「知ってる?異世界って格ゲーないんだぜ(絶望)」ナマクラ剣士のしくじり伝説【奥義コマンド:↓↘→+弱S】

宮間かんの

Round 1:道場ステージ

01 :か弱い男の娘(絶望)

俺、前世はニッポン人、名前はロック!(転生者あいさつ)




「── で、ロック。

 何故なにゆえ、この『魔剣士まけんし道場』を壊滅・・させた・・・?」


「………………」



いきなりだが、お説教されている俺。

しかも、石畳の上に正座中。

さっきから、めっちゃ足痛い。



(これ、さすがに『児童虐待ぎゃくたい』だろ……?)



前世ニッポンなら、ソッコーで訴えられてるぜ。

ここ近年は体育会系の部活クラブでも体罰禁止らしいし。



(―― 良かったなぁジジイ!

 ここが中世並みに倫理観と道徳がガバガバの、クソ異世界で!!)



そんな不満が顔に出たんだろう。きっと。



むくれて・・・・ないで、少しは反省せぬか、ロックよ……」



仁王立におうだちのジジイが、ため息。

ちなみに見た目は、白髪で長身、剣の達人ジジイだ。



「反省? え、なんで?」


「ハァ……ッ まったく、困った奴よ……っ」



腕組んだジジイが、しらがマユ毛でしかめっ面・・・・・



「………………」



しかし、俺としては理不尽りふじんに怒られ、不服でいっぱい。

そんな反発心から、ジジイから目線をそらす――

 ―― と、この道場の窓ガラスが目に入る。



映っているのは、『華奢きゃしゃで可憐な美少女』な黒髪少年・・



―― そう!

異世界転生したら、か弱く可憐かれんヲトコッ(☆ミキャピッ


男子とは思えない『可憐可愛いキャワワ美貌ルックス』!

中学生女子ローティーン並に『小柄でか細い体格バディ』!

幕張コミケ女装コスプレしたら、カメラ小僧カメコに大人気になっちゃう!?

(※ 注意:異世界転生者のため価値観が平成で止まってます)



(── ちがう、そう・・じゃない……っ!)



思わず、奥歯がギリ……ッと鳴る。



(ココって人食い魔物がワラワラ、危険がデンジャーな異世界だぞ!

 なんでこんな貧弱男子ザコキャラに転生してんだよっ(半ギレ))



つまり『玄関あけたら2分で(人間が魔物の)エサごはん』というクソ異世界だ。

そんな難易度ベリーハードで、見た目がどうとか(特に男!)、マジどうでもいい。


むしろ、頼りがいのある筋肉男マッチョがモテる。



(―― という事は、このザコ大男ども。

 もしや、街の女性にキャーキャー言われて、モテモテのデレデレだったりするワケ……?)



そんな事を考えると、道場の中で倒れてる連中に目が向く。


そう、この石畳の道場内・・・ブッ倒れ・・・・てる・・大男・・たち・・(ゴツい見た目のくせにイマイチ!)だ。



「……ハァ~~!」



思わず、ため息が出る。



こんな・・・俺に・・ボロ負けする、アホどもが……?

 女性にモテモテ?

 つまり野球部エースくらい、キャーキャー言われてるの……?)



不条理な現実に、ギリ……ッ、ギリ……ッと歯ぎしり。

転生した世界のクソっぷりに、ちょっとイライラしてきた。


何せ俺は、さっき言った通り、肉体的には『小柄チビ華奢ザコ』。

さらに、魔法有りのファンタジー世界なのに魔力量すら『極小カス』。


魔法も物理もダメダメなワケだ。



(昔の格ゲーで言うなら『弱キャラレシオ1』だろ、この身体からだっ!

 いや、あるいはソレ以下か!?)



弱すぎて『ラスボスレシオ4超え』とか絶対倒せないヤツ!

あるいは、『かみ・・キャラ』の『紙防御かみぼうぎょ』の方のヤツ。


つまり、異世界転生したら『すぐ死ぬ激弱少年ザコキャラ』だった、俺ロック。



―― さらには、女顔ナヨナヨ男子な見た目のせいで、女性にもモテないなんて……?!



