第8話 橋

 オレの名前は『みたらし』。

 二歳の柴犬だ。


 目の前に木の橋がある。

 パパさんがカメラを構え、渡れと言う。


 いーや渡らない。

 絶対渡らない。

 断固拒否します。


 だってこれ、隙間から下の川が見えるよ?

 チョロチョロとしか水の流れてない小さな川だけどさ。

 ヤダよ、怖いもん。



 くっちゃ、くっちゃ。


 あぁ! しまった!

 ササミに釣られて、つい渡ってしまった!

 どうしよう、もう戻れない!

 この道はもう通れない。

 震えが止まらない!


 見かねたパパさんが、オレを抱えて渡ってくれた。

 いや、降りないよ?

 オレはパパさんに必死でしがみついた。

 そのまま自宅まで運んでいけ。


 帰宅してから、パパさんはずっと、腰を叩いている。

 腰への負担が相当あったらしい。


 どんまい、パパさん。

 そして今日も日が暮れる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る