贈り物 4

 僕は三十分程で、目が覚めた。重い頭を持ち上げてまず、僕は本棚の上に置いてあるデジタル時計を確認する。母が帰ってきているのに寝ていてしまったらたまったものではない。せめて、勉強のふりをしなければと僕は常日頃自分の中で言い聞かせていた。

 よれよれとした足でなんとか問題集と筆箱をとり、僕は机にそれらを投げるようにして置いた。乱暴に問題集を開くと、筆箱から一本の鉛筆をとり、僕は計算式を書き始めた。決して美しいとはいえない式を淡々と書き、機械のように答えを出していく。

 僕がひたすら勉強を続けると、ついに母が帰ってきた。僕は鍵が開錠される音を聞いたあと夕食を食べに行くまで母のことも気にせずに問題を解いていった。僕は夕食から戻ってきた後、vrゴーグルの入っていた段ボールをカッターで細かく分解した。当然、誰にも足がつかないようにする為である。

 (紙ごみを捨てる日にゴミ捨て場に捨てておくか。親にばれるなんて御免だからね)

 僕はその後、学校の課題と復習に時間をかけて行い、部屋で軽い運動をしていた。

 (まぁ、学校でこういう風にやれと言われた以上はある程度理屈にそっているから効果はあるはず…)

 十五分ほど続けた後、僕は風呂に入った。風呂から上がると再び、自分の部屋に戻る。僕は一日の多くの時間を自分の部屋で過ごしていた。唯一部屋の外に出るのは夕食と風呂の時のみであった。

 一連のことが終わると既に僕の就寝時間が差し迫っていた。僕は今日の出来事を日記に残すと、部屋の電気を消した。

 しかし、僕はなかなか寝付くことができなかった。それは、当然アボスの件が気になって仕方がないからである。僕はベッドに備え付けてある小さなランプをつけて、引き出しを探る。そこから徐にvrゴーグルを取り出した。決していまから試してみようとは考えていなかったが、僕の子供じみた好奇心がそうさせたのだ。そっとゴーグルを目の位置まで持ち上げる。バンドを緩めると、そっとゴーグルを自分の頭にかぶせてみた。頭部のバンドから頭全体をヘルメットのようにして取り付けられたゴーグルはとても動き回るには重いようにも感じた。僕の目の前は当然暗闇である。この先に何が見えるのだろう。僕は妄想した。目の前に恐竜が現れるのか、それとも幽霊が現れてそれを退治するのか。光のささない暗闇の中で僕は光をまとったような明るい妄想を続けていた。

 (明日あたりにやってみようかな?)

 そう応えて僕はゴーグルをしまい、再びベッドへと潜った。

 西側の窓からは星がこちらに優しい碧き光を届けてくれる。暗闇のはずの夜空はまたゴーグルの中の暗闇とは違うのだと僕は今にも消えそうな意識の中で思った。月が窓から自分を照らす前には僕は穏やかに寝息を立てていた。



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