(うわっ……。

 オレ輪廻りんね 、 ヒドすぎ……?)



思わず、口元を両手で押さえちゃう。





▲ ▽ ▲ ▽



「ロックよ。

 いい加減に事情を説明せんか」


「……んぁ?」



ちょっと現実逃避しかけていたので、何か変な声がでた。



「『ん?』では、ないわ……

 まったく、こやつは……ハァ」



俺の目の前に立ってるジジイが、腕を組んで、ため息。



「一応、念のために言っておくがな。

 『魔剣士まけんし』というのは、魔法の力で超人の能力を発揮する、選ばれた戦士の事じゃ」


「……なんの話だよ、ジジイ?」



俺は別に『説明が理解できない』というワケじゃない。

むしろ真逆。

『なんで今さら解りきった事を?』と困惑しているワケだ。



(なにせ俺って、魔剣士まけんしなジジイのもと弟子でしだからなぁ……)



簡単に説明すると『この異世界でのサイキョー戦闘職ジョブ魔剣士まけんし』。

そして、そんなサイキョー戦闘職ジョブを目指して落ち・・こぼれた・・・・才能なしが、俺である。



いえ~い、せっかく異世界転生したのに素質も才能もないザコ男子、ロック君で~す!


異世界のみんなぁ~、後ろから小石投げたり、指さしてバカにしたり、何かとイヤがらせしたり、通りがかりで笑ったりツバいたり、だましてゴミ売りつけたりしないで、ちゃんと仲良くしてね?(青筋笑顔ブチぎれ寸前ッ)



「そんな魔物から・・・・人々を・・・守る・・『選ばれた戦士』が、だ。

 おぬしのような『魔剣士ではない者』に手も足も・・・・でなかった・・・・・わたれば、一体どうなると思う?」


「……まあ。

 修行不足を反省して、明日からガンバるんじゃね? きっと」


「ハァ……、全くこやつは……どうしてこう……」



ジジイは話にならんと額をおさえて、長い白髪しらがを邪魔そうにかき上げる。



―― ちなみに、この異世界だと『髪を伸ばすと魔力が増える』。

だから、魔導師は長髪が標準デフォで、男だとヒゲも伸ばすらしい。


俺も髪を伸ばすと、1~2割は魔法の発動回数が増えた感じ。

体格も魔力もザコな俺には、貴重な能力値ステータスの底上げ要素だ。


この剣の達人ジジイなんて、白髪しらがどころか、白ヒゲまで伸ばしてる。

ちょっと見た目、仙人みたい。



―― そんなジジイが、白毛しらがヒゲをいじりながら、トラブルの事情聴取を再開。



「まあ、おぬしが暴走する原因など、ひとつしか無いか。

 で、『あの子』に何があった……?」


「── だってジジイお前!

 アゼリアのピンチだぞ!!」


「ハァ……、やはりそれ・・か」



俺が目をげても、ジジイは呆れ顔。



「ロックよ……。

 妹弟子いもうとでしがナンパされるたび、『魔剣士まけんし道場』をつぶしてまわる気か?」


「誰がナンパくらいで、『道場やぶり』するかよっ」




―― 【悲報】オレ、絶世の美少女さんをクズどもから守護まもったら超怒られてしまう【むしろ善行】





▲ ▽ ▲ ▽



「しかし、アゼリアは『ナンパがケンカの発端ほったん』と言っておったし……」


「ち・が・う・わ・いっ

 ジジイ、俺はなぁ ──」



俺とジジイが言い争っていると、少年の声が割り込んできた。



「── あ、あの……っ」



この赤毛少年は、恵体メグタイ(恵まれた体)ってヤツ。

俺よりひとつ年上の16歳で、すでに体格ガタイが青年並だ。


この世界というか、この国というか、転生先は高身長ムキムキ男ばっかり。

おかげで、俺がいよいよチビで華奢きゃしゃに見られて、ナメられてしまう。



「お、俺が! 俺なんかが!

