第11話  クソゲーのクソつよ武器をゲットしました(前編)

「すー……すー……」


 次の日の朝。


 ミラはベッドに突っ伏して寝ていた。

 『殲滅アナイアレイション』を行使した後遺症でまた寝込んだ俺を夜遅くまで看病してたので、その途中で寝てしまったらしい。


 まだあどけなさを残した少女の安らかな寝顔を見て、少しだけほっこりする。


「むにゃ……レゼンさん……もっと……ちかくにいたいれす……」




 寝言でそんなこと言われたら惚れてまうやろおおおおおおおおおおおお!


 と叫んでルパンダイブしたい衝動にかられるが、ぐっとこらえた。

   

 一応ヒロインと恋仲になる展開はある。

 CERO:C(15歳以上対象)の癖にVRできわどいところまでタッチする、パンツを覗くといったけしからん機能は搭載しているしな。


 ゲームの本筋をガン無視してヒロイン攻略に勤しむと、主人公は寮の個室に呼び出され、2人っきりとなる。


 そして……


 ──隊長さんが望むなら……ミラの初めてを……捧げます……


 もちろんその先は暗転して何も見れませんがね!


 ゲームでミラと関係を結んだ場合、主人公ペトロとミラは不純異性交友により退学になり、バッドエンドルート88『つかのまの幸せ』に突入。


 ──ペトロはミラの養母が運営する『なべかま亭』を継ぐことになり、年末に第一子が誕生。

 ──順風満帆に見える2人だったが、第二次ヴラス帝国の侵攻まで後1ヵ月も残されていなかった……


 という後味の悪い文章で〆られる。

 他のヒロインでも大体同じ。


 ……2人だけで駆け落ちすれば?なんて言うなよ。


 俺自身そんな非情な判断をしたくないし、ミラも多分首都キーウィからは離れないさ。




 ヒロインたちを守りたいなら、戦うしかない。


 だから、俺はミラをそっとベッドに寝かして毛布を被せ、ルパンダイブのかわりに書き置きを残す。




 ──看病してくれてありがとう。この前のボルシュ、美味しかったので見よう見まねで作ってみた。よかったら食べてみてくれ。


 湯気の立ち上る木のカップと2切れのパンを添えて。


 

 ****



「レゼン・ヴォロディ候補生じゃな!話は聞いておるぞ。いじめられていた獣人の生徒をかばって、人間の優等生と決闘騒ぎを起こした問題児とな」

「クズを成敗しただけです。後悔はしていません」

「気にするでない!ソーニャも人間じゃが、獣人との間に垣根はないと思ってるからの」


 というわけで、今日は『メリホスト士団訓練校』の一角にある武器屋『バーバ・ヤーガ』にやってきた。


 『バーバ・ヤーガ』を管理する職員ソーニャ・レフスカヤは、ゲームのデータベースによると今年12歳。

  ピンクのウサ耳(模造品)を付け、栗色のロングヘアを肩まで伸ばした人間の少女。


 目で見た武器の重量、性能、製造年代、使われている素材、込められた魔力などを瞬時に判別する希少なユニークスキル『戦神の目』を持つ。


 本人も初等教育を飛び級で卒業し各種鑑定アビリティを身につけた才女で、スラヴァ王国第二の都市キリハウの武器工房で働いた所をこの学園にスカウトされた。


 ややしゃべり方が特徴的なのは『周りから舐められたくない+背伸びしたいお年頃』と記載されている。


「……どうしてウサ耳をつけてるんですか?」

「『人間と獣人が共に学び、スラヴァの栄光を守り抜く』。この学校の精神を形にしてみたのじゃ!可愛いじゃろ?」

 

なんだかんだ子供っぽいのもゲーム通り。


「ごほん。武器が欲しいんです。そろそろ授業に復帰するし、市販のメリケンサックでは心もとないですから」

「メリケンサックを売って新しい武器を手に入れるのがよいぞ。レンタルも可能じゃ!」


 ここは生徒が訓練で使う武器を販売する、もしくは貸与するための施設だ。

 生徒の適性をソーニャが吟味し、100%マッチする武器を提示する。


 ゲームでは何度でも選択できるクエスト『転職』の舞台となっており、さまざまな武器に交換可能だ。


「それでは、適性を色々計測させてもらうぞ!まずは身体測定からじゃ。ソーニャの前で何もかもさらけ出すのじゃ!」

「鑑定アビリティを使った方が早いのでは?」

「ふふん。ソーニャは『スキル頼り』と揶揄やゆされるような頭でっかちな武器鑑定士ではない。データさえあれば、鑑定アビリティに頼らなくてもお主に100%適合する武器を提示可能。ソーニャは天才なのじゃ!」

「……ほう。それは楽しみですね」




メジャーや各種計測器具を取り出すソーニャを見て、俺はにやりと笑った。




 

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