男が女子の名前を呼び捨てするって難しくない?

「ごめん今なんて言った?」

「……え?」


 しばしの静寂から戻ってきた弥登が戻ってきた時に思ったことは勘違いだった。


「いやその、俺の聞き間違いかな?って思ってさ。ごめんけどもう一回お願いしてもいい?」


 学校ではまことしやかに流れている完璧少女。仕事場ではやる事をきちんとやってくれて、『社内で誰が一番癒やしかランキング一位(春川さんが入ってからランキングが作られた。作ったのは透社員)』をぶっちぎりで獲得している春川さんからの提案。

 だからこそあり得ない話だと、自分の勘違いだと思ってる弥登は


「だっ、だから!、詩音と呼んで欲しいです。」

「………………」


 顔を真っ赤に染めながら再度お願いを言う水月に本気だと悟り、考えた。


 彼女が顔を真っ赤に染めながらも勇気を出して言ったであろうお願いを叶えて上げたいとは思う。しかしこのお願いを叶えてしまうと一つ問題がある。そう学校である!

 考えてほしい、もし学校で春川さんを詩音さんと呼んでる事が知れ渡ってしまえば男子共の殺さんと言わんばかりの視線が弥登を襲うだろう。

 その中でも一番の問題が達也の彼女さんだ。

 彼女は春川さんとよく話していて春川さんを下の名前で呼んでいる事を知られてしまえば………恐ろしい。

 しかし勝負事で負けた者として言わないといけないと考え、いやいやおかしいでしょとあーでもなくこーでもないと2秒頭の中で考えて――――――――


「……分かったよ」

「………!」


 結果春川さんを下の名前で呼ぶことにした。いつか下の名前で呼んでたのがバレたらその時に考えようと考えを先に伸ばしただけだが。


「だけど、学校では呼ばない。下の名前で呼んでしまえば居づらくなるからね。」

「それで良いです。………宜しくお願いいたしますね、弥登君。どうせだったら敬語もなしにしましょうか?」


「敬語もなしはちょっと無理かな……宜しく、頼む。」


 直後、むくれる春川さん。


「……?…春川さんどうかした?」

「……名前」

「……あ〜〜、」


 どうやら春川さんは今ここで名前を呼んでほしいらしい……いや。


「また明日ね、春川さん。」

「……あ、ハイさようなら……しゃなくて!」


 廊下を駆け足で歩き、玄関ドアを開けて追いかけて来る春川さんに一言。


「じゃあね、さん。」


 固まってる詩音さんを尻目に部屋に入り一息。ふぅ、

 

「き、緊張した〜!」


めっちゃ緊張した〜!自分今顔赤くないかな!?変な声になってなかったかな?高校生になって同級生の女子とは殆ど話してなかったからめちゃくちゃ緊張した〜。


「ハア〜疲れた。七海、ご飯なんだ、け……ど」

「………お兄ちゃん」


そういや七海のこと忘れてた。


 その後、妹の七海の機嫌を直してもらうため、少し高級にして塩コショウを使った豚しゃぶカレーになったのだった。



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