回想 (詩音視点)
私は小学四年生の頃にいじめにあっていました。相手は同じクラスの中でも気が強い4人組。彼女達は一度も話したり、話しかけられた事も無かったので単に気に入らなかったのでしょう。四年生の時の考えなんてそんな理由ばかりです。
その頃の私は周りとは話さず、何時も1人で静かに本を読んでいる冷めている女の子。周りにも冷たく対応していた為、嫌われていました。
そんな日々が変わったのは、六年生の時でした。
朝、いつものように学校の下駄箱を開けると1枚の手紙が入っていました。その手紙を取り出そうとして……手に痛みが。よく目を凝らして見ると、画鋲が沢山転がっていました。そして、近くからこちらを見て笑う人達………うんざりしながらもシューズを取り出そうとした直後、誰かに肩を叩かられました。
「おはよう、詩音ちゃん!」
「ひゃ!?……」
この時にいつもは出さない様な声で叫んでしまった事、今でも覚えています。それ程、この出会いは衝撃的でした。ドキドキする心臓を抑え、私はゆっくりと後ろを向きます。
「……あれ、詩音ちゃん?……聞こえなかったのかなぁ……」
「…………」
そこに居たのは、制服を着こなして如何にも好青年な少年の姿。髪の毛は前髪にかからない長さで調度良い印象を受けるし、女性の肌と大差ないほどの艶がある。彼の声を聞きながらも考えていると、気づいた彼が再び話しかけてきます。
「それじゃあ、も1回。………おはよう!詩音ちゃん。」
「………だれ、貴方。」
友達に話しかけるように挨拶してくる彼。だけど私は彼の事を知らない。その事を口にしながら、教室へ歩き出します。それでも、彼はズカズカと入り込んでくる。
「僕?僕は━━━。知ってくれてる思ってたよ!反省だね……」
「…………」
「僕の名前なんて別にいいんだよ!詩音ちゃんは日曜日にやってる芸術戦隊アーテンジャー見た!?あの演出かっこいいよねー!」
「……見てない。」
「えっ、見てないの!?勿体ないなー…特に変身シーンとか「興味無い!」…。」
いつもよりも声が大きくなった事に反省しながら再び歩きだします。流石に、ここまできちんと拒絶すれば居なくなってくれるでしょう………「じゃあその後のパリキュアは?」……いなくなってくれません。
「今作のパリキュアはとても可愛いよねー!」
「………」
「それでねそれでね…」
・・・・・
「それじゃあ僕、コッチのクラスだから!また昼放課ねー!」
結局、彼は私が自分のクラスに着くまでずっと喋っていました。私から話しかけなかったので、傍から見れば彼はただのストーカーの様に見えるだろう。
友達は居ないので、誰も心配しないですが。
自分の席に座り、持ってきた小説を読みますが……いつもよりも読むスピードが遅く、疲れてしまいます。読む気になれず、そのまま本を閉じ、机にしまいます。
いつも周りに嫌われて同級生のイジメを無視する毎日だったのに突如彼が現れた事により変わってしまった。その変化は私を疲れさせるのは容易だった。
「どうせ、今日だけ。」
それでも、私の顔は相変わらず無表情のまま。だけどいつもよりも悲しんでいる様な………まるで、久々に話せて嬉しかったよう。それが終わってしまう事に悲しんでいる……と。
「………あほらしい。」
教科書の資料集を取り出し、忘れるように取り組む。そして私は気づかなかった。彼が言った言葉を。
・・・・・・
「詩音ちゃーん!…一緒に食べよー!」
「………」
そして、彼が言った言葉を思い出すのは直ぐに訪れるのだった。
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