生まれながらの奴隷は演じてる
ソラゴリ
1章 始まり
プロローグ1 牢獄
カクヨム初投稿の作品になります。
プロローグ分は毎日投稿いたします。
以降は、月・水・金曜日の午前7時ごろの更新となります。
よろしくお願いします!
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薄暗い牢獄。
一直線に伸びた廊下の左右には、まるでウサギ小屋を連想させるかの如く小さな箱のような部屋が等間隔に並んでいる。
牢獄内の雰囲気は暗く、廊下の端には蜘蛛の巣がそこかしこに仕掛けられ、肌寒い空気が不気味で陰鬱な印象を強めている。
不気味な印象をさらに強める要因として、等間隔に配置された部屋の扉から人の声が漏れていることがあげられる。
そもそも牢獄という存在自体にマイナスなイメージを抱くのは禁じ得ないが、ここの牢獄にはもっと強くマイナスな感情を抱いてしまうだろう。
その理由は……。
「っつぁぁぁぁああああ!!!!!!」
「うがぁぁぁぁああああ!!!!!!」
「ころせぇぇぇぇええええ!!!! ころせよぉぉぉぉおおおお!!!!」
牢獄の最奥から、定期的に悲鳴や死を願う声が聞こえてくるからだ。
悲鳴の理由を牢獄に囚われた者たちは嫌というほど知っている。
何故なら、この牢獄に囚われようものなら、一度は牢獄の最奥に連れていかれるからだ。
牢獄の最奥で何が行われているのか……。
それらは、最奥の部屋の主たちは”しつけ”や”遊び”と称している行いだ。
そのしつけ、あるいは遊びは一般的な観点から見たら”拷問”と呼ばれる。
牢獄に囚われている者たちは、みな最奥の主たち、つまりは拷問官たちに目を付けられないように、拷問での傷跡の痛みを耐え、息を潜め、ただ死んでいるかのように気配を消し、毎日を生きながらえる。
そんな状況だからか、牢獄に収監されている者に正気の者など一人もいなかった。
そして、拷問官もまた狂っていた。
他者に痛みを与え、悲鳴を聞き、他者の苦しみを見て楽しむ者たちに正気を保っている者などいるわけもない。
この牢獄は、一般的な感覚を持つ者たちから見たら地獄と例えても過言ではなかった。
そして、その地獄にとある少年がいた。
その少年もこれまで何度かの拷問を受けていたが、これまでの拷問での反応が他の者とは異なるがばかりに、執拗なまでに拷問を受けていた。
そんな少年は今日もまた拷問官の元へと送られる。
「ぁぁ……、今日もまた痛いことされるのかなぁ」
泣きそうな気弱な声で少年は呟く。
その少年の言葉に返事をする人間はいない。だが。
「されるだろうなぁ。あいつら俺たちを泣かせてぇんだろうよ……」
先ほどの少年からは考えられないような荒々しい口調で、返事を返す。
まるで、少年が一人二役で会話しているように見える。
そんな中、さらに少年から別人のような口調で言葉が発せられる。
「あらぁ……、声を出していいなら、淫らに誰もが興奮するような声で鳴いてあげるわよぉ~?」
次に登場した人物は誰だろうか。
女性のような口調ながら、嫌悪感を感じさせるような間延びした言葉だった。
その後も、少年は一人で話し続ける。
「
お前の”なく”は意味がちげぇだろうが。気色悪いんだよ、黙ってろ変態。
やぁん、そんな乱暴な言葉はだ・め・よ? 興奮しちゃうわぁんっ。
マジできめぇ……。てかよ、俺らは全員で一人だろうが。誰が泣こうが一緒だろうが。
まぁ、そうだけどぉ。でもぉ、声の出し方で印象は変わるものよぉ?
きめぇなぁ。まぁ、俺とメインは痛ぇの嫌いだから任せるわ。
やぁんっ。痛みの快楽が分からないなんて、もったいないわぁ。
うるせぇ。分かりたくもねぇわ。おら、そろそろ遊び部屋だ。変態、いつも通りに我慢してろよ?
分かっているわよぉ。任せておきなさい。あぁ、今日はどれくらい気持ちよくさせてくれるのかしらぁ、た・の・し・み♪
じゃ、僕も引っ込むね……。
はいはい、早く引っ込みなさいよ。あんた、そろそろシャキッとしなきゃメインの座、奪うわよ。
う、うん。
チッ
」
少年は、ぼそぼそと複数人が会話をしているかのように言葉を発している。
そこにいるのは少年一人であるはずなのに……。
そんな少年は遊び部屋、つまりは拷問部屋に連れていかれている最中だった。
少年を連れているのは、彼に拷問を施す拷問官だった。
少年の近くを歩いている拷問官には、もちろん彼の言葉が微かながらも聞こえている。
「ったく、今日も長い独り言だったなぁ。気持ちわりぃなぁコイツ」
どうやら狂っているだろう拷問官でも、少年は気持ち悪く見えるようだった。
あるいは、不気味だとも思っているかもしれない。
その不気味さを増す要因を、拷問官は思い出すように言葉をこぼす。
「つぅか、コイツだけ他と違って傷が治るのが早いんだよなぁ。な~んかスキルでも持ってんのかねぇ。何にしても気持ち悪いなぁ、コイツ」
狂っているはずの拷問官が思わず言葉をこぼすほどに、少年は異質だった。
さらには、これから拷問を受けるというのに悲壮感や拷問への拒否感というものも全く感じられなかった。
拷問官からしたら不気味で仕方ないだろう。
だが、この牢獄の拷問官たちも狂ってしまっているだろうが故に、心底からの嫌悪感を少年に抱いていないようだった。
その証拠に拷問部屋に近づくにつれて、拷問官の頬には隠しきれない笑みが浮かんでいるのだから。
そして、拷問部屋に着くころには、拷問官の表情は人間とは思えないような恐怖を覚える笑顔になっていた……。
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