07:そんなこんなで15歳
俺、前世はニッポン人、名前はロック!(転生者あいさつ)
そんなこんなで、妹弟子が出来て、5年ほど経った。
可憐かわいい天才少女リアちゃんは、ジジイの流派をほぼ免許皆伝。
(ヤッター、妹ちゃん!
15歳で免許皆伝なんてスゴイね!
将来は、世界を救う勇者さんかな?
兄ちゃん、鼻がたかいよ!)
そんな、絶対強者な妹者なのに、兄者な俺と剣の組み手すると、どうにも勝率が振るわない。
対人戦は妹の唯一の欠点で、ポンコツかわいいなのか。
大好きお兄様には、うっかり手加減してしまうのか。
どっちなのか、非常に微妙なラインだが。
まあ、ちょっと過保護な兄弟子としては、妹弟子にはあまり血なまぐさい事をして欲しくない。
だから対人技術とか、正直どうでもいい。
兄ちゃんが、陰からフォローすればいいからね。
なので、その辺りにはあんまりツッコまないことにした。
ジジイもよく言ってるし。
『本来、剣とは殺人のための道具。
だが魔剣士の強化魔法は、人のために魔物と戦う、守護の力』
つまり、ジジイの流派のみならず、魔剣士とは『人を守り魔物を倒す』ことが存在意義。
人類守護の剣、つまり人を
(だったら俺は、魔剣士の妹ちゃんを守るために、対人剣術でも磨くかな?)
近い将来に、女勇者とか聖女とか選ばれるかもしれない妹弟子アゼリアが、その純真さゆえに悪い人間につけ込まれるかもしれない。
俺の愛剣は、
魔物どころか人っ子ひとり斬れない、ナマクラだ。
しかし、人間を殺さずボコボコにするだけなら、この上ない得物。
妹弟子のふた親(どっちもクズ!)を物理的に
(我が愛剣の
なんちゃって。
ちょっと
しかし、人斬り禁止の活人剣かぁ ──
── ぁぁ、
アレだアレ。
『働きたくない、働きたくないでござる!』
『趣味に明け暮れ、タダ飯食うニート生活がしたいでござる!』
(あれ、なんか違うような……?
まあ、いいや……)
▲ ▽ ▲ ▽
そんな訳で、生きるためにはカネが要る。
カネのためには、仕事がいる。
── 当然の
今日は、我が家(山小屋)の周りの魔物の森を、いろいろ探索するらしい。
魔物から取れる素材は、錬金術の材料とか、特殊なポーションの原料とか、色々カネになるらしい。
ジジイが、たまにそういう事を引き受けてた。
「今日は、剣帝様がいっしょじゃないのか……」
冒険者パーティの中年男リーダーが、そんな事をぼやく。
俺は、ため息まじりに言い返す。
「ムチャ言うなって。
ジジイもいい歳なんだ、最近は腰が痛いらしいし」
「ガッハッハッ!
かの達人も、『
冒険者パーティの一人が、そんな風に笑う。
ドワーフみてーなオッサンだ。
性格も見た目もそんな感じ。
俺の隣を歩くリアちゃんが、ハムスターみたいにほおを膨らませる。
「むー、ケガや病気の人を笑ってはいけませんの!
お兄様から怒られますのっ」
「いや、そういう訳では。
すまんすまん、お嬢さん方」
── ん、お嬢さん『方』? 複数系?
