第6話 いじめとは・・・


私は小学校の時、酷いいじめにっていた。小さい頃から幼なじみで親友の白石美姫しらいしみきはもうこの世にいない。

そう改めて思うと私の心はズキズキと心臓をナイフで痛めつけられる感覚がくる。

「はぁはぁはぁ、うっ、わぁぁぁ」

親友の恋人の黒崎篤人くろさきあつとと交換日記を交わした夜、私は気がついたらトイレ前で吐き出していた。

汚い感情も流したかった。けど、私の身体は許さない。親友を失った私は眠れなくない夜が続く。どうしても目覚めたくない。現実を受け入れる恐怖が勝ってしまう。

「美姫ぃ・・・どうしてよ・・・・・・」

私をいじめから救ってくれた彼女はいつも私を大切にしてくれた。高校生で同じクラスになっても、毎日毎日クラスで人気者の親友は私との時間を捨てないでいる。

(私にとって彼女はヒーローだ)

あれは4年生の時だ。たまたま前のいじめのターゲットが転校したので、次のターゲットが地味なボブ髪の私になる。

なぜ?いじめるかって・・・人間は集団の輪を乱す奴が嫌いだから排除する。

ただそれだけ。

別に正義でも悪でもないって今の私なら分かるんだけど、

当時の私はものすごく悔しかった。

小学校でクラスの女子から靴箱に画鋲がびょうやくしゃくしゃにされた紙屑を入れられ、陰湿な陰口を散々言われ続けた私を親友の白石美姫は堂々とクラス内で叫んだ。綺麗で長い髪を後ろで止めた美少女は、美しい姫とは似つかないドスの効いた声で主犯格を脅す。

『おい?聞いてんのかよブス』

白石美姫が放った言葉にクラスは凍りついた。だって今までの彼女は誰にも挨拶したり、フレンドリーで人気者の彼女だよ?それがいきなりブスって言葉を使うなんて・・・。

『あ?聞こえなかったらもう一度言うわ。私の親友をいじめたブス四人、おめぇら覚悟はできてるんだよなぁぁ?』

ガシャンッ

白石美姫は四人の机と椅子を乱雑に蹴り飛ばして、私のために怒った。

『おい!何やってるんだ白石』

『そっちこそ先生のくせになにやってるんだよ!? ちゃんと恵のこと見てないんですか?いい歳した大人が生徒のいじめを知らないでどうすんだよオッサン』

『お、オッサン!?』

クラスの優等生で評判な彼女がその日、先生や主犯格の四人に叱った。美姫が厳しく主犯格の中で大人しい少女を責めると、先生も他三人も責め始めた。

私ははっと気づく。美姫がここまで荒い態度で責めるのは、本性でもなく悪でもなく四人と先生の糸を断ち切ることだということを察した。現に四人と先生が互いに責任をなすりつけている間、美姫は笑ってない。むしろ彼女の握り拳は震えていたんだ。

それ以降、四人が私をいじめてくることはなくなり、美姫は私に毎日話しかけるようになる。

一方、先生も定期的に私と美姫のことを心配してくるようになって、いじめは美姫のおかげでなくなった。

『結局、先生は自分のことで手一杯だったのね。それが今じゃ私のこと怖がりすぎでしょ。出席のときもあんなにビクビクしながら名前呼ぶなんて、ははっ恵をいじめた罰よ』

あの騒ぎの翌日、一緒に通学路を歩いた恵はそういって私の手を握る。

ただ当時の私が一番不思議と思ってたことがある。

『めぐみっ!ねぇねぇまた今度うちに遊びにきてよっ』

『へ!?そ、そんなに私を誘って大丈夫なの?安斎あんざいさんも・・・』

『そんな心配しないでよ!桃花とうかともちゃんと遊んでるし、私は恵のこと絶対に離さないからね〜』

『うん。ありがと美姫』

そういって美姫は私の手を離さないで、校門前で友達や先生に挨拶をする。人見知りな私も不器用な挨拶を交わしてみた。美姫の友達はみんなおどおどした私を一瞬心配しても、おはよーと明るく返事を返してくれた。


『はぁ書いちゃったな』

夜二時過ぎ、あの後私は眠れなくなって黒崎くんとの日記に、

私にとって唯一無二の親友は白石美姫だけだ。今握っているウサギがちょこんと乗っているボールペンも、彼女とお揃いの白いウサギのペンケースも、デスクの上に乗っているツーショットも全て美姫がくれた。

小さなフレームに映るのは身長も伸びた白のワンピースを着た可愛らしい美少女と、地味なシャツとジーンズを履いた私。

誰もが綺麗と思う美少女の無邪気な笑みと、不器用な笑みしかこぼせない私。

親友とはきっと10年後も20年後もこうして仲良く無邪気に過ごすかなと、何度か思ったけど美姫は私を置いてこの世を去った。

私は一連のエピソードを日記に書き終え、ポタポタとこぼれた涙をノートから拭き取ってかばんにしまう。そして再び、ベッドに身体を預けて夢の中でいいからと願い眠る。

アラームはなり現実に引き戻される。普通の女子と違う可愛らしくない部屋で、スマホのアラームは響き渡る。悲しい現実を受け入れアラームを止める。

無情にも【親友がこの世を去って10日目の朝を迎える】

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