泡沫に沈む

mackey_monkey

泡沫に沈む

ふらつく足取りで、目的もないままにただ街を歩く。


そんな私の横をまだ眩しいほどに若々しい学生たちが、懐かしさを感じるような制服を身に纏って楽しげに会話をしながら過ぎ去っていく。

私はそんな道の端の方を歩きながら、こそこそとスキットルを傾けると、中の液体をちょびちょびと口に含む。

嫌になるほど青々しい夏の空に背を向けて、特に意味もなく川辺へと足を向ける。


その道中でもやはり、私よりもできた人間たちが、シャキッとしたスーツ姿で私の横を過ぎて行った。

誰一人として私と同じ道を行く人がいないことが、今の私の心にとっての唯一の救いだろうか。


川に着くころにはさすがに日も傾き、ゆったりと流れる大きな川は朱色に染め上げられ、私のみすぼらしい影がヌウッと川の方へと引き伸ばされていた。

土手を下り、すぐそこのベンチに腰を掛ける。

遠くの対岸では無機質にギラギラとオレンジ色に輝くビルたちが、奇妙にもゆらゆらと踊っていた。


しばらくそこで飲んだくれれば、次第にあたりが暗がりはじめ、街灯もない川辺には月明かりだけにうっすらと照らされた、別の世界がひょっこり顔を出す。

そんな中で虫たちの煩わしい声に包まれ、ほんの少しだけ安心する。

(このままこの闇に包み込まれ、溶け込めたのならば、飲み込まれたのならば、どれほどに楽だろうか)

そう思いながら、ふと私は対岸の街の明かりへと手を伸ばした。


ずり落ちるようにベンチから離れると、一歩、二歩、三歩,,,と、歩を進める。

しかし、歩いても歩いても街の光を掴むことは,,,近づくことは、出来なかった。


そうやって、うつろに歩みを進めていると、次第に足が夜の闇に囚われていく。

,,,気が付いた時には、私の体は夜の闇へと飲み込まれていた。



虫の声も、夏の暑さも、何もかもが遠ざかっていく。


(あぁ、心地がいい,,,このまま,,,)


私の意識は次第に夢へと落ちていく。


暗い暗い闇の底へと,,,




夜の川、泡沫が弾ける。

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