【↓↘→+弱S】ナマクラ剣士の失敗譚~知ってる?異世界って格ゲーないんだぜ(絶望)~
宮間かんの
Round 1:道場ステージ
01 :か弱い男の娘(絶望)
俺、前世はニッポン人、名前はロック!(転生者あいさつ)
異世界転生したら、か弱く
(── ちがう、
思わず、奥歯がギリ……ッと鳴る。
窓ガラスに映る『
理想を言えば、もちろん
強いんだったら、
(この異世界って、人食い魔物ワラワラで危険がデンジャーなんだぞ!
なんでクソの役にもたたん『
いわゆる『死にステ』 ── 無意味な
戦闘力には結びつかない『お遊び要素』。
(
しかも魔法アリアリな世界なのに『魔力量すら
昔の
ゲーム雑誌が遠回しに『超・上級者向け』と表現しそうな感じ。
(クッ! まさか俺自身が、
また、歯ぎしり。
(昔の格ゲーで言うなら、
いや、あるいはソレ以下か!?)
弱すぎて、
それ以下とか、ただのザコである。
『かみキャラ』の『
(── 転生したら『すぐ死ぬ
▲ ▽ ▲ ▽
そんな
つまり、
そんな内心を見抜いたように、目の前で
「フゥ……ッ
「反省? え、なんで?」
「ハァ……ッ
まったくお主は……っ」
「………………」
正直、理不尽に怒られ、体罰までくらって、不服な気分でいっぱい。
── つまり、俺ちょっと色々あって、いま
(いたいけな15の少年に、ひどいと思わないか?)
男の15といえば、アレよアレ。
夜にバイクとか盗んで駆け出したりする、センチメンタルなお年頃。
ギザギザ割れたガラスか、とがったナイフみたいに、気をつけて
児童
ここ近年は体育会系のクラブ活動でも体罰禁止で、色々と世間の目が厳しいらしいし。
(── よかったなジジイ、ここが異世界でっ!!)
そんな現在進行形で
── 俺の養父で、元・剣の師匠が、気を取り直したように口を開いた。
「── それで?
お主なにゆえ、ここで
「だってジジイお前、アゼリアのピンチだぞ!」
俺は顔をしかめて、くってかかる。
だが、悲しいかな、迫力いまいち。
まあ、我ながら背が低いし、声変わりしても甲高いし、顔も女顔で
あと、黒髪を腰まで伸ばしているのも悪いのかも知れない。
── だが、仕方ないんだ、髪には魔力が宿るらしいので。
だから、魔導師は長髪がデフォで、男だとヒゲも伸ばすらしい。
他ならぬ目の前のジジイも、
ジジイは、その
「ハァ……
お主、妹弟子がナンパされるたびに、『
「バカいうな、誰がナンパくらいで道場破りするかよっ」
俺は、力いっぱい否定する。
だが、ジジイは信用ならないと、首をすくめるだけ。
そして、石畳の
「しかし、
「ち・が・う・わ・いっ
ジジイ、俺はなぁ ──」
俺とジジイが言い争っていると、急に赤毛が割り込んでくる。
「── あ、あの……っ」
たぶん
赤毛は、俺の1こ上の16歳にして、ガタイはすでに青年並だ。
ってかこの世界というか、この国というか、転生先はガタイいいヤツばっかりだ。
おかげで、俺がいよいよチビで
「お、俺が! 俺なんかが!
お弟子さんと決闘なんて、そんな大それた事をいいだしたから……っ
申し訳ありませんでしたっ」
赤毛のヤツ、いきなりスライディング土下座である。
ムダにいさぎよい好青年っぷり……いや、好少年か?
「この責任とって、俺、道場をやめますので!
どうか、お許しを!」
俺より1つ年上の赤毛少年が、涙しながら何度も頭を下げる。
俺はちょっとだけ、ムっとする。
赤毛のゴツい肩をつかんで、無理矢理に頭を上げさせる。
「お前が、頭下げる必要なんて、ないだろうが!
問題は、お前じゃないっ」
「そうじゃのぉ。
問題なのは全部、ロック、お主じゃし」
「ちがうわ!
混ぜっ返すな、ジジイ!
── 悪いの! 全部! あの2人だからなっ!」
俺は、赤毛少年の不良先輩という、2人のアホを指差す。
道場の入口そばでくたばってる、顔すらアホっぽい。
「ロックよ……
ではなぜ、その2人を倒した後、おとなしく剣をおさめなんだ?」
「── はあぁ~、何いってんだジジイ?
男と男の1対1の決闘の結果に、横からイチャモン付けてくる!
さらに、魔剣士の才能がない俺なんかに、多勢に無勢でかかってくる!
そんなヒキョー者だぞ、アイツら!」
なんで俺みたいなチビ貧弱な男子に、そんな凶悪な事しますかね。
そういう事を思い出すとイラッときて、アホ先輩2人を差す指がプルプルする。
「……魔剣士の、才能が、ない……
そのように思っていたのか、お主……」
ジジイが、何か遠い目をしてる。
(── ジジイ、すまんな!
