百二十四話 Eランク昇格試合……はまだですか……?

簡単なあらすじ『昇格試合の手続きを済ませ、その順番待ちをしているクボタさん。でも何故か最後まで待たされて……』




今回の昇格試合に選出する魔物。

その事について何一つ聞かれなかったのが気になった俺はスタッフ的な人に質問をした。


のだが、何とそこから俺達は、最後の最後まで放置されてしまうのであった……




一応弁解しておくと、俺だって最後まで何もせずに大人しくしていたワケではない。


ちゃんと他のスタッフ的な人に何度か聞いてみたり、凄く言い辛いものではあったが『あのー、俺の事忘れてませんか?』的な事も言ってみたり。


というか、手続きは最後尾ではなかったのだから『そもそもの試合の順番』も明らかに遅いワケで、勿論その事についても話してみたのだが……


彼等は皆、『少々お待ちくださいね』と言って奥に歩いていくばかりで戻っては来ず、それでとうとう最後まで待たされてしまったのである。


何なんだ、これは。

一体これのどこが少々だと言うのだろうか……まさか忘れているのか?


だとしたら、ここのスタッフ的な人達はどうしてそこまで素早く記憶喪失出来てしまうのだろうか?


それか聞きに行った先で、今度は責任者も何処にいるのか分からずそれで皆困り果てているとか……


まあ、国営(?)みたいな所で流石にそれはないと思うが……いや、手紙だってあのザマだったのだから、あり得ない話ではなくなってしまっているのか。今となっては。


そんなワケで、いくら『優しさ』に定評のある(?)俺と言えど、そろそろ苛立ちを隠し切れなくなってきた所であった。


とは言え、暴れたり暴言を吐いたり、他の者に当たり散らすまではしない。というか出来ないし俺はそんなタイプではない。


今は木製のロビーチェア(?)みたいなものに腰掛け貧乏揺すりをやや激しくしているくらいである。(人が減ったので漸く座る事が出来たのだ)


それで極小のカロリーと共に、少しずつ俺のイライラも消費されてくれれば良いのだが……


いや、残念ながらそれは無理そうだ。

このロビーチェアが木製なためか、尻が痛くなってまた更にイライラしてきた。


「クボタさん、揺れるんでやめて下さい」


暫くそうして貧乏揺すりを続けていると、コルリスに無理矢理手でそれを止められてしまった。


ちなみに、彼女はそう言いつつも怒っているワケではなさそうであり、それどころかまるで呆然としている時のような表情をしていた。


まあ、『そんなにイライラしないで下さい』とかは言わない辺り、彼女も俺と似たような感情で全身が満たされつつあるのだろう。それが怒りなのか退屈なのかまでは分からないが。


「ごめん……ずっと待ってるからつい」


「大丈夫ですよ、分かりますから……でも本当に遅いですよねぇ……まだなんでしょうか?」


その事について謝罪すると、コルリスからはそのような返事がきた。これだけ待たされていれば当たり前とすら言えるが、やはり彼女もまた俺と同じような心持ちであったようだ。


「あ〜もう疲れたよ〜プチ男君〜……はいないんだった」


可哀想に、そんなコルリスは疲れのせいか段々と壊れ始めたようだ。いもしないプチ男の名を呼び、それがいないと知れば何故だか俺の肩にもたれ掛かってくる始末である。


普段はそんな事などしない、良い子であると言うのに。


しかも、今度は彼女がそのままの状態で貧乏揺すりを始めた。膝同士が擦れて不快なのでやめてほしいのだが……


ちなみに。

その今いないというプチ男は体調不良で欠席……とかではなく、他の魔物達と共に闘技場の外へ出て遊んでいるぞ。


(それもここから見えるくらいの場所でだ。だから迷子になるとか、他者に迷惑をかけてしまうだとか、その辺りの事は心配しなくても良いのである。少なくとも今の所は)


そんな彼等は今も尚楽しそうに走り回っている。


だからそう、これだけ待たされているとはいえ、『アイツらの精神面』については一切気にする必要はないのだ。アイツら自身が一番気にしていないのだからな。


むしろそれを気にすべきは我々人間組の方であろう。


その被害は、それはそれは甚大なものとなっているのだから……特にコルリスが。


「あ〜クボタさん〜つまんないですよ〜」


壊れかけの彼女は先程と全く同じ姿勢のままそう言う。


これはもう重症である。

早く手当てしないと大変な事になりそうだ……俺だってそろそろ限界だからやらないけれども。


それにしてもアイツら、玩具も何もないと言うのによくずっと遊んでいられるな……今だけは少し羨ましい。

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