ないよ〜!もう緋宙疲れた〜〜〜!!」

 「あっ、ご、ごめん宝谷さん。なんか全部押しつけちゃったみたいで」

 「いいよ。マッシーは体動かすより考える方が得意でしょ。名探偵だもんね」

 「だから違うってのに……」

 「あっはは〜」


 牟児津が頭の中でぐるぐる考えている間に、宝谷や他の班はそれぞれ担当した場所の捜索を終えていた。そして何も見つからなかったのは、他の班も同じだった。何も出て来ない。鍵やそれに近いもの、何か怪しげなものなど、一切。


 「僕たちはケータリングのテーブルと洗面台の周辺を調べた。瓜生田クンの考察はすごいよ!もし犯人が長髪だったら、髪で鍵を吊して排水口に隠すんじゃないかと!結局そこにはなかったけれどね。しかしなかなか面白いトリックだ。日向、次の舞台の参考にしたらどうだい」

 「呑気なこと言わないで。あ、私たちはゴミ箱と休憩スペースの畳の裏を調べました。同じく何もありませんでした」

 「私は……何もしてないわ。私は……」

 「あ、あの。私と吉永さんは入口付近とミニテーブルを調べました。何も変なものはなかったです」

 「私はクローゼットの中を。衣装のポケットまで調べましたが、出て来たのは宝谷がポケットに突っ込んでいたゴミばかり……!」

 「あ、ごめーん。えっとねー、緋宙とマッシーは化粧台と打ち合わせ用テーブルの辺りを調べました。なーんもなかったけど」


 演劇部の面々と、放心している吉永の代理で出町が、それぞれの結果を報告する。明るく振る舞う鳳や宝谷とは対照的に、加賀美は悔しげに歯を噛む。そんな加賀美に、牟児津はおそるおそる声をかけた。


 「じゃ、じゃあ加賀美さん。約束通り、次は荷物検査を……」

 「ボッ、ボディチェックだ!」

 「へ」

 「部屋になかったのなら犯人が持っているはずだ!肌身離さず、自分の手元に!ボディチェックで洗い出す!」

 「ひええっ」


 もはや鳳や樹月に確認することもしない。加賀美は圧倒的な大声と力強さで荷物検査の約束を有耶無耶にし、強引にボディチェックを宣言した。約束が違うので牟児津はさすがに文句を言いたくなったが、荷物検査を優先させるほどの理由がないことに加え、加賀美の威圧に抗えるほどの度胸があるわけもなく、言われるがまますごすごと引き下がった。


 「ちなみに吉永センパイのボディチェックはさっきついでに済ませました!スマホ以外なんにもなかったでーす」

 「はは……」

 「可哀想にねえ」

 「では、ボディチェックは私と樹月先輩でやりましょう。徹底的にやりますよ」

 「えー?樹月センパイはともかく、なんでかがみんなの!」

 「公明正大な検査のためだ。演劇部員以外はまだ信用する根拠がない」

 「公明正大……かなあ」


 演劇部員を棚上げしている時点で公明正大とは程遠いのだが、逆に牟児津や出町たちがボディチェックをすると言い出したところで、それはそれで怪しい。何よりここは演劇部の縄張りなので、加賀美の言葉には一定の説得力を感じた。

 こうして、牟児津たちはボディチェックを受けることになった。女子しかいないとはいえ、さすがに全員の前で下着姿になるのはいかがなものかと声が上がった。そこで、一人ずつウォークインクローゼットを更衣室代わりに、樹月または加賀美がボディチェックすることになった。


 「うぅ……せ、せめて私は樹月さんに」

 「牟児津!アンタはこっち!アタシが徹底的にやるから!」

 「ぎょえーっ!た、助けてうりゅ〜!」

 「加賀美先輩、お手柔らかにお願いしますね」

 「ぎゃあああっ!!」


 瓜生田が笑顔で手を振る。牟児津は加賀美に手を引かれ、抵抗むなしくクローゼットの中に引きずり込まれた。そして徹底的という言葉どおり、上着やスカートはもちろん、シャツや下着や口の中まで、物を隠せそうなところは隅々まで調べつくされた。

