第2話 僕が彼女を好きな理由
「ほーら席につけ」
僕は窓側の後ろは自の席に座る。もういない彼女の席は廊下の後ろ側だ。
あれから時間が経って授業が始まった。
黒板の文字は僕がトイレに行った後、日直の二人が綺麗に拭いてしまった。
多少はショックだったけどそれよりも黒板に書かれた白石の文字はきっとまた現れると思う。
だって君はそういう子なんだから。
「なあ黒崎」
「ん、青嶋くんどうしたの?」
僕の名前を呼ぶ前の席の男は
地味な顔立ちの僕とは違うくっきりとした目と高い鼻、はにかむ笑顔が魅力の彼は男子の中でトップクラス。
「いや色々あったのにこんなお願いするのは男としてヤバいのはわかってる。だがお願いだ、英語の課題を見せてくれ」
「あ、ああ別にいいけど。ってか自分でやれよなー」
「本当か!?サンキューだぜ黒崎」
そういって青嶋くんは僕が差し出したノートを大至急ペンでなぞって映す。
背中越しで見えたノートの字は白石と違って、大雑把で汚い字だった。
「なに笑ってんだよ〜」
「いやだって、青嶋くんってその字よく読めるよな」
「うるせーわ、悪かったな白石と違って
青嶋くんがすまなそうな顔をこちらに向けてくる。
彼の気遣いは僕に理解できる。
なにせ僕の彼女が亡くなってまだ一週間だからだ。
「気にしなくていいよ。それより早く書いたら」
「ああっ・・・そうだな」
「いや、なに俺の授業で内職してんだ! 青嶋ぁ」
「さーせんした!」
結局この後青嶋くんは数Bの授業に内職をしていたため、ゴリマッチョの岸田先生に怒られてしまった。
「はははっ」
「なんだよ〜青嶋っ! また怒られてやんの」
「青嶋くんったら謝ってるとこも絵になるよね〜」
「やべぇ、俺も英語やってねーわ」
クラス内で久しぶりに聞いたみんなの笑い声。
僕の目に映ったのはまるで白石が亡くなる前の学校ようだった。
もう白石はこの世にいないし、右後ろ隅の席は空席のままだ。
ムードメーカーの白石がいなくなって、悲しむクラスメイトは沢山いた。僕もだけど白石がいなくなってクラスは重い空気に包まれていたからね。
『はじめまして、黒崎
ふと僕の脳裏に笑顔が眩しい彼女が映った。誰もが勇気づけられる彼女の優しい声と、ほのかな女子特有の甘い香りに僕は一目惚れしてしまった。
ハズレクジを引いたと思った図書委員に僕は感謝した。
『よ、よろしくね・・・白石
この時の僕は気づいていなかった。
彼女と図書委員で巡り会ったその瞬間永続的な苦しみを味わってしまう女の子がいたなんて。
もし彼女と出会わなければきっと苦しまずに済んだのだろうか。
白石の席から一つ前にいるメガネのボブカットの少女、
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