第7話 犬服

 オレの名前は『みたらし』。

 二歳の柴犬だ。


 オレは、パパさんが得意満面で出してきたものを見て、唖然とした。

 犬用の服だ。

 つまり、オレが着るための服だ。


 パパさんは、自腹でこいつを買ってきたようだ。

 この前、ママさんにこづかい、減らされたばかりなのに。


 インスタ映え、とやらを狙ってのことらしい。

 それを着ることで、再生回数が増えるとでも?

 そんなわけあるか。


 やめろ!

 そんな窮屈なもの着たくない!


 ……黄色のワンピースを着させられた。

 オレ、オスだぞ?

 メス用、着せてどうするんだよ。

 しかもサイズが合ってないから、キツくてしょうがない。


 パパさんがカメラを構える。

 固まるオレ。

 動けるか! こんな格好で。


 結局パパさんは、一歩も動かないオレに根負けした。

 後日、オレのケージの中で丸まってるワンピースを見つけたパパさんは、ズタズタに引き裂かれているのを見て、かなり落ち込んでいた。


 どんまい、パパさん。

 そして今日も日が暮れる。

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