第17話
昨日更新を初めて2000pvを超えました。
読んで下さった方ありがとうございます。
本日もあともう1回更新予定です。
よろしくお願いします。
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「軽くて硬い金属を生み出す?」
ハニャッとミィミが首を傾げる。
ちょっとあざといが可愛いと思ってしまった俺は、間違いなく敗北者だろう。
だが、次の態度が魅力をマイナスまで下げてしまった。
「ぶはははは! クロノ、頭おかしいの? 頑丈なものは重い、柔らかいものは軽い。これは常識よ」
ミィミは俺を指差しながら、さも当然と言った態度で俺を馬鹿にする。
むかつくが、ミィミの意見は間違いではない。
ここジオラントでは、それが常識だからだ。
この世界では武器や建材、調理器具にいたるまで、たいてい木や鉄、青銅が使われている。
金や銀、魔力を帯びた魔法銀も存在するが、平民の間では一般的ではなく、とても高価、武器として使われているのは全体の1割にも満たない。
ミィミの言う通り、普段から木や鉄なんかに触れていると、頑丈なものは重く、柔らかいものは硬いと思うものだろう。
そう思ってしまうのは、この世界が魔法文化で、物の質量が違うことが一般的に知られていないからだ。
説明するよりもやってみせた方が早そうだな。
俺はアンジェの武器屋に赴き、鍛冶場を借りる。
有害なガスが出ると悪いので、毒を中和し、外に漏出しないようにする結界を張った。
「軽くて硬い金属ですか。興味がありますね」
ミィミと一緒に、アンジェも見学する。
まず【
「何これ? 揚げパン?」
「ミィミはお腹空いてるのか?」
「ち、違うわよ!」
途端、ミィミの腹から小さく訴えるような音が聞こえてきた。
本人は真っ赤になって否定したけど、お腹は実に正直である。
後で屋台で売ってる揚げパンでも食べさせてあげるか。
「これ……。もしかして
「さすがミィミ。よく知ってるな」
聞き慣れない名称だろうが、俺たちの世界では通称ボーキサイトと呼ばれる鉱石だ。
このボーキサイトに、以前作った苛性ソーダなどを混合。
魔法の炎を使って加熱する。
そこで出来上がったのは、俺が作りたい金属の元となるアルミナだ。
次に俺は【
さすがにこれはアンジェでもわからないらしい。
「これは
ジオラントでもごく限られた所でしか産出しない。
珍しい石なので、1000年前に取って置いたのだが、まさかあの金属を精錬する溶剤として使うことになるとはな。
魔法を使って氷晶石を溶かし、炉の中に入れて、先ほどできたアルミナと混合させる。
「ここからが俺の腕の見せ所だな」
目的の金属を作るには、大量の電気が必要になる。
だから、この金属は「電気の缶詰」なんて呼ばれている。
だが、ここは異世界。
魔法優位の世界だ。
そして、俺は元賢者。
大量の電気を捻り出すなど、造作もない。
【
炉の中に中級の雷属性魔法を落とす。
それをしばらく維持し続けると、炉の下から銀を溶かしたような液体がトロトロと落ちてきた。
「よっし!」
アルミニウムの完成だ!
早速、冷えて固まったアルミニウムをアンジェは持ち上げる。
「軽い! この体積で、こんなに軽いなんて!」
「ミィミも! ミィミも!!」
手を上げて、ミィミもアルミニウムの塊を持ち上げる。
その軽さに目を広げて驚くばかりか、言葉にもできないらしい。
「ふふふ。驚くのはまだ早いぜ」
アルミニウムにさらに銅、亜鉛、マグネシウムを加えると……。
「さらに頑丈になった、
早速、アンジェに頼んでアルミニウム合金を既存の型に流してもらう。
最終的にミィミの身体のサイズに合わせた防具が完成した。
「できましたよ」
ジェラルミンの胸当てに、籠手、さらに腰当てに、すね当てが装備される。
まだ露出度は多いが、これ以上装備をつけると、可動域が制限されてしまう。
盾騎士や重装騎士というわけではないので、これぐらいがちょうどいいだろう。
ミィミは早速、身体を動かしてみる。
俺が見た感じ、速度は落ちてない。
逆に技術を覚えて、防具の重さを拳に乗せられればいいのだがな。
「悪くないわね。ありがとう、アンジェ。クロノ」
ミィミは嬉しそうに笑う。
「あ。そうだ。ちょっと気になっていたんですけど……。ミィミさん、手を出してくれますか?」
「こう?」
ミィミが手を差し出すと、アンジェは小さな刷毛を取り出す。
オイルの中に刷毛を突っ込み、ミィミの爪に塗っていった。
それが乾くと、今度は上から絵を描いていく。
作業は30分ほどで終わった。
「爪を保護するためのオイルを塗っておきました。ミィミさんも女の子ですからね。ちゃんとお手入れしておかないと」
「この絵は?」
「そっちはおまけです。可愛いでしょ?」
アンジェは笑顔で返してくる。
うーん。可愛いといわれれば、可愛いのだが、若干子供っぽさがあるというか、完全に子どもの絵だ。
ミィミは何も言わないが、もしかして怒ってたりしないだろうか。
「か、かわいいぃぃいいぃいぃ!!」
めちゃくちゃ目をキラキラさせていた。
マジか。俺の美的感覚がおかしいのか。
俺の心配を余所に、ミィミはアンジェとともに女の子繋ぎをしながら、ピョンピョンと跳ね回っている。
よく考えたら、これまでお洒落というものにミィミは無縁だった。
初めての人並みのお洒落に、興奮が抑えられないのかもしれない。
防具なんかより、まずはそっちの方を送るべきだったな。
「ミィミ、良かったな」
「どう? どう? クロノ!」
「ああ。似合ってるぞ」
褒めると、ミィミはさらに顔を輝かせて喜んでいた。
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