02:秒でさじ投げられた10の頃
俺、前世はニッポン人、名前はロック!(転生者あいさつ)
今回『道場やぶり』した
俺が転生ホヤホヤだった、幼少期あたりからだ。
──
俺の異世界転生のスタート地点だ。
(ちなみに、前世ニッポンの頃は……
……まあ、なんか、シティボーイだった気がする)
前世ニッポンではビルとアスファルトに囲まれた生活で、こんな緑いっぱいな環境ではなかった。
そして、さらに言うと、前世の死因がよくわからん。
まあ、
あるいは、寝ている間に大地震か火事でアパートごと☆
── ともかく今世は、ファンタジーな異世界。
「となれば、冒険するっきゃない!」
「冒険者とかになって、魔法を使ったりドラゴンとか退治してやんよっ」
「あと、エルフ嫁がぜひ欲しい!!」
まあ、そういう将来を夢想するくらいしか娯楽がない、田舎の村だったんだ。
だから毎日、全力で剣を鍛えた。
(格闘ゲームも、マンガも、
当然のように何もないしな、この異世界……)
だから正直、
それが、前世インドア派だった俺が、体育会系みたいな事をしている主な理由。
いわば『ヒマをもてあました中年が
いわゆる『
(しかし、
もうね、出だしからクソだな、この異世界って……っ)
近所の子どもたちにバカにされ、大人たちにはゲンコツくらう、そんな毎日。
村の子どもの役目である川魚養殖(養殖池のエサやりと、大口ガエルの駆除)なんて、いつもサボってたし。
父親とかに「何の役にも立たない物なんかやめろ」と素振り用の木の枝を取り上げられるのも、しょっちゅうだった。
(そのくらいじゃ
朝から晩まで、ヘトヘトになるまで特訓だ。
だが、そもそも生まれ故郷(もちろん異世界の方)は、魔物に襲われない安全地帯。
バカみたいにデカい、村の守り神がいる。
そんな超巨大なイモリ?サンショウウオ?の縄張りに、共存状態で人間が住んでいる村なのだ。
巨大サンショウウオ?は縄張りを見回りして、魔物から村人を守る。
村人は、守り神さまに感謝のあかしとして、養殖川魚を冬でも
そういう
人食い魔物がウヨウヨいるファンタジー世界というのに、安全地帯すぎて村人みんな平和ボケしているくらいだ。
── 『剣を
── 『村を出て魔物を退治って……おいおい、正気か?』
── 『そういうの、守り神さまに勝てるようになってからなっ』
── 『あの子ったら、ホントおかしいんだからっ』
そんな
(── ちくしょー、負けるかっ
せっかくファンタジー転生なんだ!
カッコイイ超必殺技を身につけてやる! 絶対に!!)
そんな俺のガンバりを認めてくれたのが、ある日村にやってきたジジイ ── 俺の剣術の元・師匠だ。
まあ、『元・師匠』の理由は、もうちょっと待ってくれ。後で話す。
ともあれ、この高身長の総白髪ジイさんは、死んだ
「──
「ああ、魔法と剣を使いこなし、魔物と戦う最前線の戦士じゃよ」
そのステキな響きに
ジジイも死ぬ前に後継者育成と、ガッツのある子どもを探していたらしい。
── なんという、
── アタイ、ガラスの靴はいて舞踏会!
── なんてステキな、一発逆転の勝ち組人生!?
そんな『のぼせ』方をした俺は、
── イヂワル
── 男オイドンのジャマせんで欲しいでごわす、チェストぉーッ!
と、なかば強引に故郷と家族にバイバイ。
故郷から遠く離れた大自然の山小屋で、ジジイと山ごもり生活を始めた。
それが確か、転生人生の6歳の頃。
そして、元プロの指導者の下で、厳しい基礎トレーニングを続ける事、3年と数ヶ月。
ちょうど、雪解け前の頃。
俺の10歳の誕生日。
「お主には、ワシが教えてやれる事はなにもない……」
ジジイから、くそ遠回しな『
▲ ▽ ▲ ▽
「── おい、ちょっと待てよ、師匠ぉ!?」
普通ならお師匠様から『教える事はなにもない』って言われるとか、免許皆伝のお知らせ。
つまり『奥義や極意も伝授しましたよ』って事だ。
しかし、残念。
ボクちん、まだ10しゃい。
まだ全然、魔剣士の『マ』の字も教えてもらってない、見習いのお子ちゃまなんだが。
(これはアレか?
『このガキ、ここまで育ててみたけど、今ひとつ芽がでねえな』って事か!?
『これ以上コイツ鍛えても時間のムダかな?』って諦めかぁ!?)
なに途中で
一度始めた事を投げんなって、最後までガンバレって!
「師匠なら、出来る出来る!
絶対に、やれるやれる!
もっと師匠自身を信じろよ!
すべては師匠の気持ちの問題だって!
師匠、もっと熱くなれよ!?」
だから、最後まで責任もって
(大丈夫だって、師匠のコーチング、抜群に
自分でも、これ以上なく成長とか上達とか実感してるから!
