第57話 クエストエリア到着
ハルゴ村に到着したのは、街を出立してから3日目の夕方のことだった。
「直近の予想していた日にちよりも1日早く着いたね」
「そうだな。思っていたよりも魔物との遭遇が少なく、予想以上に進めたな。不思議なこともあるものだ」
出立から2日目に立てた到着予想ではさらに2日かかると思われていた。出立から初日、2日目と魔物との戦闘が多く進歩状況が芳しくなかったからである。
しかし、出立から3日目は不思議なことに魔物と戦闘が異常に少なく、イレギュラーと言える出来事も少なかった。そのためスムーズにクエストエリアまで歩が進み、到着まで2日かかると予想してたところを1日で到着した形となったのだ。
3人はハルゴ村の周辺の草木に身を隠し、村の様子を伺う。
廃村ということだけあってかつて人が住んでいたであろう民家はボロボロ、畑は荒れ放題で作物は枯れ雑草が生い茂っている。地面もボコボコとしており、手入れなんてものはされていない。
「廃村というだけあって、不気味な雰囲気ですね。足を踏み入れるのに躊躇してしまいそうです」
「僕もお化けとか苦手なタイプだから、依頼とかない限りは近づきたくない」
日が落ちかけている今、村には一切の明かりがない。風化した民家が不気味な雰囲気を漂わせており、依頼でもない限り来たくない場所だ。
「しかし、本当にコボルトがこの村に住みついているのでしょうか。ここから見る限りでは、コボルトの存在を確認することができませんよ?」
「私もそう思っていたところだ。コボルトは集団行動を好む。村を根城にしているというのであれば、存在を確認できてもおかしくはないはずなんだが……」
村の面積はさほど大きくない。端から端まで歩くのに10分もかからないだろう。
加えて、廃村になってからしばらく時間が経つため村の景観は見晴らしの良いものとなっていた。
半分ほどの民家は手入れがされず風化し押しつぶされるように崩れている。死角を作るものが少ないため、ほぼ全体を見渡せる。
しかしそのような状況にもかかわらず、コボルトの姿は確認できない。
「クエストが掲示されてから時間が経っているから、コボルトはどこかに移動したのかも」
「その線もあるがコボルトの性質上、可能性としては低い。コボルトは一度根城を作ったら、そこを拠点に自分たちの社会を作り上げ活動することを好むからな」
コボルトの特徴として社会を形成するという性質を持っている。
人間社会同様、根城となる場所を見つけたらそこを拠点に、コボルト自らがそこに社会を作るのだ。
草木から体を出さないよう場所を移動し、村を見る角度を変える。
建物の死角を潰す様に村の周りをぐるりと移動するが、コボルトの存在は確認できない。唯一確認できたのは、コボルトが直近で食べたであろう肉の骨や、武器としているこん棒くらいである。
「おかしい。コボルトがいた形跡はあるにも関わらず、当の本体が見当たらない。ハルの予想通り、この村を捨てたか?」
「それか建物の中に隠れているとか。ここからじゃ民家の中までは確認できないから」
「可能性としてはありますが、あんな小さな民家に集団で中に入ったりするでしょうか」
村の中へ実際に足を踏み入れなければこれ以上のことは分からない。
「明日の早朝、日が昇ると同時に村に踏み込む。今日はもう暗い、一度村から離れて野宿をしよう」
日が落ち、当たりが暗闇に包まれ始める。
漆黒に包まれた状態で敵陣に足を踏み入れるのは得策ではない。ここは一度村から距離を置き翌日、朝日が昇り始めたと同時に行動を起こすこととなった。
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