百五話 再戦……前のチームクボタ
簡単なあらすじ『クボタさん達は道中トーバスさんに出会いました』
闘技場に辿り着き、受付を済ませた。
そうして時は過ぎ、気が付けばもう試合開始時刻の30分前となっていた。
俺達は控え室にて最後の調整をしている最中だった。そして、ルーが現在行っているその『最後の調整』は、エリマが相手をしているぞ。
何故ならば、俺の魔物達の中で一番重いのはエリマ……そう、『チームクボタ』内で対ギガントトロールを想定した練習相手に最も適しているのがコイツだったからなのである。
ちなみに、そんなエリマには主に尾で少し離れた位置からの攻撃をしてもらっている。
これはギガントトロール最大(多分)の強みである、リーチの長さをルーに思い出してもらうためだ。
そしてルーはというと、行動の割合としては『防御6』、『攻撃4』くらいだろうか、という具合だった。
スピードは勿論、全体的な動きも非常に良い感じだ。
その中でも特に素晴らしいと言えるのは、以前戦った時よりも攻撃回数が増えている事であろう。
それすなわち、ルーが戦いの最中に敵の動きをよく見れるようになったという事でもある。
攻撃が多くなったという事は単純に、相手の隙を見て行動出来る割合が増えたのと同じなんだからな。
(ただし、あくまでもこれは『仮想ギガントトロール』なので、いくらそこでの戦いが良かろうとそれを過信し過ぎてはいけないのだがな)
そう……ギガントトロールもなのであろうが、やはりルーもまた成長しているのだ。
……これならば。
(これならば彼女はきっと勝利を運んで来てくれるだろう……きっと……)
そう確信……する事にした俺は今一度二匹の練習する様子をじっくりと眺めながら、試合までの時間を過ご
〝うわぁあああ!〟
そうと思っていたが突然、俺の方に悲鳴を上げながらエリマが飛んで来た。
「ぎゃあああ!」
咄嗟の事で避ける事が出来ず、俺は仮想ギガントトロールの下敷きとなった……これが本物でなくて本当に良かった。
顔を上げると、そこには背を丸めてルーが立っていた。恐らく、片翼のドラゴンが俺に激突したのはそうやって彼女がぶん投げたからなのであろう。
その数秒後、ルーが顔を上げた。
ルーは俺と目が合うと、頬を緩めてニコリと笑った。
それには……どういう意味が含まれているのだろう?今回だけは彼女の考えが全く分からないし、そんな事してないで早く助けて欲しい。
だが……これならきっと。
彼女はきっと勝利を運んで来てくれるだろう。
俺はそう確信した。
今度こそ、そう強く信じる事が出来た。
ちなみに、下敷きとなった俺は結局誰にも助けてはもらえず、最終的にエリマが自分自身で起き上がった事によって漸く解放された。
練習を終えた俺とルー、そしてコルリスは観客の前に姿を晒し、そこで間も無く始まる試合の開始を待つ事とした。
〝あの時〟よりも見物人、熱気、歓声……
その全てが増しているのはすぐに分かった。まだ試合前だと言うのに、〝あの時〟よりもずっとだ。
だが、今の俺はそれに気圧される事など無い。あり得ない。絶対に勝つと決めたのだからな。
しかし……そこにロフター達の姿は無い。
揺れも感じない。あいつらはまだ何かしているのだろうか?
いや、そんな事はなかったようだ。
俺は大地の揺れと同時に、奴等がこの場所へと向かっている事を知った。
それからすぐ、ロフターとギガントトロールが会場に姿を現した。その後ろにはトーバスさんが付き従うのが見える。
「クボタさん……ズルいですよ!!
この試合にルーさんを出場させるだなんてズルいです!!彼女が怪我でもしたらどうするんですか!?」
対面した途端にロフターがそう叫んだ。
別にズルくはないと思う。なので俺はそれを無視した。
それと、ギガントトロールも何だか苦々しい顔をしているように見える。まさか……まだコイツも諦め切れていないのだろうか?
とはいえ、もしそうだとしても渡す気は絶対に無い。
なので俺はこちらもまた無視して今から始まる戦いに集中する事とした。
俺はルーの方に目をやる。
運動したせいで全身が少し黄色っぽくなっている彼女は……特に問題無さそうだ。
それどころか彼女は今その場でぴょこぴょこと跳ねている。むしろこれから始まる戦いを楽しみにでも思っているのだろうか。
それにしても……確か前もそうだったが、彼女はこんな大きな魔物を相手にしても臆する事はやはり無い様子である。
だが大変宜しい、それでこそルーだ。
その姿に安心した俺とコルリスはあの時と同じように彼女の頭を撫で、会場の中央へと送り出した。
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