せっかく見込んだ一番弟子で養子の俺が、こんな才能なしで!)
俺だって才能や素質がはっきりする前は、真剣にジジイの後継者を目指していた。
だから、『ジジイの期待に応えられないで申し訳ない』って気持ちだってあるんだぜ?
── まあ、その辺りは、今は
「きっとコイツら、この次はもっと汚ねえ手を使ってくるだろ!
もしそんなんで、妹ちゃんとか
── うわあぁっ ア、アゼリアが
「…………?」
俺が、こうも熱心に訴えてるのに、ジジイは反応イマイチ。
「アゼリアは、なぁ!
か弱い女の子なんだぞ!
可憐なお嬢様なんだぞ!
もしも! クズでゲスな悪党に押さえ込まれて『ゲッヘッヘッ』とかなったらどうすんだよ!?」
「……か弱い?
……押さえ込む?
……あの特級の、ジャジャ馬娘を?
そんなマネができるのは、お主くらいじゃろうが……」
なんかよく解らん反論をしてくる。
まったく、何考えてんだ、このジジイ……っ
アゼリアは、剣の
(── いや、違うよ!?
ウチの妹弟子に、魔剣士の才能がないワケじゃないんだ!)
むしろ、トップクラスの天才だと思うよ!
きっと伝説とかなっちゃうレベルだと思うよ!
ただ、あの子は、心の優しさがアダになっちゃうタイプ!
きっと心が天使だから、悲しみの怒り
(……ウチの妹弟子、対人戦とかマジ苦手だからな。
剣の達人なジジイはともかく、『ナマクラ剣士な兄弟子(俺!)』にも勝てないとか……)
お兄ちゃん、色々心配です。
── だからこそ!
── そんな子だからこそ!
── 魔力たりない俺が、カラダを張って血まみれになってでも!
「女の子はぁ! 男が守ってあげんと! いかんでしょう!?」
俺の血を
「…………ハァ……」
だがジジイは、いよいよ白い目を向けてくる。
もうめんどくせえな、という表情だ。
「……あの子とて、人並み以上にしっかり
「ジジイが、そんな放任主義すぎるからだろ!
だから俺が、こんなに妹ちゃんの心配しないといけないんじゃねえか!?
ジジイ、テメー、俺を育成途中で放り出しておいてまでアゼリアを弟子にしたくせに、色々無責任だろが!?」
「………………そうか。
まあ、お主がそうまで言うなら、本人にも
── これリア、こちらに来なさい」
ジジイが呼びかける。
すると、小動物のようにクッキーと紅茶を召し上がっていた、銀髪美少女が立ち上がる。
あら、どこの高貴なご令嬢様かな?
もしや、どこかの国のお姫様かな?
気品あふれる美少女っぷり!
口の周りのクッキーの
これが俺の妹弟子、アゼリア ── 愛称リアちゃん(今日も可憐カワイイ)な訳だ。
「なんですの、お師匠さま?」
「今の話、聞いておったか?
お主はどう思う?」
「うーん……リアは、そうですわね ──」
銀髪の妹弟子は、ちょっと陰りのある笑顔。
うん、うん、そうだよね。
可憐で心優しくも繊細な、乙女のさかり15歳。
そんなリアちゃんが、極悪非道なゲス野郎に純潔を狙われる(!?)なんて、ピュアなハートが深く傷ついちゃうよね?
「── リアもお兄様といっしょに、『道場
妹弟子の、
「3日も剣の修行がお休みで、腕がなまりそうですの!
お兄さま直伝の『超必殺アルティメット奥義』で、ズバズバですわ!
ついでに、お師匠さまの『
気持ちよい汗をかくと、夕食のデザートがいっそう美味しいですのっ!」
クソ物騒なセリフが次々と、銀髪お嬢様のニコニコ笑顔から
「……リアや」
「……リアちゃん」
それを見て、師匠であるジジイの心と、兄弟子である俺の心が一つになった。
まさに
── 『そっちの
「わかりました!
思いっ切りブンブンですの!
── とりゃー!」
妹弟子は、ありあまった体力の発散を始める。
ガンゴンガンゴン、工事現場みたいな音がし始める。
丸太木に兜と胴鎧をつけた打ち込み的に、全体重をのせた
俺ら、魔剣士の修行中の身としたら、日常の光景だ。
うん、なんか俺も、修行場所の山に戻った気分だ。
ひさしぶりの買い出しや
「さ、さすがは、『
この道場主の、初老の
その初老剣士の
「あの、お師匠さま、俺はいったいどうしたら……」
赤毛の年上少年、なかば涙目。
体格がいいくせに、情けない顔をよく見る。
(元々コイツが
── まあドンマイ、気にすんなよ!
うっかり
俺も前世ニッポンのサラリーマン生活で、ガチ土下座な
そんな風に、
なんとなく、過去の記憶に思いをはせていた。
//////////!作者注釈!//////////
この作品にはオマージュ要素が含まれています
2023/01/21 タイトルと内容を少し変えました
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます