自由の鳥

志央生

自由の鳥

 飛びたかったのは鳥になりたいからではなかった。何にも縛られず、自由になりたいと願っていたから飛びたかった。

「ひとりで飛ぶよりふたりで飛んだらきっと気持ちいいよ」

 夕暮れに染まる空を背に彼女は私に手を伸ばしていた。その手に触れれば行きたいところへ行ける、そう思わせる魅力が宿っている。吸い込まれるようにして私の腕は伸びていき、彼女に触れる直前で止まった。あと一歩で怖がりな自分が躊躇させたのだ。

「もうじき夜になるね。鳥は闇の中を飛べないんだ」

 彼女の顔を見ると切なげな表情を浮かべていた。私が手を取ればすべてが終わる。そう考えたとき、怖がっていたはずの私の手が自然と彼女に触れた。

「さぁ、行こう」

 彼女に手を引かれ私は空を飛んでいた。

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自由の鳥 志央生 @n-shion

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