 結局、牟児津からはなにも出てこず、加賀美は顔を真っ赤にしながらも牟児津を解放した。疲れ切った牟児津と入れ替わりで、今度は瓜生田がチェックを受ける番になった。


 「加賀美さん。徹底的に調べてやって」

 「ひどいなあムジツさん。私を疑ってるの?」

 「さっきの仕返しだよ!疑ってるわけないだろ!」

 「早く来い」


 舌を出して瓜生田を見送った後、牟児津はやれやれとため息を吐いて椅子に腰かけた。ちょっとした経験になるからと思って来てみれば、とんでもないことに巻き込まれた。こんなことなら家にいればよかった。ゆっくりとあんこ菓子でも食べながら、マンガを読んだり音楽を聴いたりして平和に一日過ごせたのに。そんな後悔ばかりが募っていく。


 「真白クン。隣いいかい?」

 「へっ?あ、はい。ど、どうぞ」


 そんな牟児津に、鳳が声をかけた。樹月によるボディチェックを済ませた鳳は、舞台の上に立っていた衣装から制服に着替えていた。優雅に牟児津の隣に腰かけ、手に持ったケータリングの菓子袋を牟児津に見せる。あっ、と思った牟児津が弾け飛ぶ菓子に備えて身構えると、鳳が申し訳なさそうに言った。


 「すまないが、また開けてくれないか」

 「あ、焦ったあ……さっきとまた同じことするかと思いました」

 「ははは、同じ日に同じ失敗はしないさ。それに、ファンの前だからね」

 「金平糖と花束で同じ失敗してたでしょうに。ていうか、もうそんなこと言ってる場合じゃないんじゃないですか?」


 呆れ気味に牟児津は言った。呆れてはいたが、言葉に深い意味はない。会話の中の、何気ないほんの一言だ。しかし、鳳にとっては違ったようだ。


 「演者はね、常に演じていなければいけないんだよ」


 その言葉は演者としての意識の高さを表す言葉に聞こえた。しかしそれを口にしている鳳の表情を見ると、どうやらそういう意味ではないらしい。制服に着替えた今も、鳳は舞台上でのキャラクターを演じ続けている。その表情や言葉の中に物寂しさのようなものを、牟児津は垣間見たような気がした。


 「演劇部って大変なんですね。普通の部活より責任重大っていうか、評価されるっていうか」

 「学園でも歴史の長い部活だからね。それに、半端なことをして評判が悪くなれば、田中クンに怒られてしまう」

 「田中って、副会長の田中さんですか?」

 「そうさ。田中クンと、それに会長の藤井クンも心配するだろう。ここだけの話、僕は少し、彼女たちが苦手でね」

 「得意な人の方が少なさそうですけど」

 「そうでもないさ。みんな彼女たちのことが好きなんだ。学園に限って言えば、僕にも負けないくらい人気だよ」

 「自分で言うか」


 先ほどの寂しげな表情はもうない。そんなものは忘れてしまったかのように、なんとなく晴れやかな表情に見える。


 「彼女たちは何もかも完璧な人間だろう?あの姿を見ていると、自分がいかに不完全な人間かを思い知らされるようで……正直、少し辛いんだ。菓子袋ひとつ開けられないこんな僕に、いったい何ができるんだって」

 「えっ、めちゃくちゃネガティブ」

 「意外かい?そうだろうね。これは僕の本心だからさ。舞台上にいる僕は決してこんなことは言わない。言ってはならない」

 「な、なんで言っちゃうんですか。私に」

 「真白クンは僕のファンじゃないんだろう?」

 「面と向かって言われると答えに困るなあ。でもまあ、あっちの人たちに比べれば」


 牟児津は出町たちを一瞥して言った。


 「だからだよ。ファンには、こんな弱気なことを聞かせられないだろう?かと言って、演劇部のみんなにも言えないんだ。演劇部の部長は、誰よりも清く、正しく、美しく、そして強くあらねばならないからね」

 「部長って大変なんですね」

 「真白クンはそのどちらでもない、数少ない僕の友人だ。だから真白クンにしか言わないんだよ、こんなことは」

 「ほあ」


 牟児津は、初めて鳳に会ったときの、体が硬直した感覚を思い出した。心臓が締め上げられるようで、息が詰まりそうで、魔法にかかったような感覚とはあのことだろうと思った。

