2.ショタコンではない女、ショタと再会する

ひなた君との出会いの翌日。

私はもう二度と会う事はないだろうと思っていた彼と

早速の再会を果たしてしまった。


「え、え… ひなた君…?!」

「亜衣ちゃん…!」


それは友人の結婚式場。

彼は私の友達の結婚相手…つまり新郎の親戚の子らしい。

化粧直しに向かったトイレ前で再会したひなた君は、

子供用のフォーマルスーツに身を包んでいて…。

あどけない顔に、小さなネクタイがばっちり決まっているのが

不思議な気持ちにさせられる。

…その、いや…なんていうか…めちゃくちゃ可愛いんだけど!?

小さいサイズってだけでどうしてこんなに可愛いんですか?

枯れ専の私も思わずときめいてしまった。

…いや、これは違うんです。

単純に自分よりも小さきいきものに対しての庇護欲的なあれと言いますか…。

要するに、私の中の母性が暴走しているだけだと思うんですよ!!!


「亜衣ちゃん、ドレス可愛いね!」


自分の枯れ専と言うアイデンティティ相手に私が葛藤していると、

ひなたくんは無邪気に追撃をかまして来る。

大人特有のお世辞とかそう言うのを感じさせない純粋な眼差しで私を見上げて、

ニコニコ微笑んでいる。


「か、かわ……!?」


私は動揺して大げさに慌ててしまう。

ここは「ウフフ、ありがと♪」みたいな返答がスマートな大人の女の対応だ。

わかってはいる。

でもでもだって~~~~~~~!!!!!!

そんなこと普段全然言われないんですよ!!!!

そらそうだよ!!!!!

こーんなに小さくて無垢で可愛い男の子に!!!!!

可愛いって言われた!!!!(ドレスが!!!)


は。いや、私は枯れ専だから、全然ときめいたりしてませんけど??????

あーーーー、可愛いな~~~~。可愛いなぁ!ひなた君は!!!

これは全然恋心とかじゃなくて、

母性本能の誤作動だから全然セーフですよ!!!!!

あ~~~~~可愛い~~~~~!!!!育てたーーーーーい!(ヤケクソ)


他に小さな子供がいなくてつまらないと退屈してしまっていると話すひなた君に、

お式のあいだちゃんと座っていられたのえらいね なんて声をかけると、

ぱっと嬉しそうな表情をした後に、慌てて澄まし顔を取り繕って

「もう小学生だから当たり前だよ!」みたいに得意げな顔をするのも微笑ましいし、

スーツとても似合ってるよ、と言ったら、今度は照れたようにはにかんだ顔でもじもじしちゃったり…。


私の言葉一つでこんなに可愛く恥らったり笑ったりしてくれる存在が、

今までかつてこの世に存在しただろうか?

これはもう天使なのかも知れない。

私は、にへにへしたかなり締りのない顔になっていたと思う。


「あ、あのね…。亜衣ちゃん、ぼくね、亜衣ちゃんとまた会えて嬉しい!」

「私もまた会えるなんてびっくりしちゃった。

 カッコイイひなたくんを見られて嬉しいな」

「本当?」


本当に彼は小さなお日様みたいで。

彼が笑うとぱぁっと辺りが明るくなるような気がするのだ。


私は大人。私は大人。

私は大人のお姉さん…。


私は自分に必死に言い聞かせ、余裕のありそうな返答をしようと心がけた。


「亜衣ちゃんもとっても可愛いよ!一番可愛い!」


はわーーーーーーーー!!!

ドレスじゃなくて中身を褒められたー!!!!!!!

しかも一番!!!?


私はもう溶けてしまいそうだった。

無垢で無邪気な丸い瞳がまっすぐに私を見て、

その小さな唇で私を可愛いと言うのだ。

褒められ慣れていない私でなくても、これはまずいんじゃないですか?

どうにでもしてくれって気持ちになってきた。

脳裏に、数多の大好きイケオジ俳優たちが浮かんでは消え浮かんでは消え

「お前は枯れ専じゃなかったのか?」と囁いてくるが、

もーーーーー!!!!バカ!!!!

私の大好きなイケオジ達はそんなこと言わない!!!!!!!と、

私の中で私の妄想に対しての解釈戦争まで勃発し、私の頭の中はもうダメだった。

完全にダメだった。最後には何故かウィレム・デフォーが笑っていた。






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