百三十六話 VSキングさん! その5

簡単なあらすじ『昇格試合第二ラウンド……今開始です!!』




とうとう動き出したプチ男とケロ太、そこに俺を加えた『チームクボタ』がキングさんに挑む……


今この瞬間、『昇格試合第二ラウンド』が幕を開けたのだった。


先程ダメダメな指示ばかりしか出来なかった事を反省し、今回は全力で彼等をサポートするとしよう。


それでも、キングさん相手だとあまり意味は無いかもしれないが……だがそれでもやらねばならない。


……そうしなければ自らを鼓舞し、勇気を出してキングさんと戦う事を決めたプチ男とケロ太に申し訳が立たないからな。


俺のせいで敗北してしまった、ルーとエリマにも……


だからもう一度言うが、あまり意味は無いのだとしても俺は全力でアイツらのサポート役を務めさせてもらおう。


……さあ、勝負だキングさん!!




そうして始まったスライムまみれの決戦。


だが、正面から挑んでも勝ち目は薄い……それも向こう側が透けて見える程の薄さであろう。


そこで俺は真っ向勝負を避け、かつ二匹のスライムを分散させる事にした。


「プチ男!ケロ太!左右に分かれろ!

間違っても正面から攻撃するんじゃないぞ!!」


それを聞いた二匹はすぐさま二手に分かれ、キングさんを横から挟み込むように位置取った。


良し。これで少なくとも二匹同時に攻撃を受けてあっさり敗北……なんて事態にはならないはずだ。


「なるほど。

彼等もまた、良く訓練されているようですね。


……さて。準備は宜しいですかな?

今回は始めから攻撃させてもらいますぞ!」


二匹が行動を終えた後でキングさんは言い、再び彼の攻撃が開始された。


「来るぞお前ら!!落ち着いて対処しろ!!

無闇に攻撃しようとするなよ!!」


それを見、俺はすかさずまたそのような指示を飛ばした。


勿論、格上の相手に防御ばかりでは勝つ事が難しいのは重々承知している……


だが、例えダメージ覚悟で突っ込んだとしてもキングさんのあのパワーでは吹き飛ばされてしまうのがオチだろうし、そもそもとしてそんな無茶な作戦を指示するつもりは無い……


ならば今は防御に徹しておいた方が良いと、そう思ったのだ。


しかし、様子見の時間は無しか……

少し不安だ。プチ男とケロ太はキングさんの攻撃を防ぎ切る事が出来るだろうか……


そう思っていたのだが、意外な事に二匹はぷるぷる、ちょこまかと動き、キングさんが繰り出す素早い一撃一撃を躱し続けた。


それを不思議に思った俺は、目の前で激しく動く三匹をより注意深く見つめる……


すると。

二匹は何と、キングさんの攻撃が来る少し前から既に跳ねたり、左右に動く等してその場を移動し、それを回避していた事が判明した。


まるで、未来予知しているかのような動きだ……


(これはそのような事柄から俺が推測した、ただの仮説でしかないのだが。


もしかするとスライム同士は互いの肉体が何処の、どのような部分であるか分かるがために、相手の動きも、次の手もまたすぐに察知する事が出来る。


……のかもしれない)


まあそれがどのような理由であれ、こちら側にとって悪い事ではないのは間違い無い。


もしかすると、その隙を見て攻撃も出来るかもしれないな……俺はより試合に集中し、それを注視し、そのチャンスを窺う事とした。


暫くそうしていると、好機は唐突に訪れた。

攻撃のはずみでそうなったのか、キングさんが今までよりも少し高く、中空に跳ね上がったのだ。


なら、着地の瞬間を狙えば……


こちらの指示で彼がその思惑に気付いてしまわぬよう、俺はギリギリまで声を出すのを待った。


「……………………!

今だお前ら!!攻撃だ!!」


遂に時は来た。

俺はプチ男とケロ太に攻撃を指示する。


すると、言うが早いか、プチ男がすぐさまキングさんへと体を伸ばした反動による素早い体当たりで突っ込んでいった。どうやらアイツも俺と同じ事を考えていたらしい。


しかし、キングさんは攻められる事を予測していたようで、着地する手前の空中で体を伸縮させてまた宙へと浮かび上がってしまった。


そうだ、確かキングさんも『そう言う動き』をするんだったな。やっぱりスライムを相手にするのは思っていたよりやり辛い……


「……あっ!危ない!」


考えていたのも束の間、俺は思わず叫んでしまった。

攻撃をスカしたプチ男がそのまま、ケロ太に迫っていたからだ。


……そりゃそうだ。

ケロ太はキングさんを挟んでプチ男の直線上にいたのだからな。


何でこんな事を忘れてアイツらに攻撃の指示なんて出してしまったんだ。馬鹿だ。俺は本当にバカだ……今一番冷静でないのはもしかすると自分自身だったのかもしれない。


落ち着けだの何だのと魔物達には言うクセにだ……

俺は自身の愚かさにまた頭を抱える事となった。

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