 お弟子さんと決闘なんて、だいそれた事をしたせいで……っ

 ―― 申し訳ありませんでしたっ」



赤毛のヤツ、スライディング土下座だ。



「俺、責任とって、道場をやめます!

 ですから、どうかお許しを!」



赤毛少年が、涙ながら何度もペコペコ頭を下げる。

俺は、そのゴツい肩をつかんで止める。



「お前が、頭下げる必要なんて、ないだろうが!

 問題は・・・、お前じゃないっ」


「そうじゃのぉ。

 問題は・・・、全部ロック、お主じゃし」


「ちがうわ!

 混ぜっ返すな、ジジイ!

 ── 問題の、トラブルの原因! 全部あの2人だからなっ!」



俺は、赤毛少年の先輩であるアホ2人を指差す。

道場の入口そばでくたば・・・ってる・・・悪党チンピラ2人組だ。



「では、ロックよ……。

 なぜ、その2人を倒して『手打てうちち』にしなかったんじゃ?」


「── はあぁ~~! 何いってんだジジイっ!?

 男と男の決闘に、イチャモン付けてくる!

 チビ・貧弱・落ちこぼれの俺に、多勢に無勢でかかってくる!

 そんなヒキョー者だぞ、アイツら!」


「……貧弱……落ちこぼれ……。

 ロックお主、自分の事を、そのように思っていたのか……?」



ジジイが、何か遠い目をしてる。

俺は構わず、事情説明を続ける。



「コイツら、次はもっときたねえを使ってくるだろ!

 『か弱い女の子を人質』にしたり!

 ── うわあぁ……っ!?

 ア、アゼリアがさら・・われ・・ちゃったら、どうすんだよジジイ?!」


あの・・、アゼリアが……さら、われる?」



俺がこうも熱心に訴えてるのに、ジジイは反応イマイチ。



「アゼリアは、なぁ!

 か弱い女の子で、可憐なお嬢様なんだぞ!

 もしも! クズでゲスな悪党に押さえ込まれて『ゲッヘッヘッ』とか ――

  ―― ……ぅぅわぁァッ!?!?」


「……か弱い?

 押さえ込む……、あの特級のジャジャ・・・・馬娘・・を?

 ―― そんなマネができるのは、お主・・くらい・・・じゃろうが……」



何かよく解らん反論をしてくる。

まったく何考えてんだ、このジジイ……っ


妹弟子・アゼリアは『才能のない・・・・・に負ける』くらい、か弱い女の子だぞ!



(── いや、違うよ?

 ウチの妹弟子に、『魔剣士の才能』がないワケじゃないんだ!)



むしろ、トップクラスの天才だと思うよ!

きっと伝説とかなっちゃう超・天才児!


ただ、あの子は、心の優しさがアダになっちゃうタイプ。

心が天使だから!(身内のひいき目)


きっと、怒りMAXマックスか、闇堕やみおちか、そういう暴走状態しか本気の全力100%が発揮できないんだろう。



(……ウチの妹弟子、対人戦とかマジ苦手だからな。

 剣の達人なジジイはともかく、『ナマクラ剣士な兄弟子(俺!)』にも勝てないとか……)



お兄ちゃん、色々心配です。


── だからこそ!

── そんな子だからこそ!

── 魔力も才能もない俺が、カラダを張って血まみれになってでも!



「女の子はぁ! 男が守ってあげんと! いかんでしょう!?」



俺の血をくような絶叫。



「…………ハァ……」



だがジジイは、いよいよ白い目。

『もう、めんどくせえなコイツ』という表情だ。



「……あの子とて、人並み以上にしっかりきたえておる。

 りかかる火の粉くらい、おのれで振り払えるじゃろ……」


「ジジイが、そんな放任ほうにん主義すぎるからだろ!

 だから俺がこんなに、妹ちゃんの心配しないといけないんじゃねえか!?