 そして今も、まさにその感覚がした。ステージでスポットライトを浴び、きらびやかな衣装と荘厳な音楽の中、全身を使って物語を表現する男装の麗人。そんな人が、誰にも見せない弱い部分を少しだけ覗かせた、そんな儚く、色っぽく、愛おしく、そしてか弱い姿に、牟児津は危うく魅了されるところだった。


 「っぶね!なんですかいきなり!」

 「おや。困らせてしまったかな」

 「そうやって何人の生徒をオトしてきたんだあんたは!その結果があの強火ファンだろ!自重しろ自重を!」

 「なぜ僕は怒られているんだろうか?」


 ただでさえ曳木と加賀美から敵視されている中で、さらに鳳と親密になるのは危険でしかない。何より本人にその辺りの自覚がないから余計に始末が悪い。この部屋に鍵をかけた犯人も見付けなくてはいけないのに。牟児津はいったい何と戦っているのか分からなくなってきた。

 明らかに牟児津よりも短い時間で、瓜生田はクローゼットから出て来た。やはり公明正大とは口だけで、加賀美は明確に牟児津を疑っている。もはや疑っているというより単純に嫌っていると言った方が正しいのかも知れない。何がなんでも牟児津の後ろ暗い点を探そうと躍起になっているようだ。

 それも限界が訪れた。どれだけ調べても、牟児津はおろか誰からも怪しい点は見つからない。この楽屋は出口に鍵がかかっている以外に不審な点はないし、ボディチェックの結果、誰も鍵を持っていないことが分かった。


 「くっ……!ううっ……!!うううっ……!!どうして……!!」

 「加賀美さん、大丈夫?」

 「だ、大丈夫です……!ですが、鍵は……いったいどこに……!?」

 「……すまない。星那クン」

 「えっ!?」


 苛立ちと悔しさが極まったのか、あるいは周囲を振り回していることに責任を感じたのか。加賀美は顔を真っ赤にして床に倒れ伏した。なにを勝手に追い詰められているのか、と周囲の目は冷ややかだが、鳳だけは悲しげな目をして、その肩に手を置いた。なぜか謝罪の言葉とともに。


 「僕のせいだ。君が必死になってしまっているのは、僕のせいなんだ。そうだろう?」

 「お、鳳部長……」

 「君が中等部の頃から僕に憧れているのは知っている。こんな状況になっても僕を助けようと必死になってくれているのを、痛いほどに感じているよ。だからこそ、君の傷つく姿を、もう僕は見たくないんだ。僕が魅力的なばかりに、誰かが破滅していくところなんて……もう僕はうんざりなんだ!」

 「いい話だね」

 「いい話かなあ?」


 かなりナルシシズムにまみれた鳳の一人語りは、しかし加賀美には相当深く刺さったようだった。加賀美は拳を固く握り、床を殴った。まるでそこだけ舞台上であるかのように、鳳は芝居がかった動きで優しく加賀美を抱き寄せた。


 「安心したまえ。君のしたことは無駄ではない。この楽屋にも、みんなのポケットにも、鍵がないことは分かった。もう鍵の在処は分かったようなものじゃないか」

 「ほ、本当ですか……!?」

 「本当だとも。そうだろう、真白クン」

 「ぎええっ!?こ、ここでなんで私!?めっちゃ睨まれてんですけど!」

 「君の進言通り、荷物検査を執り行おう!あの忌まわしき錠前を解き放つ救いの鍵は、その中にある!」

 「…………に、にもつ…………けんさ………………?」


 伸びやかに、しなやかに、高らかに、鳳は荷物検査を宣言した。当然、部屋の捜索の後に行う約束だったのでやるべきなのだが、加賀美はその言葉を聞いた途端、真っ赤にしていた顔をさっと青ざめさせた。


 「中には見られたくないものを持っている人もいるかも知れない。だがそこは、僕の美しさに免じて許してくれ」

 「すごい自信ですねー。もはやナルシストでもないですよ」

 「ちょ、ちょちょ、ちょっと……!待ってください!に、荷物検査、だけは……!」

 「え?」


 明らかに加賀美の様子が一変した。それまでの高圧的で粗暴な態度は見る陰もなく、何かに怯えるような顔をして、全員から距離を取った。自分のカバンを抱え、背中に回してその姿さえ見せないようにする。


