〜異世界魔物大図鑑〜転生したら魔物使いとかいう職業になってしまった俺…とりあえずこの世界の事は何にも知らないので魔物を育てながら図鑑的なモノを作る事にしました
百二十五話 Eランク昇格試合……はまだですか……? その2
百二十五話 Eランク昇格試合……はまだですか……? その2
簡単なあらすじ『クボタさん達はまだ待たされています……』
結構な時間走り回っていたルーだったが、流石にそうするのに飽きたのか今度はエリマを相手にして練習でやるスパーリングの真似事のような遊びを始めた。
その挑戦(?)を受けたエリマは意外にも乗り気になっているようで、片翼を何度もはためかせて彼女に戯れ付く。
しかし、その体格から繰り出される攻撃(?)は思いの外強力なものであったらしい。その証拠に、二匹の近くにいた二つのぷるぷるの体には波紋が存在していた。
しかし、ルーはエリマのそれを喰らってもニコニコとしている。プチ男とケロ太がぷるっていたのでその威力に少し驚いたが、片翼のドラゴンは一応手加減はしているようだ。
(いや、ルーが頑丈なだけか?)
……それならばひとまず、怪我の心配は無さそうなので俺は彼等を好きにさせておく事とした。
ただぼうっと待ち続けて、選手である彼等の体が冷えてしまうのは困るというのもあるしな。
しかし……そういうのは一歩下がって見ているようなタイプ(正確に言えば自分自身が遊具となるタイプか)だったはずのエリマがあそこまで積極的に皆と戯れているのは少し珍しいように思える。
やはりアイツもまだまだ子供という事だろうか。
いや、暇だからというのが大きいのかもしれない。
……まあどちらにせよ、そうやってストレスを発散出来るのは正直羨ましい。
俺も出来る事ならそうしたいのだが……残念ながら壊れたコルリスに肩を貸している今の俺には、それはどう足掻いても不可能であるのだ。
……いやすまない、嘘をついてしまった。
本当は周りの目が気になるから出来ないのだ。
だって、仕方ないだろう?
俺はアイツらとは違って人間なんだから……一応。
そんな風に俺が魔物達を羨ましく、そして少々妬ましく思いながら見つめていると、一人のスタッフ的な役割をしているのであろう男性が俺達の方に歩み寄って来た。
「クボタさん。大変お待たせしてしまい申し訳ありません」
彼は開口一番にそう言う。
本当だよこの野郎……
とまでは言えないものの、少々苛立っていた俺はとても「いえいえ大丈夫ですよ!」などのような気立ての良い事もまた言えず、男性にはついつい嫌味を含んだ返事をしてしまった。
「いえいえ、全然待っていませんよ。
むしろ早くて驚きました」
しかも俺はそのような事を抑揚の無い声で言い、その後でやおらゆっくりと立ち上がって彼の方に視線を向けた。
そう、今言った事が真意ではないのだと、目の前の人物に声と行動、その全てで言い聞かせるかのように。
「……本当に申し訳御座いません」
俺の言葉を聞いた男性は先程以上に深く頭を下げて言う……
それを見、他者を不快にさせるような態度をとる自分が嫌になった俺はそれをすぐに改めた。
「あ……こちらこそ、すみません。
でも何と言うか、ここまで時間が掛かったのには何か理由があるのでしょうか?」
そして謝罪もし、そのような事も言ってみた。
今回は嫌味ではなく、単純に疑問に思ったからだ。
「ええ、当然ながら御座います。
そうでなければこのような事は決して致しませんので……
ですが……僭越ながら申し上げますと、私の立場では現在、それをクボタさんに詳しくお伝えする事が出来ないのです。それに、ここは人目もありますし……重ねてお詫び申し上げます。
ですのでクボタさん。
恐れ入りますが、ここはひとまず何も言わずに、私について来ては頂けませんでしょうか?
控え室の準備が出来ていますので。
どうか、よろしくお願い致します」
すると、彼からはそんな言葉が返ってきた。
そう言われるとますますその理由とやらが知りたくなってきたが、そこまでご丁寧に頼まれたのならば仕方がない。俺は黙って男性について行く事とした。
「……よく分かりませんが、そう言う事なら。
では行きましょうか」
「ありがとうございます。
試合が始まる前までには必ず、然るべき者からの説明があるかと思いますので。
それでは、こちらへどうぞ……」
俺は魔物達をこちらに呼び寄せた後で彼に付き従う……
おっと、その前に疲れ果て、眠ってしまったコルリスを起こさなくてはな。
そう思い、俺は彼女の肩に手を掛ける。
が、それと同時にまた申し訳なさそうな顔をした男性から声を掛けられた。
「あっ……あの、クボタさん。
大変申し上げにくいのですが。
〝今回の試合は控え室への立ち入りも含め最初から最後まで〟クボタさんお一人でお願いしたいとの事です……
ですので、こちらの方はお目覚めになったとしても会場にも、控え室にもお入りになれません……そっとしておいてあげた方がよろしいかと」
「え!?」
何だって!?
もうちょっと早く言ってくれよ。起こしちゃったじゃないか。
「ん……何ですかクボタさん?」
今のはコルリスの言葉だ。
ほら目を覚ましてしまった……というかこれは、俺が八つ当たりされてしまうパターンなのでは無いだろうか?
段々と不安になってきたぞ……
(勿論、その不安はまもなく始まるであろう、試合への緊張からきているものではないぞ。分かると思うけどな)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます