第2話 奴隷の少女


「なぁ、今の聞いたかよ!勇者だってよ!俺たち、もしかして異世界に来ちゃったんじゃね??」


 こんな緊迫状態でよくそんなこと言えたな。まぁ、異世界転生は誰もが一度は夢見るものだしな。それにしても、みんな妙に落ち着いているような...


「えぇ、あなた方は魔王を倒しこの世界を救うために選べた勇者様なのです!!」


「では、みなさんひとさし指を、十字に動かしてみてください」


 十字に動かす.....。これは、俺のステータスが見れるのか。


「そちらのステータスは、他の者には見えません。しかし、こちらの水晶を使うとステータス公表が可能となります。まずは役職、スキルの共有をしていただきたいとご所望願います。」


「待ってくれ!僕たちは元の世界に帰れるのか?」


「召喚した以上、元の世界に帰るには魔王を倒す以外にはありません」


「わかった。だったら僕からお願いします」


 黒銀が先に動いたことによってみんなに安心の顔が見られるな。こういう時にあいつは役に立つ。


「おぉ、これは!!役職が勇者!攻撃力は最初から1000以上ありますわ!!」


 役職が勇者って、おれたちは勇者じゃないってか!!

そういえば俺の攻撃力はっと、

【攻撃力】12009      【防御力】11002    【魔力】20000


 っ?!おいおい一万越えって....あの白いやつどんだけ上げたんだよ!!

 っていうかこれバレたらまずくね??この国を裏から潰すためにはできるだけ目立つのは避けたいし。というか俺の役職は怪盗だよな。だったらスキルもそういう系があるんじゃないのか。


ユニークスキル【譲渡・奪取】  


スキル【盗聴・盗み足・瞬歩・潜伏・状態異常無効化...................】


 ちょっと待って、50個以上あるぞ!あいつどんだけ殺ったんだよ!!ってかまじで盗み向けのスキルだな。よしこれが使えそうだ。スキル【潜伏】!!これでホントに使えてるのかな。


 ちょっと手を挙げてみたり......誰もこっちに目を向けてないな。このスキルは使える。とりあえず、まずはここから離れよう。


 まずは、情報収集だ。こういう城には書庫みたいなのがあるはず。本があるところは決まって二階だよな、うちの学校もそうだし。階段を探すか。


 階段あったな...でも、この階段地下へも続いてる。

 正直進まないがこういうのは地下に怪しいのがあるに決まってる。


....行くか。


「おらぁっ、ギャーギャーうるせぇ!!」


 ムチみたいなもので檻を叩いてる。ここは、奴隷部屋か?すごい檻の数だ、この情報は使えるだろうか。

 いや、ないな。この世界のことはまだそんな知らないし奴隷が当たり前なのかも知れない。


「うるせぇって言ってんだよ!!」


 お前の声も十分うるさいが、さすがに勇者としてこれは止めに行くしかないだろう。

【潜伏】解除。


「何をしているんだ」


「ゆ、勇者様?!どうしてここに?!」


「それは、ムチか?もしかして、この子たちをそれで叩いていたんじゃないのか?」


「めめめめめっそうもございません」


 よし、ムチはしまってくれたな。勢いでここまで来ちゃったけどこの後のこと考えてなかった。


「もしかして、勇者様も奴隷をお選びになられにいらしたのですか?」


「あ、あぁ」


 これで、うまく誤魔化せそうだけど。奴隷を選ぶ流れになってしまった....


「この子は....」


「あぁ、その子はただの呪われてるできそこないのハーフエルフですぜ。こいつはもうすぐ処分されます」


 呪い....確かに何かに体をむしばまれてるのを感じる。これが呪い...


「この子にする」


「えぇ?!いいんですか?」


「それで、たのむ」


 この子の呪いはおそらく俺にしか治せない。治して親の元に返してやらねぇと。


「俺は大河流羽(おおがるう)。よろしくね」


「ょ....よろしく....おねがいします......」


 声が、かすれてるな。やっぱり呪いが原因なのか。

 すごい汚れてる。まずは風呂にいれてやらねぇと。さて、これからどうしよう。


「勇者様?!なぜここにいらっしゃるのですか?!」


 あ、【潜伏】解除したままだった。


「えっと、このあたりを散歩していました」


「その子は....」


「あー、この子は迷子です。親のところへ返すために一緒に連れてくつもりです。」


「わかりました。ではお部屋にご案内いたしますね」


 苦し紛れの言い訳だったけどなんとかなったな。


「こちらになります。お食事の準備ができましたらまたお呼びいたします」


「ありがとうございます」


 すごいな。これが1人用の部屋の大きさかよ。

豪華すぎるだろ。それより、まずは風呂だな。


「まずは風呂に入ろうか。自分で入れるか?」


「はい.....」


 よし、風呂場の場所だけ教えて俺は少し準備をしなきゃな。これからは、この国で勇者として過ごしながら探っていかくてはいけないからな。

 この国がいつ俺たちを殺しに来るかわからない。そのためには力を身につけてスキルを扱えるようにしなきゃな。

 あ、服渡し忘れた。服を渡しに行かなきゃな。あの子はエルフみたいだし、エルフの村みたいなのもでもあるのかな。


ガラッ


「え、」


「あ....あ....」


「え、いや、すまん。わざとじゃないから!」


バタンッ


 やらかしたぁ〜さすがにデリカシーがなさすぎたな。




「えっと、さっきは悪かった。着替え持ってきたからドアのところに置いとくな」


「あの....お風呂ありがとうございました」


「こっちこそさっきはごめんな」


 さっきは暗くてよく見えなかったけど、すごいキレイだ。薄紫の髪に青い目。これがエルフ。


「少しいいか」


「今から君の呪いを治そうと思う」


「私の呪い治るんですか?」


「治るぞ。君に俺のスキルを与えるんだ」


「スキル...?」


「そのためにはちょっと、しなきゃいけないことがあるんだけど....」


「お願いします。私の呪いが治るならなんでもします」


「今から俺とキスをしてくれないか」


「キ...ス...?なんですかそれ?」


「キスは俺の唇と君の唇をくっつけるというか、そうすれば君の呪いは治るけど....」


「お願いします」


 いきなりキスしろとかさすがきヤバいよな。この子に渡すスキルは決まってる俺の状態異常無効化だ。呪いは身体に影響を与えてる。だったらこのスキルを持ってれば呪いは進行しないんじゃないか。


「よし、じゃあ行くよ。」


「っん....」


ユニークスキル【譲渡】!スキル【状態異常無効化】を選択。


「これでもう大丈夫なはずだよ」


「ん」


 寝ちゃった。それはそうだろ。ずっと呪いと戦って、しかもあんなところで奴隷として扱われて、ろくに眠れてなかったんだろう。

 俺はこの子を守る義務がある。絶対家族のとこへ送り届けてやる。この国を丸ごと燃やしてな。












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