百三十一話 ぷるりとしたあの人
No.480 スライムキング
不定形魔水類ミズタマモドキ科
体長 54cm (これは『スライム形態』の時の数値である)
体重 13kg (同上)
能力値
『力』3552 (ただし、何故かこの数値の二倍以上だという説もあるそうだ……本当に何でだろうな?)
『魔力』3006
『機動力』3709
討伐依頼受諾可能最低ランク
なし(消息不明のため)
・昔、この魔物が我が国にいた事はまず間違い無いようだが……現在では消息不明である。
・ついさっき発見。というか再会した。
この魔物はキングスライム……ではなくスライムキング。
サイズ由来とは違い、文字通り『スライムのキング』と言う所からその名がつけられた現存するスライム系魔物最強クラスだと言われている魔物だ。
何でも、この魔物は最初こそただのちょっと強い※1『プチスライム』の親分……のような存在として、カムラ地方の同族達が多く生息している辺りを支配していたらしいが。
(とは言っても所詮プチスライム、その範囲はそこまで広くはないものであったそうだ)
ある日、そんな彼を負かした一人と一匹の魔物に勧誘され、まだキングではなかったスライムは彼等に同行する事を決意したらしい。
そうして始まった彼等との旅路の中で、数々の苦難を乗り越え彼が手に入れたのは……『その小さな体には有り余る程の大いなる力』だった。
そう。彼が真にスライムキングとして生まれ変わり、同時にスライム系最強格の魔物が誕生したのはその時なのである。
また、当然ながらその戦闘能力は凄まじく、サイズなど無関係にどんな魔物でさえもスライムキングの前では赤子同然のようになってしまうのだと言う……
魔王城の主のような、更なる強者共を除いて。
(そしてこれは余談だが、スライムキングには〝彼〟とも面識があるという噂がある)
ちなみに……
その一人と一匹の魔物とは、以前紹介したあの恐ろしく強大な力と肉体を持つ魔物、※2『ザラタン』を打ち倒した英雄と同一人物なのだと言われているぞ。
だからそう。
この魔物のそういった逸話もまた御伽話というか、神話というか、まあそのような類のものに近く……つまり、あまり信憑性のある情報ではない。
……にも関わらず、我が国にはこの魔物を目撃したという情報、記録等がいくつもあるため、少なくとも『存在していた』という事だけはほぼ確実であるようだ。
だがしかし現在は消息不明であるんだそうで、ここまで発見されないのだとすれば他国へと行ってしまったのか、それとも絶滅(とは言っても最初からスライムキングは一匹だけなのだが)したのだろうかと……まあ色々噂されているらしい。
しかもそのせいでこの魔物は今、ウチのケロ太のように一種のUMA的存在として人々の語り草となっているんだとか……
まさか、そんな魔物が人間に擬態(?)して我々の近くにいたとは誰も思わなかっただろうな。
……ねえ、キングさん。
注釈
※1 プチスライム 『第一章外伝 クボタのスライムメモ』にて紹介
※2 ザラタン 『クボタさんの魔物図鑑 その53』にて紹介
簡単なあらすじ『休憩時間&質問コーナー強制終了です(?)』
「さ、さて……クボタさん!
見た所大分落ち着いたようですし、そろそろこの時間を終了にしても宜しいですかな?」
体裁が悪いと感じたのかキングさんはそういって俺の〝口撃〟をぷるりと躱した。しかも、そんな彼によって今、休憩時間&質問コーナーまでもが終了にされようとしている。
まあ、突っ込み過ぎたようだから仕方ないか。
それに、俺が精神的に落ち着いてきたのも事実ではある。むしろこれくらいで丁度良かったのかもしれない。
よし。
ならば気を取り直して、これから始まる戦いに集中するとしよう……まだ色々と気になる部分が無いと言えば嘘になるけれどもだ。
「と、言っておいてすみませんが、その前に私からも一つ。
クボタさん。貴方結構すんなりと私が魔物である事を受け入れたように見えますが……もしや、そういった体験は初めてではありませんでしたか?」
集中……しようかと思ったら今度はキングさんが俺にそのような質問をしてきた。
でも確かに、そう言われればそうだな。
最初こそ酷く驚きはしたものの、終わってみれば普通に、何なら人間モードの時と変わらず質問までしていたような……
あ、〝アレ〟のせいかも。
「もしかすると、〝コイツの時〟に似たようなものを見ているからかもしれません」
俺はそう言ってケロ太を指差した。
自分でも気が付いていなかったが、俺が彼のした変身を割に抵抗なく受け入れる事が出来ていたのだとすれば、それは間違いなくこのケロ太のお陰(?)であろう。
そう、似たような体験である『カエルフォルム、またはプチスライムへの変身』を見せてくれたコイツのな。
「……あぁ。
なるほど。確かにそうでしたね……
なら……仕方ない……ですね……」
するとキングさんもそれを思い出したようで……何故か少し、落ち込んでいる様子だ。
ハッ!
もしかするとこの人は、もう少し俺に驚いて欲しかったのだろうか?
「あ、いや……凄く驚きましたよ?」
まだ推測でしか無いが、その可能性は高い。
という事で、俺がそう言ってみた所。
「…………やはりそうでしたか!!
ええ、そうでしょうとも!!いやそうでなくては!!
アッハッハッハ!!……失礼失礼。
ではクボタさん。休憩はそろそろ終わりにして、早速試合を始めるとしましょう!!」
明らかに元気になった。
(……何だコイツ)
例えそれが心の中だけであったとしても、目上の人に対してコイツと言うのはかなり珍しいのだが……
何故だか彼のあの喜びようを見ているとどうにも言いたくて堪らず、俺はそう胸中にて独りごちた。
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