話し合い、そして事件

「いやさ〜自分が結局負けてしまったことなんだけどさ、司会なんて事はやったことないんだよね……だから、勝利した詩音さんにやって貰おうと思ったけどジブンでヤリマス」

「それがいいと思います。」


 美少女からにじみ出るオーラは、人の意見を変えてしまう。弥登はその事を頭にインプットしたのだった。


「お兄ちゃんただいま〜!……ってどうしたの詩音さん!?」


「なんでもないぞ、七海」

「なんでもないですよ、七海さん」

「そう……って何でお兄ちゃんも否定してるの?」


 流石に自分が悪いから理由は言えないし、ここで理由を言って詩音さんを敵に回したくない。


「詩音さんとは明日の忘年会について予定を取り合っただけだよ。七海も一応社員だから、七海が好きな物もあるぞ。」

「やった!お兄ちゃんありがとう!」


 お礼にと言わんばかりに抱きついてくる七海をそのままにして、書類を纏める。ここの数字間違えてるな……煽り言葉で返してやろ。あと少しで忘年会なんだから、浮かれるな。コレでよしっと。

「…………」


「それで、どこ荒らしてきたんだ?」

「ラウンドワールドだよ。あそこは格ゲーの他に比べて景品に取りやすいからね、そこで沢山ぬいぐるみを取ってきたんだ〜、詩音ちゃんにもあげる!」


 弥登から離れた七海が、自分のリュックを漁り、クマのぬいぐるみと猫のぬいぐるみを詩音さんに渡す。


「良いのですか?」

「遠慮しないで!触って見てよ、モチモチだよ…」


 最早押し付けるように渡そうとした七海だったが、渡す直前でその手が止まる。


「……そういえば、詩音ちゃんって表情が豊かになってるよねー。」

「え?そ、そんなに変わってますか?」

「うん。ふとした時に『にこっ』って笑ったり。」

「そ、そんなに……?(ぷにぷに)」

「……ふっ」


 七海が言った事が信じられないのか、自分の顔を触っている詩音さんは、見てて面白かった。


 だからこそ、こっちを見て、ニヤニヤしている七海に気づかなかった。気づけなかった。


「他にもそう思ってる人はいると思うよ?ねぇ、お兄ちゃん。」

「ちょ、七海!?」

「弥登君もですか!?……弥登君。」


 振り向かれ、笑ってる所を見られ、彼女からオーラが出てくるのを確認した弥登は、妹、七海に心の中で憎んでは、詩音さんの怒りを収める事に必至になるのだった。




 ―――――――――――――――――――――――


 一日が過ぎ、迎えた忘年会の日。

 何事も無く皆が楽しんでいたときにソレは起きた。

 誰かがわざとしたわけでもなく、偶然に起きてしまった事であり、誰にも止められなかった事だったが、起きてしまった事である。そう、




「み〜の〜り〜く〜ん♪」

 彼女、詩音がお酒を飲んでしまった事である。

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