5月29日 お題:悪堕ち・『報われること無き思い』
爆発で崩れ行く建物の中、私はその元凶である、私の相棒と対峙する。
「どうして……貴女が……っ!」
「分からないだろうね、君には」
「貴女の事、いい相棒だと思ってたけど…… それは私だけだったの?」
問いかけると、彼女は少し寂しそうな、複雑な表情を浮かべた。
「君のことは、最高のパートナだったと思っているよ。今でもね。それでも、いつの頃からか……私の中には君に対する憎しみが芽生えて、そしてそれがどんどん膨らんでいった…… 今ではもう、君を殺してしまいたくて仕方がないほどに……」
「どうして、そんな……」
『やっと繋がった! 先輩! 無事ですか!?』
先ほどまでノイズを上げていた通信機が回復したようで、話を遮るように少女の声が響いた。
「ええ、無事よ!」
『良かった…… でも、油断はできません。できるだけ早く、お二人で脱出を!』
「……残念だけど、それは無理ね。ここから出られるのは、私か彼女か、どちらか一人だけ。もう切るわ。……脱出したら、また連絡する」
『え、ちょっと!? それって、どういう――』
戸惑う彼女をよそに、私は通信機の電源を切った。
「……ごめんなさい、邪魔が入ったわね」
「……」
彼女は押し黙ったまま、私と通信機を憎々しげに睨み付けている。
「どう、したの……?」
「なに、やはり私は君を殺さなくてはいけないと、そう実感しただけさ」
「そう。でも、残念だけどそうはいかないわ。裏切り者に負けるわけにはいかないし、それに……私が死んだら、あの子が悲しむから」
「……そうかい」
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