音野 七海と人生逆転ゲーム

 ーカルミナー社長室ー




「ただいま!お兄ちゃん!」


「良く今の状態で言えたな?七海。」


「だって、私お兄ちゃんに会いたかったんだよ。」


 普通だったら微笑ましい光景なのだろうがいかんせん、タックルを食らった身としてはどうかと思う。まあ、嬉しそうなのを見ると、怒るに怒れないのだが………


「お兄ちゃん、お兄ちゃん〜!」

「暑いから離れて?」


「……………………」


 少し春川さんの視線が怖いから。自意識過剰だろうけど。









「………改めて紹介するよ、春川さん。僕の妹で、声優をやっている音野おとの七海ななみだ。ほら七海、挨拶。あと、膝から降りろ。」


「音野 七海だよ、春川さん。よろしくね!」


 あれから、七海には退いてもらい、改めて自己紹介の時間へ、七海は椅子に座った俺の膝に座ったままだが、いちいち叱ってたら時間が無くなるのでスルーすることにした。


「春川 詩音です…………その、本当に声優さんなのですか?」


「まぁ、普通はそうなるよね。最初の印象強すぎたよね。」


「兄の前では、この愛が止まらなかっ痛い!」


 初対面でのインパクトが強すぎたか………じゃあ。頭を擦っている七海に声をかける。


「七海」


。」


「…………………えっ?」


「帰ってくるのが早くないか?仕事の場所はここから2日かかるだろ。後、お付きの人は。」


「それなら家にそのまま帰らしたぞ?どのみち、我がこちらに赴く事はつたえておったでの。」



 春川さんが七海を見て呆然としている。いきなり口調が2回も変わるとなれば無理もない。それ程までに七海の演技は板に入っていた。


「そっか…………とまあ、このような感じで妹の七海は声優の中でズバ向けてるのが分かると思う。」


「お兄ちゃん……!もっと褒めて〜!」


 七海が向きを変えて抱きついてくる。褒めるのは構わないけど、抱きつくのは辞めてほしい。


「………仲がいいんですね。」


「お兄ちゃんへの愛は無限なのだから!痛い!」


「ハイハイソウデスネー。」


自分の妹に二度目のげんこつを落としながら、ため息をつくのだった。








「時間を取らせてゴメンね。春川さんは今日はそのまま帰って貰って大丈夫だよ。」


「分かりまし」


「ちょっと待ったーー!痛い!?」


「いきなり叫ぶな。」

「だからって叩かないでよ!」


 声優という声を出す仕事をしているのだから近くで叫ばれると耳が痛い。


「叫ぶのが悪い。春川さんもびっくりしてるし………それで?」


「お兄ちゃんにとっては、かわいい妹の紹介が終わったこれで終わり。と思っていると思います、が!これからの仕事中にギクシャクした状態だと困るとおもいます!」


「………まぁ確かに。」


 実際に春川さんは裏方と言ってもその場に居合わせる事があるため、ギクシャクした雰囲気は困るだろう。春川さんもその場面が想像できたのか、控えめに頷いている。


「そこで!私、音野 七海は今ここに人生逆転ゲームの提案をします!!伊藤さん!」


「物は私が持っていますよー!」


「いや居たんかい。」


入って来れば良かったのに。


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