俺が問いただそうとすると、ちょうどその瞬間、細マッチョ金髪イケメンが反応した。
なんかエルフみてーな顔してんな、この兄ちゃん。
「魔力の流れがおかしい! 来ます!」
さすが
いい反応する。
俺が感心してみていると、パーティ全員で、山岳ガイドの俺とアゼリアを守るように構える。
同時に、強化魔法の
腕輪の表面に、魔導の文字が光って浮かぶ。
それが一周回転して『カン!』と拍子木のような音がいくつも鳴る。
今回の冒険者パーティは、10人
そのほぼ全員の背中に、身体強化魔法の魔法陣が現れた。
▲ ▽ ▲ ▽
この冒険者パーティは、魔法使いが2人いる以外は、ほぼ魔剣士らしい。
まあ、魔剣士が世に出てここ400~500年は、魔剣士1強な状況がずっと続いている。
剣士と言えば、魔剣士。
前衛と言えば、魔剣士。
兵士と言えば、魔剣士。
騎士と言えば、魔剣士。
英雄と言えば、魔剣士。
戦士系職業というか前衛職のベースが、全部魔剣士になった感じ。
魔剣士が増えすぎたせいで、『職種:魔剣士、武器:剣以外』みたいなヤツも普通にいる。
今日同行している冒険者パーティも、斧持ってるヤツとか、槍持ってるヤツとか、ナイフ二刀流とか、
他には魔法使い専門職にしか活躍の場がない。
(それが『この世界の常識』なら、納得だ。
俺、生まれ故郷や
── 魔剣士の
魔力量も体格も全然で、適性なんてまるで無いのに。
絶対に魔剣士になんて、なれやしないのに。
何やってんだアイツって。
(まあ、魔剣士になる夢は、もはやどうでもいい。
俺は俺の道をいくからな……
ジジイもなんか、それで良いみたいな事言ってるし)
それはさておき。
視線を、冒険者の兄ちゃんたちの、背中の魔法陣に向ける。
「しかし、こればっかりは、どこの流派でも変わらないんだな……」
だが、その本質は
疾風の速さで駆ける。
無重力のように飛び
雷光のような
常人の身体能力を超人の
それが、身体能力強化の魔法術式。
あれよあれよという内に、もう魔物の群を1/3くらい倒してしまった。
魔物1匹を3人がかりの安全策で、着実に討伐していく。
なるほど
ワニみたいな巨体のくせに、巨大樹を素早く
サソリみたいに尻尾を伸ばして、毒付きの
毒をもらったら最後、100m級の巨大樹の枝(地上から数十m)までお持ち帰りされ、意識があるままボリボリ食われてしまう。
「── 火魔法いきます、下がって!」
女性の魔法使いが、目の高さに両手をあげる。
両手の平に、それぞれ魔法術式が作る光の輪 ── <
魔法の発動音『チリン!』が、何度も続けて鳴った。
(── お、
女性魔法使いの左右の手の平に、黄色い蝶々が1匹ずつ、計2匹が現れる。
(何あれ、召喚魔法?)
俺がじっと観察していると、蝶々は結構なスピードで、空中を
いや、なんか今、魔法で移動させた?
蝶々2匹が、特にデカい<
── 瞬間、ドーンッ、と爆発した。
ギギャァァーー! とデカいトカゲが巨大樹から吹っ飛ばされ、ドッタンバッタン。
(何あれ!?
羽根の色が黄色から赤に代わった瞬間、爆発したぞ!
魔導の教本に書いてあった『精霊召喚』なのか!?
召喚精霊の、特攻自爆攻撃なのか!?
── 魔法使いの姉ちゃん、エグいぞ、それっ)
異世界生活15年目にして初めて目にする、魔法使い本職の攻撃魔法に、ドン引きした。
ジジイが
魔法と言うよりも、昔なつかし戦闘機のシューティングゲームの『ボム』みたいな感じだった。
それで倒すというよりも、広範囲にダメージ与えてHP削る的な、広範囲爆撃。
そうドン引きしたが、長年オリジナル魔法開発のため術式をいじり回していたら、いつの間にか魔法マニアみたいになってしまった俺である。
魔法使いの姉ちゃんがさっき使った術式を、見よう見まねでマネとしてみる。
だが、いくつか大事な
「さすがは『
「うちパーティの魔法使いは、帝国
「止めなさいって、そういうの!
何度も言ってるでしょ、わたしのは
「そうそう、帝都の宮廷魔術師とかなると、本物の『
あんまり嘘はいけないと思うの」
「嘘じゃないって、ハッタリだって。 肩書きをきいて依頼主が『おおっ』ってなれば、それだけで依頼料が上がるんだぜ?」
「それに周りからそう呼ばれてるだけなら、嘘にはならんだろ?」
「そんな風だから、冒険者はヤマ師だって言われるのよ!」
そんな冒険者達の雑談ついでの片手間で、<
魔剣士の4~5人の袋だたきで、ズッタズタ。
── なんという事でしょう!
そんな凶暴な人食い魔物も、
(── あ、一匹だけ
兄ちゃん、オッサン、姉ちゃん、誰でもいいから早く気づけ。
おい、デカいの倒したからって、皆で油断してんじゃねえよ。
忘れた頃に、背中からザクってやられるぞ?)
チームワークのいい冒険者パーティなので、口出しするべきか迷う所。
余計な事言ったせいで、気を取られてケガされても困るし。
そんな事を迷っていると、隣からバシュンと何か飛んでいった。
直前に、
(── 多分、うちの妹弟子がシビれ切らしたパターンですね、これ……)
ハァ……と、思わずため息が出た。
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