第22話 高校デビューは緊張します
朝のひと悶着を終え、俺はついに第8クラスの扉の前に立つ。
マリア先生とミラは先に入っていった。
次は俺だ。
「あー……ごほん。レゼン・ヴォロディ候補生です、よろしく……こんな感じでいいのか?」
第8クラスはゲームでは学生数50名と中々の大所帯。
すでに仲良しグループはできてるだろうし、前世では転校した経験がないし、なんだか緊張する。
「ええい!悩んでもしょうがない。さっさと行くぞ」
頬をぱんと叩き、俺は教室の扉に手をかけた。
クソゲーとはいえ、『メリホスト騎士団訓練校』での学生生活はそれなりにボリュームがあったと記憶している。
戦争前だからそこまで殺伐としてないからな。
今後エクストラモードの展開がどうなるにせよ楽しまなきゃ損だ。
学校を乗っ取り、闇堕ちペトロをぎゃふんと言わせてやる。
決意をもとに扉を勢い良く開ける。
「はじめまして!レゼン・ヴォロディ候補生です!趣味はクソゲープレイ!身長体重は……」
第8クラスへと足を踏み入れると──、
「獣人が暴れないでくれます!?毛が飛び散ると掃除が大変ですってよ!」
「ああ?上等だコラ!てめーの机の上に一本ずつ抜いた毛をならべてやる!」
2人の女学生が言い争っていた。
一人は金髪縦ロールに赤いリボンをつけた長身の人間。
もう一人は背中に小さな羽が生えた背の小さい獣人。
金持ちとヤンキーと言ったところか。
金持ちの方はレーフ・コヴァル。
ヤンキーの方はルース・ヴォイコ。
どちらも『戦場のスラヴァ』に出てくるキャラクターだ。
主人公の味方で、最良のルートではそれぞれが『スラヴァ騎士団』の部隊長となる。
だが……
「もうすぐレゼンさまがここにやってくる!その時は人間はみんな立って授業を受けろ!第8クラスは獣人学生のもんだ!」
「なにか勘違いをなさってるのかしら。レゼンさまはあまりにも粗暴なペトロさんを追放なさっただけで、本当は人間学生の味方です!レゼンさまが来られたら、獣人学生は給食半分抜きですわよ!」
「ぐぬぬぬぬぬぬ……」
「うぬぬぬぬぬぬ……」
エクストラモードではかなり仲が悪いようだ。
ちなみにこの2人だけでない。
広い教室のいたるところで、人間と獣人の女学生がにらみ合っている。
中にはアビリティを発動しようと武器を取り出している学生もいた。
「どうしよう……止めなくていいのかなタチアナ」
「放っておきなさいロジーナ。喧嘩に巻き込まれるわよ。好きなだけやらせればいい」
タチアナとロジーナという名の女学生が率いる一部の穏健派だけが教室の隅っこに固まっているものの、事態を鎮める気力もなくあきれ顔。
「やめろ君たち!学生同士喧嘩は禁止だと言ったはずだ!」
副担任のマリア先生が必死に静止しているものの、事態は収まりそうにない。
授業の前に戦争がはじまりそうだ。
というか俺が入ってきたことに誰も気づいていない。
もしかして……
高校デビュー失敗!?
「レゼンさん!」
ミラが困り顔でこちらに駆け寄ってきた。
「……若者に元気があってよろしい、とは言えない状況だな」
「すみません。レゼンさんが教室に来ると知ると、みんな騒ぎはじめて……」
「大体予想はつくが、何があった?」
「それが……」
ミラはこれまでの出来事を話し出した。
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