プロローグ2 拷問の始まりと期待

「さぁ、楽しい楽しい遊び部屋に到着だ。とりあえずは椅子に座れ。抵抗は無駄だと知っているだろう? いつものように手首と足首を固定するが、暴れんじゃねぇぞ」

「あらぁ、せっかくのご褒美がもらえるのに暴れたりなんかしないわよっ。ほらぁ、早く縛ってちょうだいっ。キツくしてねんっ♪」

「ったく、何で遊び部屋に着くとオカマみたいになんだよ。気持ちわりぃ」


 少年は拷問官を怖がる様子もないままに、素直に座り、手足を縛られる。

 だが、拷問官も慣れたもので、悪態をつきながらも楽しそうに準備をする。

 拷問官は少年の要望通りにキツく手足を縛る。


「んあっ」


 少年は拷問官を気にした様子もなく、手足を縛られる感覚に吐息を漏らす。


「チッ!! キモイんだよ!!」


 拷問官は苛立った様子で、少年の頭を思いきり殴りつけた。

 側頭部を遠慮なしに殴る拷問官に対して、少年は見えないように恍惚の表情を浮かべる。


「うっ、ううっ」


 少年はまるで痛みに泣いているかのように、押し殺した声を漏らす。

 そんな少年を拷問官は気にした様子もなく殴る。 殴る。 殴る。

 少年は顔を俯けたまま、されるがままに殴られ続ける。


「んんっ……、んぁっ……」


 少年から声にもならない声が漏れる。

 その声には、痛みに耐えるような雰囲気が確かにあった。

 だがそれ以上に、少年の声には異常なまでの興奮が含まれていた。

 拷問官は痛みを少年に与えているという事実に興奮したのか、彼の様子に全く気付いていなかった。

 そして、拷問官は少年の様子に気付かぬまま、拷問器具を取るために彼に背を向ける。

 拷問官の見えないところで、少年は確かに興奮していた。


「はぁはぁ……。んくっ、んんぁっ……、はぁはぁ」


 興奮を隠そうとしているが、少年の息遣いをしっかりと聞けば、彼が異常なまでに興奮しているのが分かるだろう。

 少年は更なる痛みに期待し、興奮を高めていく。


(あぁん♪ たまらないわぁ♪ この痛み! 痺れ! 熱さ! 最高ぉ……。最高よぉんっ。次は何をしてくれるのかしら。爪を剥ぐ? 髪を引きちぎる? 焼き印を押す? 歯を抜くのもいいわね……。この前の子は、目玉を焼きながら抉ったのよねぇ……。あれは我ながら興奮しすぎたわね、責められ足りなくて煽っちゃったもの。さぁ、この子は何を持ち出してくれるのかしら、楽しみだわぁ……)


 そんなことを少年が考えているとは知らない拷問官は、楽しそうに手に持ったものを彼に見せようとする。

 だが、少年は敢えて拷問官に顔を向けない。

 そんな少年の様子に苛立った拷問官は、彼のボサボサに伸びた髪を掴み、乱暴に道具を見せつける。


「おらぁっ!! てめぇみてぇなゴミの為に、これをくれてやる!!」


 そう言った拷問官の手にはムチが握られていた。

 それも拷問用に、より強力な衝撃を与えるためなのか、金属で出来た棒状のムチだった。

 性的な行為を目的として作られた道具ではないが為に、より強烈な痛みを与えるだろう代物であり、下手をすれば一発でショック死する可能性もある。


 だが、少年はそのことを知らなかったようで、密かに落胆していた。

 他の拷問官もムチを使ってきたことがあった為に、少年は痛みの限界を想像できてしまったからだ。

 ただ、少年の知らぬところだが、他の拷問官はより遊べるように、彼を殺さない為か、材質も形状もより弱い代物を使っていた。


 そして、少年は落胆した表情を隠しもせずに乱暴な口調で拷問官を煽った。煽ってしまった。


「チッ! 今更ぁ! ムチ程度じゃ感じないのよぉ!! このフニャ○ン野郎が!! それでもやる気あンのかよぉ……。部屋来てすぐ殴ったくせに、ひよってンのかぁ?! 少しは楽しめそうかと思ったのに、ンの程度かよ……。他の野郎に代わってくンない? アンタに興味なくなったわぁ。もっといじめてくれる人が良かったのに。今日は外れだったわねぇ。ッペ!」


 少年は言いたい放題に罵った後、拷問官に唾を吐きつけた。

 唾を吐かれた拷問官はというと、呆然とした表情をしていた。

 だが、少年の言葉をじわじわと理解してくると、顔を伏せて身体を震わせ始める。

 震えが止まった拷問官は、ムチを持った手を静かに持ち上げた。

 少年はそんな拷問官の様子に話を聞いていなかったのかと、呆れていると……。


 スパァァァァァァアアアアアアンッ!!!!!!


 凄まじいまでの破裂音が彼の左手から聞こえてきた。

 そして、一瞬の静けさが部屋に訪れたあと。


「うがぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!!」


 獣のような悲鳴が少年の口から飛び出した。

 少年は何が起こったのか全く理解できていなかった。

 拷問官が手を振り下ろした状態から、ムチを当てられたのだと分かった。

 だが、少年はこれまでのムチの痛みよりも強い痛みに、理解が全く追いつかなかった。


 少年は縛られているが為に打たれた左手を抱えることも出来ないまま痛みを堪えた。

 鋭い痛みを堪えていることで少年の表情は歪められているだろうと、拷問官は期待していた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る