第9話 なんか増えてました

 大分体調が良いので、部屋を動き回りながら今後について考える。


 俺が考えるハッピーエンドの定義は複数ある。

 中でも必須なのは2つ。


 ──第二次ヴラス帝国の侵略を退け、スラヴァ王国の滅亡を回避する。


 ──スラヴァ王国の人々を可能な限り生存させる。


 特に、ミラ・クリス含む『戦場のスラヴァ』のヒロインの生存は絶対だ。


 俺が個人的に守りたいと言うのもあるが、ゲームの進行に欠かせない役割を持っているので、死なせるわけにはいかない。


 迫り来る『キーウィ防衛戦』まで、そして『キーウィ防衛戦』が始まってからもずっとだ。


 そのためには俺自身が強くあらねばならないが……今のところ覚えているアビリティは『無効インバリッド』ただ一つか。


 このゲームではレベル上げの概念がなく、アビリティを覚える方法は以下の通りである。


 1.鍛錬クエストでSランクを獲得する。

 2.特定のアイテムをゲットする、または身につける。

 3.ストーリーを進め指定のイベントを解放する。


 どれも一手間かかるし『竜の血脈』に対応しているのか分からないな。

 もう一度スキルを閲覧してヒントがないか探ってみよう。


 ──エクストラスキルのステータスを閲覧。


 俺は脳内で命令を下し、ステータス画面を表示する。




 ====================


 レゼン・ヴォロディ(覚醒後)


 種族:竜人(血統継承度5%)

 属性:無

 エクストラスキル:『竜の血脈』

 スキルランク:∞

 格闘適正:∞

 魔法適正:∞

 支援適正:∞

 武器:『市販のメリケンサック』

 アビリティ:『無効インバリッド』『殲滅アナイアレイション

 補足:短時間のみ覚醒できる


====================




 ……

 


 

 いやアビリティが1つ増えてるんですけど!?


 ──レゼン・ヴォロディさまは実績『Aランクユニークスキル保持者を倒す』を解放しております。これにより新たなアビリティ『殲滅アナイアレイション』を会得。無属性の攻撃魔法です。


 脳内に無機質な女性の声が響いた。

 どこかで聞いたような気がするが、思い出せない。


 ──えーと……どなた?


 ──エクストラスキルに関する説明を行うよう命じられた者です。ナビとお呼びください。

 

 ──ゲームにこんな解説役いなかったんですけど!?マニュアルもヒロインの設定解説3ページしかなかったから最初はわけが分からなかったぞ!金返せ!


 ──エクストラモード専用の処置、とお考え下さい。


 ──むぅ……


 とにかく新たなアビリティをゲットしたらしい。

 どこかで試し撃ちするか。


 俺はベッドから起き上がり、部屋の窓へと向かった。


 眼前に広がるのは30キロ四方の広大な原野。

 『メリホスト騎士団訓練校』が所有する演習場。


 『スラヴァ王国』が『第二次ヴラス帝国』の前身『ヴラス帝国』に支配されていた頃は、ヴラス帝国空挺部隊の基地だった場所である。

 『スラヴァ王国』の独立に伴い当然ながら基地は解体。

 長らく空き地となっていたが、『メリホスト騎士団訓練校』が復活する際に敷地を利用させてもらったわけだ。


 学生は今の時間誰もいないしちょうどいい。


 「『殲滅アナイアレイション』!」


 右手をかざすと、目に見えない透明のオーラが集まってくるのを感じる。

 オーラは数十秒かけてやがて円となり、徐々に巨大化。


 ……なんかでかすぎない?

 学校全体を覆うレベルなんだが。


 ──お待ちください。そのアビリティは……


 ナビが止めようとしたが時すでに遅く、円は攻撃魔法として具現化し、演習場の一角に着弾。


 




 演習場の中心に直径10キロのクレーターを発生させた。

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