第9話 鍋

 オレの名前は『みたらし』。

 二歳の柴犬だ。


 みんなは、アルミ鍋というものを知っているか?

 昔のドラマなんかに出てくる金色の鍋だ。

 IH全盛の今、なかなかお目にかかれないシロモノだが、なかなか味があっていいものだ。


 うちもIHなのだが、なぜかこの鍋がある。

 どこから持ってきたのか知らないが、これがオレの餌入れだ。


 こじゃれたものなんかいらない。

 要は、中にちゃんとゴハンが入ればいいのだ。


 今日のゴハンも、カリカリだった。

 うん、ドライタイプのドッグフードというやつだな。


 よし、完食したことだし、今日の散歩は、この鍋を咥えて歩こう。


 どうだ。カッコいいだろ?

 オレは胸を張って歩く。


 通りすがる人がクスクス笑っている気がするが気にしない。

 パパさんは、なぜだか恥ずかしがっているようだ。


 なんだい、こんなにカッコいいのに。


 どんまい、パパさん。

 そして今日も日が暮れる。

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