 「かがみん?ど、どうしたの?」

 「近寄るな!ア、アタシの荷物は何もおかしいところなんてない!鍵なんて持ってない!だから……!」

 「加賀美さん?部屋の捜索を提案したときから思ってたんだけど」

 「な、なんだ!」

 「なんで荷物検査を怖がってんの?」

 「ううっ……!?な、なにを……!?」


 牟児津の指摘で、加賀美は息を呑んだ。ついさっきまでされるがままだった牟児津が、今は鋭く尖った槍で加賀美の核心を突いてくる。こうなった牟児津には何一つ隠し事はできないという、プレッシャーのようなものを感じた。

 そして誰がどう見ても、加賀美は何かを隠している。あからさま過ぎて、それが演技なのではないかと思えるほどに。だがこれは演技ではない。加賀美は、荷物を調べられることを極端に恐れていた。


 「ア、ア、アタシは何もやましいものなんて持ってない!だから調べる必要なんてないんだ!」

 「いやいやいやいや、そりゃ無理ですよ、加賀美先輩。そんなんで誰がハイそうですかって言いますか」

 「う、うるさい1年生!関係ないヤツは黙ってろ!」

 「私も言いたいことありますよ。あれだけムジツさんのことを疑っておいて、自分だけは言葉だけで許してもらおうなんていうのは虫が良すぎます」

 「そうだそうだ!こちとらひん剥かれたんだぞ!」

 「ひん剥かれたんだ……かがみん、そりゃ文句言えないよ」

 「うっ……くっ……!」


 これまでの仕打ちをここで返すとばかりに、牟児津たちは加賀美を部屋の隅に追い詰める。あるいは、すんなり荷物検査を受け入れていれば、こんなことにはなっていなかったかも知れない。先走って反発してしまったがために、却って加賀美は全員から疑いの目を向けられることになってしまった。


 「失礼しますね」

 「あっ!こ、こら……!やめろ!」

 「助太刀しますよ瓜生田さん!」

 「緋宙も!かがみん往生際悪いよ!」


 荷物を守るあまりすっかり小さくまとまってしまった加賀美の上から、瓜生田が荷物を掴んで持ち上げる。必死に取り戻そうと加賀美は荷物を引っ張り返し、宝谷や益子が瓜生田に加勢する。まるで三人がかりで加賀美をいじめているような構図になってしまっているが、あまりに加賀美の態度が怪しすぎて周りは誰も止めない。

 そして不意に、荷物の口を留める金具が勢いよく外れた。


 「あっ!」


 荷物の口が大きく開いて、加賀美と瓜生田、どちらも急に相手の力が抜けたかのような感覚に陥る。すぐさま襲い来る、互いの力が合わさった強い衝撃。思わず二人とも手を離してしまい、荷物は回転して中身を全てぶちまけながら、部屋の中央に転がった。

 こぼれ出て来たものは、全体的にスミレ色に染まっていた。演劇部に関係するものがイメージカラーで統一されているのは当然だが、中には鳳の姿がプリントされたクリアファイルやフェイスタオル、ポスターなども紛れていた。


 「こ、これは……!」

 「過去の公演の物販……それも鳳先輩のお顔が写っているものばかりですね……!」

 「加賀美さんも鳳先輩の強火オタク。ファンならこれくらい普通」

 「あ、ああ……!ちょ、ちょっと!何するんだ!は、恥ずかしいんだからやめろ!」


 ファンクラブのメンバーが、転がった品々を拾い上げては鑑定していく。どうやらいずれも、演劇部が過去の公演で販売したものらしい。そういえば加賀美も鳳のファンだった。演劇部員ながらこっそり買うことを恥ずかしく感じる気持ちは分からないでもない。だが、加賀美はただ恥ずかしいだけの理由で荷物検査を拒んでいたのだろうか。

