第23話 宮廷魔法師 2
テオの部屋で、カナラが淹れてくれた紅茶を飲みながら再会を喜ぶ二人。
温かい紅茶を飲みながら、テオは正面のマーヤを見つめる。
会うのは数年ぶりか……見た目はほとんど変わっていないが、見たことのない深紅の革鎧を身に着けている。
遠目から見ても丁寧な作りで、発色も美しい。どこぞの名品であろうか?
「久しぶりですねマーヤ。その鎧はどこで手に入れたんです?随分と美しい鎧ですが」
テオの問いに、マーヤは嬉しそうに表情を崩す。
「良いだろうこの鎧!実はさ……」
そしてマーヤが語ってくれたのは、その深紅の革鎧を手に入れた経緯。
ドワーフの集落で、二つ名持ちの地竜と戦った話だった。
「いやはや驚いた。二つ名持ちの地竜ですか……相も変わらず元気そうで何よりです」
魔王討伐の後も、マーヤは波乱万丈な人生を歩んでいるらしい。
「アタシは元気さ。それよりアンタは少し痩せたんじゃないか?飯はちゃんと食ってるのかい?」
「研究に没頭すると寝る事すら忘れてしまいますから……ほんの少しだけ、痩せてしまったかもしれません」
もともとテオは小食で、研究に没頭して食事をしないなんてよくあることだった。
魔王討伐という大義があったころは、道半ばで倒れてはいけないと、まずい食事を無理やりにでも胃袋に詰めていたことを思い出す。
魔王討伐が終わり、無理やり食事を取るという事もなくなった。確かに多少体重は落ちてしまったかもしれない。
「やっぱりか。そいつはいけねぇぜテオ。宮廷魔術師様ともあろうお方が自分の体調管理もまともにできないんじゃあダメだ。何か元気になるような飯が必要だね、間違いない」
少し芝居がかったようなマーヤの言葉に、テオは何かを察してため息をつく。
「下手な芝居はやめてくださいマーヤ。アナタみたいな人が何の用事もなくここに来るわけが無いでしょう?」
「ひどい言いぐさだねぇ。アンタに会いに来たのさ、もちろん」
「本当にそれだけですか?」
マーヤの口角がニヤリと吊り上がる。
「本当はそれだけだったんだけど……元気がない宮廷魔術師様には栄養のある食事が必要だろうと、今は考えているのさ!」
グッと身を乗り出して、マーヤはキラキラとした瞳でテオをまっすぐ見つめる。
「この近くで取れるんだろ? ”ブルータルハニー” ってやつがさ!一緒に取りに行こうぜ!」
テオは諦めたような顔でため息をつき、残りの紅茶を飲み干すのだった。
◇
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