スーパーのセット商品は偉大

「………眠たい。」

 午後8時、学校帰りのスーパーで忘年会に必要な食材をたくさん買って、会社で下準備した弥登は、睡魔に負けないように目を擦りながら書類にサインをする。


 何時もは誰かが社長室に居るのだが。生憎、妹の七海は駅の近くにあるゲーセンで格ゲーをしているらしい。メールで送られてきた写真には100連勝達成の画面と、相手をボコボコにしているプレイ映像だった。

 相手を怒らせるような事はしてほしくないし、ボディーガードの彼に迷惑を掛けないでほしいのだが、今回も話はきいてくれないと考えて、『程々にしとけよ』とメールを返しておいた。


 秘書である南先生は今日会社に休みを取っている。


 申し出の際になぜ取るのかを聞いた所


『明日の忘年会の為にです。食べたら食べるほど、体重が増えてしまうので……』


 とのことらしい。今更運動した所で変わらないのでは……?とも思ったが彼女は何時も運動しないので今回だけでも運動すればいいと思い、他には何も言わず許可した。南先生も、運動しても間に合わない事には気づいているだろうし。多分。


「……この書類、間違えてるな。」


 間違えている場所に線を引き、再選考の箱へ。次の書類に目を通そうとした直後、ドアにノックの音がなる。


「入っていいよ〜」

「失礼します。………とても眠たそうですね。」

「あれ、わかりやすかった?」


 許可を出せば詩音さんが入ってきて書類を纏めるが、弥登の顔を見てとても眠たそうだと評する。その問いに問いを返せば、詩音さんは室内にある冷蔵庫から水を取り出し、渡してくれた。水がうまい。


「ありがとう、詩音さん。」

「いえ……その、どうしてそんなに疲れているんですか?」

「明日の下準備をね〜。何分、具材の量が量だもんでさ、とっても疲れた。こんな時にスーパーに売っている具材セットが楽だと思い知ったね……」

「お、お疲れさまです……」


 今回は沢山の具材な為に使えなかったが、スーパーで売っている具材のセット商品、一袋に1人前分の具材が入っでいる為お得であり、お安い物となっている。端から社員達が具材セットで許してくれるかと言ったら否なのだか。


「ねぇ詩音。今は楽しい?」

「………?楽しい、とは。」

「……学校で人気の詩音だけど、楽しくなさそうだから。」


 学校で人気な詩音さん、人気なゆえに色々なやっかみが飛んでくるだろう。だから、詩音さんはクラスの人達と一定の距離を置いている。その光景が自分にはつまんなそうに見えたのだ。


「……ここでのお仕事は楽しいです。」

「……そっか〜」


 彼女がそう言うんだ。だから大丈夫だろう。


「あと言い忘れていたけど、明日の司会やってもらうから。」

「……え?」



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