第4話 悪役には秘密があるようです
「すぐに終わらせてやる!『
迷うヒマもなく決闘は始まる。
ペトロは『セマルグルの杖』で火炎を生成する魔法を発動。
複数の火球が猛烈なスピードでこちらに迫る。
『戦場のスラヴァ』では、このクラスの魔法に1発当たると即死である。
──Q:敵の攻撃に当たったら即死します。クソゲーですか?
──A:クソゲーです。「HPやライフの概念はリアルではない。火に包まれると人は死ぬ」という制作陣のこだわりです。
『戦場のスラヴァ』攻略wikiにもこう書いてあった。
ていうか書いたの俺だけど。
「とうっ!」
というわけで、かわす。
「ははははははははっ!」
全力でかわす。
「甘いっ!」
ひたすらかわす!
「ちっ!ちょこまかと!」
「ククククク!数千時間を回避の練習に費やした廃プレイヤーを舐めるなよ!」
「減らず口を!」
ペトロは
何故闇堕ちしてるかは知らないが、ハッピーエンド探しは俺一人でやるしかないらしい。
「その程度か?なら、こちらから行かせてもらうぞ!」
悪役っぽいセリフを言い放ちダッシュする。
「ちっ!」
ペトロは距離を取ろうとするも間に合わない。
こいつは強力な魔法を扱える半面、身体能力はその辺の雑魚敵に殴り倒されるぐらい貧弱だ。
10000時間こいつの体で戦ってきたからよく分かる。
「おらぁっ!」
俺はレゼン・ヴォロディ唯一のアビリティである『
シンプルな技名は悪役兼ざまぁ役なので仕方ない。
一応水属性の魔力を体に帯びているので、拳に水をまとう。
火属性魔法の使い手なら少しは効くはず……!
「水属性、か。ならば……『
とはならなかった。
ペトロは即座に2つ目の魔法を唱える。
杖から土の塊が3つほど飛び出し、弾丸となってこちらに向かってきた。
水属性の弱点となる地属性魔法だ。
「ちいっ!」
攻撃を中断して回避するも、弾丸の1つが頬をかすめ、少しだけ出血した。
……やっぱ殺す気じゃね?
「君も分かってるだろ?僕の『万能魔力』は特別なんだ」
銀色のオーラを漂わせながら、ペトロはせせら笑った。
「言われずとも知っている。ゲームと同じかどうか試しただけだ」
俺は頬の血を拭いながら、かつて操作していた銀髪の少年のユニークスキルを思い出す。
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ペトロ・オレクシー
種族:人間
魔力属性:火・水・風・土
ユニークスキル:『万能魔力』
ユニークスキルランク:A
格闘適正:D
魔法適正:A
支援適正:E
武器:『セマルグルの杖』
アビリティ:『
補足:万能か器用貧乏かは本人次第
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ペトロは、1人1個が基本の魔力属性を4つ保有するユニークスキル『万能魔力』の持ち主だ。
先ほどのように、大抵のスキル保有者に対してアンチ属性魔法をぶつけられる。
食らえば大ダメージだし防御手段も少ない。
「僕が対応できないのは希少な光と闇属性、そして、すでに滅んだ竜人が行使したとされる無属性だけだ!今なら病院送りで済ませてやるから降伏しろ!」
「……断る」
だからと言って、諦めるわけにはいかない。
「なにぃ?」
「戦ってみてはっきり分かった。お前はこの王国を救うに値しない」
「……!」
この国の獣人と人間を結束させるためのカリスマに欠けている。
ユニークスキルも学園でイキる分にはいいが戦争に勝てるほど強力じゃあないな。
何より、性格が狭量で冷酷だ。
俺はイベント『ミラとの出会い』の展開を思い返す。
──ゲームでもレゼンは仲裁に入ったペトロを殴る。
──だが、心優しいペトロはレゼンを直接傷つけない。
──武装のみを破壊し、レゼンを気絶させる。
──その姿を見たヒロインのミラは、ペトロに好意を抱くのであった。
俺を躊躇なく攻撃するペトロを見て確信した。
こいつは100%主人公にはなれない。
ヒロインも全員死なせるだろうし、王国もなす術なく滅ぼされるだろう。
──ミラはキーウィに残ります。
──泣かないでください。まだ陥落すると決まったわけではありません。隊長さんが西から援軍をつれて戻ってくるまで、この学園を守り通します。
──どうかご無事で!ミラは……ミラは……!
──あなたの指揮のもとで働けて、幸せでした!
「このレゼン・ヴォロディ!悪役として高らかに宣言させてもらう!」
エクストラモードでやりたいことは決まった。
「俺は……お前からヒロイン全員を寝とる!!!」
「……へ?」
「お前がこの学園で出会うはずだったあらゆるヒロインは全て俺の女とする!劇的な出会いも、甘酸っぱい青春も、ムフフな体験も、全て俺のものだ!童貞のまま退場するがよい!」
「な、何故僕がまだ未経験と……!!!」
「だが嘆くことはない!俺がヒロインたちを全員寝取った
あとは決意を叫ぶだけ。
「この国を救い……必ずやハッピーエンドをもたらして見せる!!!」
まぁペトロさんには何のことだかさっぱり分からないんですけどね!
「さっきからワケの分からないことをゴチャゴチャと……!病院送りじゃなくて、片腕の一本はもぎ取ってやる!『
ペトロは半狂乱になりながら再び土の弾丸を放つ。
今度こそ直撃コースだ。
目を閉じ、俺は命令を伝える。
──エクストラスキル、発動。
──恐れを捨て、秘めたる力を解放せよ。
****
「あははははははっ!これで僕の……あ?」
土煙から無傷の俺が現れるのを見て、ペトロは高笑いをやめた。
「言っただろ?さっきまではゲームと同じかどうかを確かめる時間だと。お前の性格以外は全て同じだった」
開始5分でノックダウンされる悪役兼ざまぁ役、レゼン・ヴォロディにはとある秘密がある。
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レゼン・ヴォロディ(覚醒後)
種族:竜人(血統継承度5%)
属性:無
エクストラスキル:『竜の血脈』
エクストラスキルランク:∞
格闘適正:∞
魔法適正:∞
支援適正:服従した者にのみ
武器:『市販のメリケンサック』
アビリティ:『
補足:短時間のみ覚醒できる
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「ここからは……本気でいかせてもらう」
彼は獣人の亜種、竜人の末裔であった。
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