コンビニ
レジ打ち、品出し、エトセトラ。マルチタスクを流れ作業としてこなしていると、すぐに終業時間になっている。
人生もこんな風に過ぎていって、気づいたら老人になってしまうのだろうか。
定職が決まってからというもの、そういう想像をよくするようになった。
学生だった半年前には、金を稼いでやりたいこと、行きたい場所、食べたいもの、夢があったはずなのに。
空虚なミライが見える。
また今日も、毎日目の前のタスクをこなしているうちに朝が来る。
品出しをして在庫を確認して、次々来る客の対応をする。
自分は動かずに、流れて来る仕事を淡々とこなすだけ。
深夜のコンビニに決まって現れる人たちは大抵顔色が悪い。
流れが速く澄んだ水の大河と比べて、流れが遅く淀んだ用水路のような色をしている。
土気色の顔をしたサラリーマン、土砂崩れと見間違うようなメイクの崩壊したOL、赤ら顔の学生、小銭を握りしめてチキンを買っていく子供。
これらの人の共通項は、今日を生きることに精一杯な人だ。
足取りから淀みがにじみ出て、白光りする床の上に漏れ出していく。
私は早朝の清掃時に、そのどす黒い何かを拭うことを想像する。
もちろん清掃の前も後も、床は白いままだけど、純白には決してならない。
店の中が年中、少し油臭いのとおんなじことだ。
―ピロピローン
「いらっしゃーませー。」
入店音が響き、私は反射的に愛想をした。
入ってきたその客は、雑誌コーナーを右に曲がった。一直線にアルコールコーナーへ向かって、自社ブランドの一番安くてアルコール度数の高い発泡酒を手にし、真っすぐにレジに来て、タバコを注文した。
私はそれをレジに遠し、袋がいるか、ポイントカードがあるかを聞く。
あとは自動支払機によろしくして、客が後ろを向いたら愛想をする。
その繰り返しだ。
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