第40話 パパさんのママさん

 オレの名前は『みたらし』。

 二歳の柴犬だ。


 パパさんが叩かれている。

 しかも馬乗りされて。

 うはぁ、これは痛そうだ。


 さっきからママさんが仲裁に入っているが、パパさんへの平手打ちは全く止む気配が無い。

 どうやらこの人は、パパさんのママさん、つまり、オレにとってはお婆ちゃんってことらしい。


 パパさんが会社を辞めてYouTuberになったことを聞いて、怒鳴り込んできたようだ。


 いやもう、ケチョンケチョン。

 バカなことやってないで働け! だって。

 うん、オレもそう思う。

 再生回数がもうちょっと多ければともかく、一桁じゃ言われるよね。


 顔をパンパンに腫らしたパパさんが、黙ってオレをお婆ちゃんの方に押しやる。

 途端にお婆ちゃんがオレをワシャワシャ撫で始める。

 うわ、うわ、何をする! やめろぅ!!



 ……なんか知らんけど、お婆ちゃんは納得して帰っていった。

 まぁ頑張んなさいよ、だってさ。

 え? いいの? それで。

 YouTuber、辞めさせたほうがいいと思うな、オレ。


 どんまい、パパさん。

 そして今日も日が暮れる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る