三十一話 木陰に光る球体 その2

簡単なあらすじ『クボタさんの所に自称神様がやって来ました』




「……クボタさん。

今からちょっと真面目な話をするんで、ちゃんと聞いてて下さいね?」


そういうと、珍しく神妙な顔……もとい、珍しく神妙な態度となった自称神様は話し始めた。




「実は少し前に、この国の何処かで強い力の動きを感じたんですよ。


残念ながら一瞬だったんで、出所は掴めませんでしたが……それでクボタさんは大丈夫かなあと思って。


まあ何が言いたいかと言うとですね……とりあえず何か嫌な予感がするんで、気を付けて欲しいって事です」


自称神様はそのように話を締め括った。


随分と短い話だった……しかも、結局色々とあやふや過ぎて何に注意したら良いのかも分からないし。


「言いたい事は分かったけど……無理じゃない?それだと何に気を付けたらいいか全然分かんないもん」


「んー……まあ言われるとそうですね。

何かその、ごめんなさい……」


俺が軽い文句を言うと、彼は素直に謝る。


まあ多分、コイツも心配して来たは良いものの、『それでどうするか』、『それについての対策』なんかは何も考えていなかったんだろうな。


でもまあ、その気持ちだけは受け取っておいてやるか……俺は口を開いた。


「とりあえず、気に掛けてくれてるのだけは伝わったよ。


ありがとう。まあ色々と気を付けるね」


「ええ、まあ……それでお願いします」


……そうして微妙な空気のまま、球体の真面目な話とやらは終わった。




「では、僕はこれで!」


自称神様はあんな話で本当に俺への用事を済ませてしまったらしく、空へと舞い上がりもう何処かに帰ろうとしていた。


「あ、待ってよ。

まだ時間ある?他にも聞きたい事があるんだ」


それを俺は呼び止める。


先にも言ったが、まだ聞いておきたい事が残っているからだ。


それに、ここで質問しておかないとコイツとまたいつ会えるか分からないからな……


「え?……まあ、全然大丈夫ですけど」


自称神様は既に俺の頭上程度の高さにまで浮かび上がっていたが、それを聞いて再び胸元くらいの位置に戻って来た。


では、そんな彼に質問するとしよう。


前から気になっていたあの事をな……俺は話し始めた。


「あのさ……お前。


俺がまだこっちに来たばかりの頃にさ、自分の身体を取り戻すのにはランクを上げるのが近道。


みたいな事を言ってたと思うんだけど……

あれは何でなんだろう、何か関係があるのかなって、ずっと気になってたんだ。


教えて、もらえるか?

今なら良いだろ?俺もおザキ様から色々と聞いた後なんだからさ」


「ああ、その事ですか。


勿論良いですよ。

それは…………」


そうして自称神様は話し始めた。

俺は耳をそばだててそれを聞く。


「とは言っても、単純な話なんですけどね。


クボタさんには僕の身体の封印を解いてもらうために、その身体を強くしてもらいたかった……


って言うのは聞いたと思いますけど、それならランクを上げるのが一番分かりやすくて手っ取り早いですから。


ほら、目安があると自分に今どれくらいの実力があるのかとか、分かりやすいでしょう?


……まあそんな感じですね」


最後にそう言い、自称神様は俺の方を見た……ような気がした。


ありゃ……これは実に単純明快。

悪く言えば雑な理由であったようだ。


……何だか、期待した自分が馬鹿みたいだな。

俺は肩を落とした。


「あれ?どうしましたかクボタさん?」


「……えーっとね、もうちょっと壮大な理由があるのかなと思ってたんだけど……


それが単純過ぎてちょっと気が抜けちゃったと言うか何と言うか……まあそんな感じ」


「あはは……何かすみません。

……今日僕謝ってばっかりですね」


「いやまあ、謝らなくても良いんだけど。

とりあえずよく分かったよ。引き留めて悪かったね」


「良いんですよ、別に急いでるわけじゃないですから……ではまた!」


そう言うと、自称神様は今度こそ何処かへと去って行った。


「うーん……」


質問の解答がきちんと返って来たのは良いが、それがあまりにも単純過ぎてコメントしようが無い……だから俺は唸っていたのだ。


でもまあ、コメント出来無いと言う事は唸る必要もないか。


というワケで俺は魔物達の元へと戻り、彼等と共に練習を再開した……

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