百三十七話 VSキングさん! その6
簡単なあらすじ『プチスライム二匹が誤って同士討ちしそうです』
間に合うだろうか、正直厳しいとは思うが……
だが放置出来るはずもなく、俺はケロ太にプチ男の攻撃を避けるよう指示した。
「すぐ移動しろケロ太!左右どっちでも良い!
ただ、〝上〟はダメだぞ!!」
ちなみに、上がダメなのは再び跳ね上がったキングさんがそこにいるからだ。
さて、ケロ太はどうするだろうか。
……そう思い見つめていた俺は、奴の行動がこれっぽっちも理解出来ずに首を傾げる事となった。
ケロ太はその場から動かなかったのだ。
そのままでは攻撃が降り掛かるであろうと言うのにも関わらず。
というかむしろ、アイツはプチ男の体当たりを受け止めようとしているような……そんな風に見える。
「お、おい!何やってるんだ!?」
だが、もしそうなのだとしてもその意図は測りかねる……我慢出来ずに俺は再び叫んだ。
しかし、それでもケロ太は動かない。
そうして遂に、プチ男が奴と接触してしまった。
……すると、驚くべき事が起こった。
ケロ太に直撃したかと思われたプチ男がすぐさま軌道を変え、今度はキングさんへと一直線に向かっていったのだ。それはまるで、光線を鏡が反射するかのような動きであった。
しかもスピードを落とす事も無く、そのままの勢いで……いや、むしろ今の方が速度が出ているかもしれない。
……そう言えばプチ男と接触する直前、ケロ太が一瞬のうちに体を素早く伸縮させていたように見えた。
あれはもしや、プチ男もよくやる『投げ技を応用した動き』だろうか。
いや、きっとそうだ。それでアイツはプチ男の攻撃を緩和し、かつ別方向に弾き出したのだ……アイツもきちんと覚えていてくれたんだな。
……それは当然ながら嬉しいのだが、それにしてもコイツらはそれを応用しまくっているような気がする。と言うか、普通にしまくっているか。
正直、ここまでコイツらに格闘センスがあるとは思わなかった……
なのでこれも正直に言ってしまうが、ルー、エリマと比べるとパワー不足であろうプチスライム達は、進化でもしなければどうしてもその控えくらいの実力にしかなれないと思っていたのだが……
もしかすると、コイツらは鍛えさえすればそれに追い付き、或いはそれを超えてしまうような存在となる……のかもしれないな。
もしかしたら、ひょっとしたらの話ではあるが。
そうして放たれたプチ男という名の弾丸がキングさんに迫る……
しかし、それはあと少しという所で躱されてしまった。
まあ正直、あの人なら避けるとは思っていたが……でも、アレが直撃すれば割と良いダメージは入ったはずだ(多分)。
当たって欲しかった……
俺は「クソッ!」と相手にでもなく、自身の魔物達にでもなく、強いて言えば、『相手との実力差』に対してだろうか、とにかくそれに対して悪態……というレベルでも無い程のものをついた。
「何と……!」
だが、キングさんはプチ男の攻撃を回避こそすれど、その行動に対して驚いたのは確かなようで、彼の口からはそれが非常によく分かるような一言が発せられた。
「彼等は非常に息の合った動きをするのですな!
いやはや、実に素晴らしい……!」
降下しつつ、またキングさんは無い口を開いてそう言う。
確かに、それには俺も驚かされていたから彼がそう言うのも納得だ。
……あ。
これは夜中にしていた、コイツらの『練習』の成果なのかもしれない。
プチスライム達はそうする事によって実力だけでなく、実に息の合ったコンビネーションをも獲得していたのだ……恐らくではあるが。
「それに、あの攻撃は…………
まあ、今は良しとましょう。
さあクボタさん!それと君達!
もっと私にその実力を見せてください!!」
すると、キングさんには先程の攻撃によって更にやる気が注入されてしまったらしく、これまた楽しそうな声色でそのような事を言い始めた。
……今見せたプチスライム達のコンビネーション。
それはどうやら、悪手だったようだ。
その後もキングさんとの戦いは続く。
だがしかし、彼の戦法(?)、それが少し変化しているような気がした。
「君達のした〝アレ〟は攻撃に使用する時、更に伸縮を続ける事によってもっともっと威力を増幅させられるのです!
ほら、このように!!
貴方達もやってみなさい!!」
キングさんがそのような事をまるで教授しているかのように喋りながら動き、攻撃し、プチスライム達は必死でそれに対応し、彼の動きを真似る。
それは名付けるならば、「プチスライムでも分かる戦闘講座」であった。
……そのような講座を受けるために、ここにいるワケではなかったと思うのだが。
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