三十二話 出発!!
簡単なあらすじ『クボタさんは自称神様とちょっと久し振りに会ってお話ししました』
翌朝、俺とコルリス、そしてナブスターさんの計三名は魔物達を引き連れて街へと向かっていた。
当然ながらそれは依頼のため、ザキ地方へと行くためだ。
……あと言い忘れていたが、今回はアルワヒネもちゃんと連れて来ているぞ。というか今回は本当に皆いるな。
……だが。
アルワヒネとルーの二匹が特にそうだが、皆いつもよりも少々浮かれているように見える。そして、それが気掛かりとなっている。
恐らく、全員がいる事で行楽とか、修学旅行……?
それらにでも行くかのような気持ちとなってしまっているのだろう。
……少し心配である。
注意の一つでもしておくべきだろうか?
いや、でも何だか可哀想だし。
それに……
「クボタさんクボタさん!
今ナブスターさんとも話したんですけどね……
これが終わったら皆で酒場に行きましょうよ!!
そこで依頼の成功と、アライアンスにナブスターさんが加わった事へのお祝いを兼ねた宴会をするんです!!」
「え?あ、ああ、良いね。楽しみだよ……」
「じゃあクボタさんも参加って事で大丈夫ですね?
ウフフ、楽しみです!何食べよっかなぁ……」
「…………」
この会話でも分かるように、まずそもそもとして人間サイドのコルリスが一番浮かれているから魔物達に注意がし辛いのだ。
それはもうふわっふわに……
このまま「おい!遊びに行くんじゃないんだから、ちょっとは気を引き締めろよ?」とか言ったら、エリマにはまず間違いなくその辺りを突っ込まれてしまう事だろう。
〝何だよ!何で僕達には注意してコルリスちゃんはお咎め無しなのさ!?〟などと言われてな。
そして、逆ギレされた俺の心は沈んでゆくと……困ったものだ。
まあ仕方がない。
とりあえず今はこのままで良いとして、ターゲットとなる魔物と接敵する前くらいの段階でもまだこのような状態だったら、そこで窘めるとしようか。
俺はそう考えながら、はしゃぐ人間、そして魔物達とは正反対に黙って歩いた。
それから暫くすると、街に到着した。
街に入ってすぐの場所には、一人の少女がぷるりんとしたものを従えて立っているのが見える。
「遅刻しないでちゃんと来たわね」
「やあジェリアちゃん、おはよう」
それは勿論、ジェリアだ。
というか彼女とはここで合流する予定だったから、当たり前と言えばそうなんだがな。
……そこからも分かるように、珍しく彼女はお泊まりしなかったのだ。
まあそれもそのはず。彼女はあの時ミドルスライム、チビちゃんを連れていなかったのだからな。
……だからそう。
これは、一人だけ丸腰で討伐依頼に向かう。というのを彼女が嫌った末の決断だったのである。
……いやまあ、嫌うも何も、これもまた当たり前なのだが。
「さ、行きましょう」
そうしてアライアンスの面々が全員揃い、四人となった俺達は挨拶もそこそこに、ヴル停へと向かうのだった。
あ……その前に。
ヴル停とは各地方に向かうヴルヴルのいる停留所の事でかつそれの略称であり。そして俺の作った造語だ。一応言っておくぞ。
場面は変わり、クボタ未踏の地へと移る。
そこにいたのはニブリックとその相棒、クリークであった。
彼女等は前に立つ植物を払い、木々を避け、その地の北端へと向けて歩を進めている。
「ん〜……身体があるってのは良いなぁ。
やっぱ、『器』も無いとな。
魂だけじゃいつ消えるかも分からんからおちおち本気も出せねぇ……」
ニブリックは背伸びをしながら言う。
そんな彼女の口調は、態度は大きく様変わりしていた。その原因は彼女の体内に、赤く光る球体であった魔物が入り込んだ事と見て間違いは無いだろう。
「それで相棒?
目的地はこっちで合ってんだろうな?」
ニブリック……いや、魔物は一旦立ち止まると、傍らを見てそう言った。
〝…………ああ、こっちだ。間違いない〟
答えたのはクリークだった。
魔物の魔力を分け与えられた事により人語を扱えるようになった彼は、不満げな様子でそう言う。
「なら良い……へへへ、助かるぜ。
身体が手に入ったのは良いが、鼻が効かなくなっちまったからな……じゃあ最後まで案内頼むぜ、相棒」
〝……本当に全てが終わったら、主人に身体を返してくれるんだろうな?〟
「心配すんなって言ってんだろ。
それに、これにはお前の主人も了承済みなんだぜ?お前だって聞いてただろ?
分かったらさっさと案内してくれ……じゃねえとこの身体、ぶっ壊しちまうぞ」
〝……卑怯者が〟
そうして二匹の魔物は再び、その地の北端へと歩を進めゆくのだった。
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