 ジジイ、テメー、俺を育成途中で放り出してアゼリアを弟子にしたクセに、色々無責任だろが!?」


「………………そうか。

 まあ、おぬしがそうまで言うなら、本人にもいてみよう。

 ── これリア、こちらに来なさい」



ジジイは、遠くの方に声をかけた。




▲ ▽ ▲ ▽



「なんですの、お師匠さま?」



道場入り口のベンチから立ち上がる、銀髪美少女さん。

―― あら、どこの高貴なご令嬢様かな?

―― もしや、どこかの国のお姫様かな?


なんて気品あふれる美少女っぷり!

小動物のようにポリポリとクッキーを召し上がっていたお姿も、口の周りについたクッキーの欠片かけらまでもが、チャーミング!


これが俺の妹弟子、アゼリア=ミラー(15歳) ──

 ── 愛称リアちゃん(今日も可憐カワイイ)な訳だ。



「今の話、聞いておったか?

 お主はどう思う?」


「うーん……リアは、そうですわね ──」



銀髪美少女・リアちゃんは、碧眼へきがんをちょっと細めた。



(うんっ、うんっ! そうだよねリアちゃん?)



可憐で心優しく繊細な、花もさかりの15歳。

ゲス野郎に純潔を狙われる(!?)なんて、乙女のピュアなハートが傷ついちゃうよね?



「── リアも!

 お兄様といっしょに、『道場やぶり』をしたかったのですわ!」



妹弟子の、天真爛漫てんしんらんまんの笑顔。



「お兄さま直伝の『超必殺アルティメット奥義』で、ズバズバですわ!

 ついでに、お師匠さまの『五行剣ごぎょうけん』で、ザクザクですわ!

 気持ちよい汗をかくと、夕食のデザートがいっそう美味しいですのよぉっ!

 わたくし、3日も修行がお休みで腕がなまりそうですわ!

 試し斬りの相手が欲しいですの!」



銀髪お嬢様のニコニコ笑顔から、クソ物騒なセリフがき出される。



「……リアや」

「……リアちゃん」



それを見て、師匠であるジジイの心と、兄弟子である俺の心が一つになった。

まさに以心伝心いしんでんしん、声も重なる。



── 『そっちのまとを借りて、気が済むまで打ち込み練習してなさいっ』



俺とジジイが指さしたのは、魔剣士道場の端にある『人型標的カカシ』。

丸太木まるたぎ鉄兜てつかぶと胴鎧どうよろいをつけた、剣術の練習設備だ。



「わかりました!

 思いっ切りブンブンですの!

 ── とりゃー!」



ガン!ゴン!ガン!ゴン!と、妹弟子が木剣で工事現場みたいな音を鳴らす。

だいぶん体力が有り余っていたみたいだ。


それを見て道場のぬし ―― 初老魔剣士まけんしが、苦笑い。



「―― さ、さすが。

 『剣帝けんてい』 さまの、お弟子さまがたですね……ハハハ」


「あの、お師匠さま。

 俺は、いったいどうしたら……」



赤毛の年上少年は、道場主のそでをソッと引き、なかば涙目。



(元々コイツがからんで・・・・きた・・のが原因だし、自業自得よなぁ……)



赤毛少年のへこみっぷりを見ていると、俺もニンマリと口元がゆるむ。



── まあドンマイ、気にすんなよ!

粗相ポカして勤務先カイシャが吹っ飛びそう』とか、そういう案件しくじりって誰にでもあるさッ☆



(俺も前世ニッポンのサラリーマン生活で、ガチ土下座な案件しくじりとか2~3回あったしなぁ……っ(経験者のあたたかな眼差まなざし))



いわゆる『類友ルイトモ』な友情のきずなを感じて、心がホンワカ。



―― そんな懐かしい気分のせいか。

俺は、なんとなく過去の記憶にひたり始めた。



//////////!作者注釈!//////////


この作品にはオマージュ要素が含まれています


2023/01/21 タイトルと内容を少し変えました

2024/07/03 解りづらい部分を修正しました

2025/01/14 長くて冗長な部分削りました



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