百十四話 勝利とケロ太は岩の下……?

簡単なあらすじ『ケロ太君は何をするつもりなんでしょうか?』




ガーゴイルが再びケロ太へと攻撃を繰り出す。


直前、何とケロ太はその場でぐるぐると回転を始めた。その回転はとても早く、瞬く間に砂埃が巻き上がる。


そして……

俺はその動きに見覚えがあった。


それは大分前に『サイロ君&ユニタウルス戦』でプチ男がユニタウルスにやってみせた技、〝ぐるぐる〟と非常に良く似ていたのだ。


アイツ、練習中にアレもケロ太に教えていたのか。

だが……良い!良いぞ!これなら相手は視界を奪われ必ず隙が出来るはずだ!


「良いぞケロ太!」


思わず俺はそんな声を上げる。


それと同時に吹き上がる砂の中でガーゴイルが前脚を振り下ろすのが見えた。


しかし、その『小規模砂嵐』は止まる様子が無い。

つまりその攻撃は外れたのだ。なら、今がチャンスである。


「今だケロ太!相手が攻撃を外したぞ!!」


それを見た俺が叫ぶと既に、砂埃舞う会場の中央で彼の体は極限まで引き伸ばされていた。


準備が早い。どうやらアイツもこうなるのは予想済みであり、しかもこの一撃で勝負を決める気でいるようだ。


それから数秒後……小さな球体はガーゴイルへと向けて、砂塵の中から勢い良く発射された。


それを眺める事しか出来ない俺は祈るばかりであった。勝利の女神が俺達に微笑んでくれる事を……




胴体に弾丸を撃ち込まれた砂塵の塊はまるで蜘蛛の子を散らしたように中空で拡散する。


それに構わずケロ太はガーゴイルに向け、自身最速、それと最強であろう攻撃で迫る。


直後、二匹の魔物は接触した。

相手の体が岩で出来ているためか、会場にはぺちりと乾いた音が響き渡る。


そして、その攻撃はガーゴイルの継ぎ目に直撃していた。やはり俺の指示はケロ太に届いていたようだ。


しかし、奴はそれを喰らっても尚平然としており……


いや、僅かにだが体が浮き上がった!

あの技にはそれだけの威力があったのだ!


……しかも、事はそれだけでは終わらなかった。

ケロ太はそこから更なる追撃を開始したのだ。


何と、彼はガーゴイル、しかもその継ぎ目に触れたまま、そこでまた〝ぐるぐる〟をやり始めたのだ。


そう、アイツはプチ男から教わった技をもう応用したのだ。確かに、普通に当たるだけよりかはそうした方が遥かに威力は増すだろう。


正直、そんな事は考えもつかなかった……あれは同じプチスライムだからこそ出来る閃きとでも言おうか……


それを見た俺は感動というか何と言うか、とにかくそれに近しいものを感じ、同時に自身の『魔物達が持つ個性』への見解……とでも言おうか。それがどれだけ浅いものだったかという事に気付かされた。


それは今後の課題となろう……


だがまあ、それを考えるのは帰ってからだ。

俺は中央の二匹へと視線を戻した。


その瞬間、ガーゴイルの体が真っ二つに裂けた。


「「やった!!」」


俺は拳を握り締めて喜んだ。

コルリスもその場で小さくガッツポーズをしている。


これで試合は間違い無くこちらが優勢となった。

いや、もしかしたらガーゴイルはあのまま戦闘不能となるかもしれない。


……いやいや、勝ち星に手が届きそうだからと言って油断は禁物だ。むしろその思い込み自体が間違いなのかもしれないんだからな。


というワケで俺はガーゴイルから一旦離れるようケロ太に指示を出……




俺は『一旦離れろ!』という指示を出す事が出来ずにいた。


真っ二つに分かれたガーゴイル。

その上半身の方が地面へと落下しつつあったからだ。


そして、下には〝ぐるぐる〟を終えたばかりのケロ太がいる。


そう、そのままだと押し潰されて……


「……ハッ!

ケ、ケロ太もういい!!早く離れろ!!」


俺は突然の事に驚き少しの間ポカンとしてしまっていたが、我に返るとすぐケロ太にそこから離れるよう指示を出した。


そこで漸くケロ太は自身の置かれている状況に気が付いたようだ。


が、そんな彼は魔石類魔物の上半身とその影によって覆い隠されてしまい……


次の瞬間には完全に俺達の視界から消失した。


「あぁ!!ケロ太ー!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る