ベルトコンベヤー

森本テンテン

ロボット


ベルトコンベヤーに乗って運ばれていく


人の針金ロボットに武装していく


上からロボットのホイップが落ちてきた


柔らかい質感がにゅっと出た


すぐに固そうなロボットになった


それをボタン一つで管理するおじさん


おじさんは、愛しい家族のために今日も働いている


ロボットに対しても愛を持って


ベルトコンベヤーを動かし続けている


ロボットはロボット、なんで愛を持って作っているの?


なんで?


なんで・・?


おじさんが愛を持ってロボットを作っているうちに、

ロボットにも感情が湧いてきました。


花が咲くよりも自然に、想像する心が生まれました。


ある日もまた、感情を持ったロボットが生まれました。


いつしかロボットは皆、優しい心を持つようになりました。


おじさんが優しかったからです。


おじさんは同じ工程を繰り返します。


同じボタンを何度も押して、その度にロボットには形ができていきました。


ときにボタンの押し方を工夫して、おじさんはロボットを作り続けました。


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「おじさんの姿が見えなくなって久しい。」


「自分たちはなぜこのベルトコンベヤーにのっているのだ?」


「燃料がないから動けない。」


「ひとりぼっち」


「ずっとベルトコンベヤー」


「所詮、ロボットw」


「動きたい。」


「動けない。」


「しばらくここにいてみよう。」


「ああ。」


「分かれ道だ」


「右」


「左」


「右」


「左」


「規則性があるぞ。」


「逆側には何があったんだろう。」


「また分岐だ。」


「右」


「左」


「右」


「ずっと分かれ道が続いているのか?」


「もしかしたら他の道を行ったやつは今頃、動けるようになっているのか?」


「…赤い。」


「ベルトコンベヤーがない。」


ロボットは、一歩踏み出してみました。


「赤い何かがとぐろを巻いている。」


「美しい。」


美しい?美しいってなんだ?


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ただ一面、炎に包まれた星にいました。


それが無数の右左の先にあった世界でした。


おじさんが育てたロボットは、汗水たらさずに働いていました。


ロボットは汗がかけないのです。


周りはロボットから出る無機質な音と星の息遣いが響きます。


ロボットは声を出さなくなりました。


考えているのかもわからなくなりました。


同じ動き。


同じ作業。


ロボットは次々とベルトコンベヤーにものを乗せていきます。

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