一日一百合

蛇石葉月

5月28日 お題:悪堕ち・『悪魔でもいいよ』

 ――劈く悲鳴、舞い散る鮮血。

 空から舞い降りた悪魔のような少女は、私を虐めていた奴らを瞬く間に物言わぬ肉片へと変えてしまう。それから、彼女は私に近づいてきて、手を差し出した。

 角や翼などを除けば、少女の風貌はまるで、私の幼馴染そのものだ。

 混乱しながらも、私は差し出された手を取り立ち上がった。

「君は……」

「見たままよ。私は悪魔になったの。それで、もう貴女とも一緒にいられないから、最後のお別れに。思い出代わりに、ちょっとした"贈り物"も用意してね」

 背後の惨劇を示しながらそう言って、飛び立とうとする彼女。

「待って、行かないで! 悪魔だっていいから…… 一緒にいてよ……」

 私が必死に引き留めると、彼女は金色の瞳を輝かせ、振り返った。

「へぇ……? 悪魔と一緒にいたいなんて、変わってるわね」

 彼女は、口元を邪悪に歪め、今まで見たことがない表情をする。

「お望みとあらば、一緒に居られるようにしてあげるわ。後悔しないでね」

 彼女の瞳が一際輝き、私の意識は急速に闇の中へと堕ちていった……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る