 牟児津にそんな疑問が浮かぶ中、加賀美は慌ててグッズをかき集め始めた。


 「ああもう恥ずかしい!鳳部長の前でこんな姿を見られたら、これから合わせる顔がないだろ!いい加減に──」

 「ん、なんだこれ」


 牟児津の足下に、一冊のノートがページを開いて墜ちていた。それは、スミレ色に染まった他のグッズとは明らかに違う。しかし特別異質なものというわけではない、ただの大学ノートだ。これも加賀美の集めたグッズの一つなのだろうか。

 何の気なしに、牟児津はそれを拾った。


 「……は?え?これって……!?」


 そのノートは、スクラップブックとして使われていた。画一的な罫線を無視して、ピンクや紫、水色に黄色、緑など色鮮やかな蛍光ペンで枠が描かれ、その中に写真が収まっている。表紙をめくって最初に目に飛び込んでくるその写真は、やはりと言うか、案の定と言うか、鳳の姿を写した写真だった。

 しかしその姿は、今よりも若干幼さを感じる。まだ今より背が低く、顔立ちもなんとなく丸みを帯びている気がした。どう見ても、現在の姿とは違う。


 「ううっ!?そ、それは……!」

 「加賀美さん。これ……鳳さんだよね?たぶん、2年前の」

 「えっ……!?2年、前……!?」

 「み、見せなさい!」


 それが本当に2年前の姿か、牟児津には定かではない。しかし今の鳳と違うことは確かだ。飛び出してきた樹月と吉永がその写真を目にした途端、はっと口を抑えた。どうやら間違いないようだ。写っている鳳の姿、全くカメラを意識していない表情、不自然に低い画角。

 これは間違いなく、隠し撮りされた写真だった。


 「……か、加賀美……さん……!?あ、あなた……どうしてこんな写真を……!」

 「ちっ、違う……!違います……!知らなかったんです!」


 驚愕の視線を向ける樹月と吉永に、加賀美は必死の表情で訴えた。


 「鳳先輩が盗撮被害に遭っていたなんて……ついさっきまで知らなかったんです!2年前は進級試験の勉強が忙しくて、学内で何が起こってるかあまり知らなくて……!だ、だからその写真も、たまたまっていうか、盗撮写真とは思わずに……!信じてください!」

 「荷物検査を拒んだのは、これを隠すためね。どうして正直に言わなかったの」

 「……こ、怖くて……!鳳部長や先輩方に……け、軽蔑されるんじゃないかと……!盗撮だって知ってたら……そんな写真、絶対に……!」


 とうとう、加賀美は涙を堪えきれなくなった。恐れか、恥ずかしさか、あるいは情けなさか。一滴溢れた涙は次の涙の呼び水となり、そこからは際限が無い。止めどなく溢れてくる涙で顔を濡らし、加賀美はその場に膝を突いた。


 「ごめんなさい……!信じてください……!お願いします……!」


 牟児津を追い詰めていたときの気勢はすっかり削ぎ落とされ、そこにはただ謝ることしかできない、か弱い少女がいるだけだった。冷静に見れば盗撮だと簡単に分かりそうな写真でも、鳳への憧れが強すぎるあまり、盲目になってしまっていたようだ。


 「当時の盗撮写真は学内だけで売買されていたはずよ。どうやってこれを手に入れたの?」

 「が、学園の食堂にある掲示板で……封筒に入れたお金と交換しました。相手との連絡も同じ方法で……。いま思えば、変なやり方だったと思います」

 「そのとき思いなよ!?どう考えても変じゃん!かがみん、鳳センパイが絡むとポンコツなんだから注意しなきゃ!」

 「う、うるさい……!だれがポンコツだ……!」


 涙ながらに宝谷を睨みつける加賀美を見ると、これ以上責めるのは酷のような気がしてくる。盗撮写真だと分かっていれば、見つかりやすい1ページ目に貼り付けないだろうし、何より不用意に持ち出さず部屋にしまっておくだろう。どうやら本当に、ついさっき盗撮被害の話を聞いて初めて、これが盗撮写真であることに気付いたようだ。

 すっかり弱々しくなってしまった加賀美は吉永に慰められつつ、畳の休憩スペースの隅に寄って縮こまってしまった。それを見るのは今日二度目だ。

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