百三十三話 VSキングさん! その2

簡単なあらすじ『ルーちゃん、エリマ君がキングさんに攻撃を仕掛けます』




(暇だなぁ。クボタさんばっかりズルい……


いやいやいや!皆頑張ってるんだから!

私もせめて心の中だけででも応援しないと!


頑張って、クボタさん……!

…………暇だなぁ。後どれくらいで終わるかな?


ハッ!いけない、そんな事考えちゃダメだ!

……でもやっぱり、暇だなぁ。


嫌でも考えちゃうよ…………

ダメだ。今日の晩御飯の事でも考えていよう)


コルリスの胸中より。




ルーとエリマのコンビが攻撃を仕掛けた事によりとうとう始まったキングさんとの戦いを、俺は祈り、静観している事しか出来ずにいた。


それは自発的に動いた彼等の判断が正しいようにも感じはしたが、ただ少し試合を急ぎ過ぎているような気もして……と、俺自身曖昧であった事が大きな理由だ。恥ずかしながら。


しかし、戦況は悪くなる一方であった。


ルーは普段よりも素早く動いてキングさんに対して猛攻撃を仕掛け、エリマはそれをサポートするかのように中距離からの炎を吐いて攻撃している……それに加え、数ではこちらが有利であるにも関わらずだ。


……まあ、その理由は見ていればすぐに分かる。


ルーは素早く行動こそしているが、エリマの炎を気にしているようで攻撃をミスする確率が普段よりも高く、一方でエリマもルーにその攻撃が当たるのを危惧してかそれを放つ速度、精度共に低く、命中率が今の所ゼロとなってしまっているのだからな。


また、そのせいで二匹は互いに疲弊し、段々と動きが悪くなりつつある。


この時俺は、インスタント……つまり練習なしで挑む二匹同時での戦いがどれだけ大変な事かを気付かされる事となった。


だが、一匹でキングさんに勝つビジョンは全く見えてこないのだから、それをやめさせるのというのはあまり得策ではないように思える……とはいえ今の、卍巴に入り乱れているような戦いの場では適切な指示を出す事すら難しいし、何より疲弊する一方だ……


……俺はなかなか考えが纏まらず、試合が始まり数分が経過した今もまだ、やはりと言うべきか立ち尽くしたままそれを眺めている事しか出来ていなかった。




その時、試合が動いた。

今まで回避行動ばかりしていたキングさんが攻撃に転じたのだ。


それはルーを狙ったものであった。


キングさんの体をくねらせて放つぷるりとした一撃がルーを襲い、彼女は宙に浮き上がる。


「むあ!?」


ルーはその攻撃を一応防ぎはしたが、予想以上に吹き飛ばされてしまいとても驚いているようだ。どうやらそれは見た目よりも遥かに威力のある一撃であったらしい。


「ふぅ……集中していなければ恐らく数発は〝良いもの〟をもらっていた事でしょう。


どうやら即席の二人組のようですが、これはなかなか……」


またぷるりと空中で体を捻り、無音で着地したキングさんはそう言った。


だが、そんな彼の口調からは余裕が垣間見えた。

ああは言いつつも、まだ実力の半分も出していないのかもしれない。


「では、次はこちらから行かせてもらいましょうか」


次にキングさんはそう言った。


すると、それを聞いたルーとエリマが先程以上に強い殺意を身の内に宿した事を俺はその場の空気から感じ取った。強く、痛い程に。


目の前にいて、自分達を圧倒し続けているスライムがとうとう攻撃を始めると宣言してしまったのだ。むしろ相手を殺すくらいの覚悟でいなければ、あっという間に倒されてしまう……彼等はその事を理解しているのだろう。


ボワ!


直後、そのような音が会場に響いた。

エリマがキングさんに向けてまた炎を放ったのだ。


それに合わせてルーが大地を蹴り、スライムへと急接近する。


……二匹は急いで勝負を決める気でいるようだ。

そんな彼等は多分、いや間違いなく、今焦っている。焦りがそのような行動を取らせているのだろう。


「待て!!」


ここまで静観していた……いやしている事しか出来なかったが、それは敗北を呼び込むだけというのはそんな状態の俺にでも分かった。


なのでどうにかやめさせようとしたが……少し遅かった。




二匹の攻撃を前にしたキングさんは体を鞭のようにして応戦する……かと思いきや、それを敢えてルーの目の前で止めた。


それはルーの動きを数瞬封じる事となり、そんな彼女には……


〝危ないルー!避けて!〟


後方から放たれたエリマの炎が近付く。


しかしそこはルー。

エリマの声を聞いてすぐさましゃがみ込み、迫り来る炎を既の所で躱した。


だが、キングさんの追撃までは避ける事が出来ず、ルーは……

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