第31話 ハーレムが徐々に形成されつつあるようです

「お前達!オレはレゼンさまの命を受け、人間に対し冷たくすることをやめた!これからは人間と仲よくするんだぜっ!」

「皆様方!人間と獣人の対立の時代は終わりを迎えました。これからはレゼンさまを盟主とし、人間と獣人の新しい時代を築きましてよ〜!」


 数日後の第8クラス。


 レーフとルースは仲直りし、俺の理想である『人間と獣人が協力しあう体制』に協力してくれることとなった。

 2人には教室内で仲の良いメンバーを取りまとめるように命じてある。

 第8クラスの緊張は徐々に緩和され、人間と獣人の間に交流が生まれつつあった。


「ちなみに、オレはレゼンさまの女だからな!レゼンさまから直々に『俺の女になれ』って言われたんだ!」

「またその話を!違いますわよ!あれはわたくしたちの本音を引き出すために言った方便!わたくしにもまだまだチャンスがありますわ!」

「「ぐぬぬぬぬぬ……」」


 コンビ芸は健在だが、まぁこれはいいだろう。


 第8クラスだけではない。


「第3クラスのエディスです!前々から人間と獣人は仲良くすべきだと思っていました!協力させてください!」

「第2クラスのハンナです!一度教室にきてくれませんか?レゼンさんの話をみんなに伝えたいんです!」


 他のクラスからも幾人か訪ねてくるようになった。

 ペトロとの決闘からはじまる一連の出来事により、俺の評判が高まった結果だ。


 みんな学園内の空気や第二次ヴラス帝国の侵攻に対して問題意識を感じている。


 きっかけさえあれば、わだかまりを捨てて協力するようになるだろう。

 共通の敵が団結を生むのは今も昔も変わらない。


「静粛に!これより授業を始める。本日は『エレメント』についてだ。我が『メリホスト騎士団訓練校』では、2人1組となって戦う『エレメント』を基本戦術として採用している。4月は座学のみ学んでいるが、5月からは本格的に……」


 マリア・シェレスト先生も力強く授業に取り組んでくれるようになり、クラス内に活気が生まれつつあった。

 ペトロが教室に戻った時は驚くだろう。


 なにせ獣人の教師がクラスで教鞭きょうべんを取っているからな。

 帰ってきた時に自分の居場所はなくなっている。


 ゲームのレゼン・ヴォロディのごとく怒り狂うに違いない。


 このように、『学園寝取り計画』は着々と進行しているのだ。



 ****



「明日はレゼンさんと会いたいという方はいません。久しぶりにゆっくりできますね」

「ありがとうミラ。ミラはスパイだけでなく秘書としても有能だな」

「えへへ……それほどでも……」


 忙しい一日が終わり夜の学生寮でミラと過ごす。

 学生との接触が増えてきたので、俺はミラにスケジュール調整を任せることにした。

 彼女は器用なのでテキパキとこなしてくれる。


「じゃあ……またミラにご褒美をくれますか?」

「ああ」


 目を閉じたミラの頭をゆっくりと撫でる。

 耳と尻尾がぴくりと動いた後、狼の獣人はうっとりとした表情を浮かべる。


「ふふふ……レゼンさまの手、暖かいですね」


 ミラの髪もさらさらとして気持ちいいぜぇ……一日中触っていられる。

 

 なんてことを言うと引かれそうなので、にやけ面を抑えながらゆっくりと感触を楽しむ。

 しかし、本当に非の打ちどころがない美少女だ。


 今は薄めの普段着姿なので、胸元や鎖骨がちらちらと見えてドギマギする。

 

「レゼンさま……1つ聞きたいことがあるのですが」

「ん?なんだ?」


 ミラがゆっくりと青い瞳を開ける。


「その……」

「何を言っても怒ったりはしない。言ってみてくれ」

「はい……」


 ややしどろもどろになりながら、少しずつ疑問を口にする。


「レゼンさんの、女性の付き合い方を……聞いておきたいなぁと思いまして」

「付き合い方?まぁこの学校は女学生がほとんどだから気を使わないといけないな」

「そうじゃなくてですね……ミラの思い違いならいいのですが」


 何を言いたいのだろう?


「レゼンさんは……実はハ──」

「レゼン・ヴォロディ候補生!今日も料理を持ってきたぞ~~~!」


 乱入者出現!


 部屋のドアを空け、キツネ耳の獣人が現れる。

 手には鍋を持っていた。


「ま、マリア先生!?」

「うむ、私だ。この前より改良したボルシュを作ったんだが……食べてくれるか?」

「え、ええ。もちろんですとも」


 鍋の中でぐつぐつと煮えるスラヴァ王国伝統料理ボルシュ。

 俺は恐る恐る木のスプーンでスープをよそい、流し込んだ。






 なんだこのげっそりする感覚は!?

 苦さと辛さと不味さが混ざりあってハーモニーを形成してやがるっ!

 スープ料理でこれだけまずいって天才だよあんたは!

 

 マリア先生がメシマズだと知ったのは、約束通り彼女と食事をすることになった数日前。


 ゲームでは料理イベントのないサブヒロインだったため分からなかったが……こんな罠があったなんて!


「ど、どうだ?」

「……悪ぃ」

「ん?」

「やっぱ……」






「うめぇわ!何杯でもいける!」

「そうか!また明日も持ってくるからな!」


 そんなキラキラとした目で聞かれたらそういうしかない!


「レゼンさま~~~!ボードゲームやろうぜ~~~!」

「ボードゲームなんて幼稚ですわ!この王国の将来について語り合うのが良くってよ!」

「何を!?」

「文句があるのでして!?」


 再び乱入者が出現!

 今度はレーフとルースだ。

 こりゃ朝まで寝られそうにない。




「部屋に入るときはノックぐらいしてくれ~~~!」


 かくして学生寮の夜は更けゆくのであった。

 

 

 ****



 このように学生生活が華やかになっていく中、次の動きが数日後に訪れる。


「ろ、ロジーナといいます!」


 穏健派の人間、ロジーナが俺を訪ねてきたのだ。





「ええっと……師匠と呼ばせてください!」


 新たなクエストの始まりである。


 

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