三話 登録をしよう その2

無事に魔物全員の身体測定を終えた俺達は街で昼食を取り、其の足で再び闘技場へと向かっていた。


なんでも午後からは能力測定なるものが行われるらしい。それも魔物のだ。


それを聞いた俺は魔物使いは剣士、魔術士と比べて登録が面倒なんだなぁ……と、少々彼等を羨ましく思っていたが、そちらもそちらで似たような測定があるらしい。その証拠にちらほらと会場に向かっている人々の中には武具を所持している者達がいた。


あ、そうそう。ちなみにプチ男の体重は5.5キロで、ケロ太の体重は7.2キロだった。僅かながらとはいえコイツらも成長しているようだ。身長は……測定具を押し当てると押し当てた分だけ凹むから測定不能となった。


闘技場に戻ってきた俺達は他の魔物使い達と共に一ヶ所に集められ、能力測定の説明を受けた。要約すると今から魔物の力、魔力、機動力の三つを数値化するためにテストを行うのだという。


それを聞いた俺達は三班に別れる事にした。何故ならば各項目の測定の順番は『並んで待つ』という日本人としては某娯楽施設から飲食店にまで幅広く採用(好き好んでこれを採用してるのかどうかは知らん)されているごくシンプルな方法で待つしかなく、絶対にこの方が効率が良いからだ。


そして今、俺とプチ男は機動力テストの列に並んでいる。


もうそろそろ俺達の番だ。コルリスとジェリアも俺と似たようなタイミングで何処かの列に並んでいたはず。これならば早めに帰れるかもしれない。やはりジェリアは居てくれて正解だった。


「次の方、こちらへどうぞ〜」


「おっ、俺達だな。」


俺はプチ男を鷲掴みにして、スタッフ的な女性の後に続いた。






機動力テスト。その内容を知り、俺は拍子抜けしてしまった。


いや、別にがっかりする程ショボかったとかじゃないんだが……だってコレ、小中学校とかであったスポーツテストとほぼ同じなんだもん。


一応その内容をお伝えすると、反復横跳び的なもの。シャトルラン的なもの。長座体前屈的な……などなどだ。うん。これはもうただのスポーツテストだ。


そしてもう一つ、俺の気が抜ける要因となった物事がある。それは、やけに皆楽しそうだった事だ。


どうやら他の戦闘職と魔物の能力測定は攻撃的な魔物でない限りは合同で行われるらしいのだが、その時彼等は隣で左右に飛び跳ねるプチ男に微笑みながら測定を行い、終えた後にはその弾力ある肉体をぷにぷにとつついていた。中には『冷たくて気持ち良い〜』とかいいながら彼に頬ずりしている女性剣士までおり、俺は少し、ほんの少しコイツを妬ましく思った。


しかしプチ男がいたからそういった空気になったかといわれればそうでもなく、測定を終えた人々は今も楽しげに他者との会話に花を咲かせている。


見た所その多くが知り合いでもなさそうだったので、どうしてそこまでハッピーな空気を醸し出せるのか疑問に思っていた俺は魔力測定を終えたケロ太とジェリアを捕まえてそれとなく聞いてみた。


するとこう言う事らしい。


Gランクの雑過ぎるともいえる登録とは違い、Fランク以降の登録は測定も行われるので皆が会場に集まる……


要は似たような実力かつ同業者とも呼べる人間が同じ目的を持って一堂に会するのだ。これ程都合良くアライアンスを組む人物を探したり、情報収集したりできる社交場は他に無いであろう?と、まあそーゆうワケである。


そうなれば俺もそれに習って新たな仲間を……と一度は考えたが、俺が勧誘に成功してしまうと同時にジェリアに振り回される不幸な人物がまた一人増えてしまう事に気付き、泣く泣く断念した。


斯くして勧誘活動を諦めた俺はプチ男を連れ、今度は魔力の測定に向かった。


こちらは機動力テストよりも遥かに進みが早い。あちらよりも測定の種目が少ないのだと思われる。


〇〇ランドならば小一時間待たされそうな行列はすぐに終わりが見え、俺達の番は間近に迫った。


すると、スタッフのような役割をしているらしき人物の目の前で大剣を背にした女性が両手を前に出したまま静止しているのが見えた。


なるほど、恐らくだがスタッフの前で魔法やら何やらを披露して魔力測定は終わりなのだろう。そして女性の様相から察するに、魔術士だけでなく剣士にも魔力の測定があるようだ。


ふむ。彼女のお陰でやり方は分かった。それにしても……


「…………」


俺は膝に置いたプチ男に目をやり、今更ながらも考えていた。


コイツって、魔力あんのかなぁ?と。






結果、プチ男は「ぴちり」と傾聴しなければ聞き取れない程の音と共に線香花火のような極小の球体を前方に一度だけ放ち、魔力測定を終えた。


スタッフは「あれっ?……うっ」とかいった後にすぐさま俺達に背を向け、何処かへ行ってしまった。あれは間違いなく笑いを堪えていた。


後から聞いた話だが、いくらFランクといえど魔力を持つ魔物ならばもう少しまともに魔法を扱えるらしい。


これならばいっその事魔力を持っていなかった方が良かったかも知れない……と俺は思った。

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