『10歳でこれとか、俺ひょっとして剣術の達人になっちゃうんじゃね?』とか
そんな俺の熱意のこもった説得。
しかし、ジジイは首を振る。
もちろん、ノーの方だ。
「お主には、ワシが教えてやれる事はなにもない……
お主は、お主の思うままに、剣の道を
いや、『
そういう、『大事な事なので2回言いました』みたいなのは
しばらくジジイと押し問答するが、話は平行線。
しかも、ジジイ、なんか修行場を引き払って下山するような準備まで始めやがる。
(これは、やっぱりアレか?
半年前くらいに師匠が『魔剣士の技を見せる』とか言った時の、俺の反応が悪かったせいか?)
心当たりがあるとすれば、それくらい。
今また、こうやって『過去を回想』しつつ考えてみるが……。
やはり、それらしい理由は、他に思い浮かばない。
(でも、仕方ないよな。
だって『魔剣士』なんだぜ?
『魔法』と『剣』の融合とか絶対、超ハデな必殺技に決まってるだろ?)
── 剣から炎が出る、とか
── 光の剣が無数に現れる、とか
── 分身して同時攻撃、とか
── 斬撃が剣から飛ぶ、とか
そんな、スタイぃリッシュぅッ!で、エクセレぇントぉッ!な
(単なる 『
そんなクソ地味な光景を見せられても……なあ。
オンラインRPGのオートプレイ・モードかよ!?)
まあ、
今こうやって、改めて思い出しても、やっぱ地味だな。
そんな事実に
「し、師匠、剣から炎とか出ないの?」
「金属は高熱を帯びると痛む」
「光の剣がズパパパパとか……」
「攻撃魔法でもなかなか聞かん」
「ぶ、分身して攻撃とか」
「幻影をつくる魔法はあるが、攻撃は無理じゃ」
「斬撃を、ハアッ、って感じで飛ばして、遠くの物を斬ったり」
「……言っている意味がよく分からん。
剣無く物が斬れるなら、剣など要らぬだろ?」
「…………し、師匠……」
── ロ マ ン が な い !
絶望した!
そんな現実に絶望した!
そんな俺は、夜な夜な、こっそり魔術の式をいじり始めた。
── 『格闘ゲームの必殺技とか奥義とか、カッコイイ技をなんとか再現できないか?』
それはもはや、この異世界に転生してしまった『
▲ ▽ ▲ ▽
いまさらな話だが、俺の前世は事務系サラリーマン。
デジタル音痴世代の上司の代わりに、エクセルやらアクセスやらいじくり回すのが仕事だった。
前任者が気まぐれに作った、
制作者本人も覚えてない、意図不明な謎関数やら謎マクロ!!
『あー、それ? なんでしたっけー……まあ、
── 『フレキシブルに!』じゃねえよ!?
── 具体的に指示をくれ、前任者!!
果たしてゴミなのか、あるいは資源なのか。
細かな分別作業が必要なデータの山に頭を抱え、ひとり徹夜した(他の連中は戦力外)のは一度や二度ではない。
── やめろ、変なオート実行処理とか入れるな!
── 逆クリック禁止とか解除が面倒な設定するな!
── 同じようなデータ10個も20個もつくるな!
──
そんな記憶が思い出されると、途端にブワッと変な汗がいっぱい出る。
▲ ▽ ▲ ▽
── と、ともかく。
毎晩せっせといじくり回して気づいたが、魔法には術式とでもいうべき、法則性がある。
なんか解らん文字の
(そもそも、前世いい歳のオッサンだった俺とか、パソコンとか授業で習わない世代だったし。
当時の
例えばぁ ──
『ウイザードを開始します、って……。 え、何が
『マスター
── みたいな言葉が一杯だからなぁ……
毎月、分厚いパソ通(
前世ニッポンの若かりし頃を思い出し、
ありがたい事に、魔法を独学する資料は
ジジイの
生活用品としての
結局3~4ヶ月くらい、魔導の術式をいじり回したかな。
剣からバシュンと斬撃らしき物を飛ばして、庭の
「…………これを、お主が……?」
「どうよ、スゲーだろ?」
「……………………」
「いや、師匠。なんか言って……」
「……………………………………」
── ジジイ、以下無言。
なんとも言えないような、スゴイしかめっ面をされた。
前世ニッポンの人間国宝くらいの厳格な伝統工芸職人に、
『この
ってアニメキャラのイラストみせたら、こういう顔になるかもしれない。
今思えば、あの時点で失望されたのだろう。
つまり『あー、このバカガキに伝統と匠の技を継ぐとか無理だわ』みたいな感じ?
ジジイ、それから毎日考え事してたし。
剣術の組み手の後とか、いつも手も足もでないジジイの背中が、なんか小さく見えた。
── それから約3ヶ月後の10歳誕生日に、
やっぱり思い返すと、この辺りが原因だな、うん。
▲ ▽ ▲ ▽
そして新たな転機は、俺の10歳の誕生日(『戦力外通告』)から2週間くらいか。
ジジイが、下山のために身辺整理を終える頃。
── 思いがけず、妹弟子が出来た。
//////////!作者注釈!//////////
2022/09/05 ちょっと説明の追加。
2023/06/18 ちょっと説明の追加。
『ブックマーク追加』、評価『★★★』、『ひと言感想:いいね!』など
いただければ更新作業の励みになります。
また「この作品読んだ!」的なXポストでも作品の宣伝になり、喜ばれます(作者に)
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