〜異世界魔物大図鑑〜転生したら魔物使いとかいう職業になってしまった俺…とりあえずこの世界の事は何にも知らないので魔物を育てながら図鑑的なモノを作る事にしました
百九話 再戦!ギガントトロール! その4
百九話 再戦!ギガントトロール! その4
簡単なあらすじ『ルーちゃん、反撃開始です!』
ルーの咆哮。ギガントトロールの呻き。
そしてその後に始まった、巨人の手が、指が、大地に吸い込まれてゆくような謎の現象。
コルリスはそれを『ワケが分からない』と言った様子で眺めている。
だが、俺にはすぐに分かった。
ルーが反撃を開始したのだと。
巨人の腕はやはりくるくると、自身の体の方へと折り畳まれつつあるようだ……そう確信する頃にはもう、奴の腕は肘の辺りまでその謎の歯車によって絡め取られていた。
いや、巻き込まれていると言った方が良いだろうか。
まあそれはともかく、ギガントトロールはそれに驚き、慌て、その上で苦しんでいるようだった。
「ハハハ……」
その様子を見、俺はついつい口元が緩んでしまった。
奥の手も不発に終わり絶体絶命となった今、まさか彼女が選んだ選択が『あの技を使う』だったとは……
それが間違い無いのだと分かった事で彼女の持つ『戦いの才能』が素晴らしいものであると改めて気付かされ、驚き半分……いや、それ以上に喜びを感じていたからだ。
「良いぞルー!
ボソリ(出来るかは分からないけど)……
いや、出来る!お前なら出来る!
もうそのままやっちまえ!!」
俺は叫んだ。
正直、(こうなったら自棄だ)とか何とか思いつつ。
でも良いのだ。
ルーがそうしようとしているのだからな。
ならば彼女には全力であの技を巨人に使用してもらおう。むしろここまでくると、それがどのような結果となるか楽しみですらある。
「クボタさん。
ルーちゃんは一体何をしようとしているんですか?
クボタさんには分かっているんですよね?
……教えて下さいよ〜、気になるじゃないですか〜」
コルリスは段々と普段の調子に戻ってきたようだ。
先程よりも落ち着く、どころか俺の服の袖を引っ張りまくってそう言っているのが何よりの証拠である。
ならば教えてあげるとしよう。
俺は彼女の指を袖から引き剥がしながらルーが今しようとしているであろう技の事を話した。
「分かった、分かったからとりあえず離して……
ええとね。多分だけどルーは今、『巻き投げ』をギガントトロールにやろうとしているんだ」
話した……が、コルリスは『?』な表情をしている。
まあ、技名だけ伝えてもそれがどのようなものなのかをイメージする事は難しいだろうから仕方ない。
だから言うが、巻き投げとはな……
主にレスリング等で使われる投げ技の一つだ。
相手の腕を自分に巻き付けるような形で取り、その上で懐に潜り込んで回転するように投げる。それがこの技なのだ。
(ちなみに、俺はこの技をFランクに昇格してすぐの練習で彼女に教えている。
が、まさかこんなにも早くそれを使う時が来るとは……教えておいて本当に良かった)
というのをコルリスにも説明すると、彼女は何となくイメージ出来るような、出来ないような……そんな顔をしながらも納得してくれた様子だった。
「まあ、まあルーちゃんが何をしたいのかは分かりました。でも、本当にそんな事が出来るんでしょうか?ギガントトロールの体重はルーちゃんの倍どころではないんですよ?」
だが、その後で彼女はそう言う。
確かにそれは俺も心配ではある。
だがしかし、現に今体重が彼女の何倍かも分からぬ巨人はその技に苦しんでいるのだ。これならば多分、きっと、いや絶対に大丈夫だろう。
という事を信じて俺はコルリスを適当な返事で安心させ、再びルーの方へと視線を戻した。
すると、その巻き付けはもう限界まできていた。
勿論、ギガントトロールの腕が折れてしまうであろう限界までだ。
肘の辺りにはルーの頭が見える。
後はそのまま投げるだけ……彼女にはそれが出来るだろうか?
そう心配する俺の目の前で、段々と大山が傾き始める。どうやら杞憂だったようだ……それにしても、物凄いパワーである。
「わぁー!!バフィー!!」
それを見たロフターが慌てるがもう遅い。
ギガントトロールはルーを支点としてごろりと転がり、闘技場には久方振りの大きな揺れと共に砂塵が吹き上がった。
俺はたまらず目を瞑る。
そして、それが収まろうかと言う頃に目を開けると、中央には気を失っているギガントトロールと、その上に立つルーの姿があった。
恐らく、彼女はあの砂嵐の中で奴をシバき倒したのだろう……というか、彼女は必殺技(?)なんて覚えなくても普通にギガントトロールに勝利する事が出来る程の実力を持っていたようだ。
だが、まあ。
とりあえず勝てて良かった。
俺は安堵する……と同時に、彼女がその小さな身の内に秘めていたパワーを過小評価していた事を申し訳なく思った。
あとちょっぴり、恐ろしいとも思った。
「あああ……僕の夢が……ルーさんが……わぁああああん!!」
ギャン泣きするロフターを尻目に、会場が歓声に包まれる。よくよく見ればトーバスさんもこちらに向けて拍手をしてくれていた。
そして、戦いが終わり精神的に余裕が出来た俺が観客席を見渡していると、そこの大分奥の方でこちらに微笑みかけるナブスターさんを発見した。
やはりと言うべきか、彼は約束通りこの戦いを観戦してくれていたようだ。俺はそんな彼に対して軽く会釈をする。見えているかどうかは分からなかったが、それでも。
しかし……ルーはその全てを無視して俺達の方へと向かって来、到着した途端に抱き付いてきた。
先程の怖い顔とは打って変わって、まるで寂しがりの子犬のようである。俺とコルリスはそんな愛犬、いや愛トロールを優しく抱きしめてやった。
その直後、コルリスが驚いたような顔をしてこう言った。
「あら……フフフ。
ルーちゃんは戦ってる最中に何かびっくりするような事があって、それで不安になってもっと早くこうしたかったみたいですよ。
もしかして、急に会場が静かになった時かな?
おーよしよし、もう大丈夫だよ〜ルーちゃんは沢山頑張ったんだからね〜」
話しながらも子犬化した彼女が珍しいし可愛いのか、コルリスはルーの髪に顔を埋めている。
流石モンパシスト、多分合ってると思う。
ルーが敵に背中を見せる事なんて今まで無かったからな。あの時彼女は俺達の温もりを求めて必死だったのだろう。
……で、それをギガントトロールに邪魔されブチギレし、あんな表情になっていたと……なるほど、大体のワケは分かった。
……彼女をあまり怒らせない方が良いと言う事も。
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