対峙の果てに 5

 はたと、目蓋を上げる。


 見慣れた天井が、カレルを優しく出迎えた。


 ここ、は。ぼうっとしたままの視界で、辺りを見回す。……ラウドが寝室に使っている小部屋と繋がっている、カレルが普段使っている従者用の小部屋だ。戻って、きたのだ。


「気が付いたのか?」


 不意に聞こえてきた明るい声に、こくんと頷く。顔を上げると、リュングのうねった黒髪が視界に入ってきた。


「全く、レギがかんかんだったぜ。制御できない魔術を勝手に使うなって」


 意識が戻るにつれ、夢の中で被った全身の傷の痛みも蘇る。次の瞬間、カレルはリュングの袖を強く掴んで起き上がった。


「ラウド様は!」


 目眩とともに、リュングの肩に鼻をぶつけたカレルの耳に、低いリュングの声が響く。


「生きては、いる」


 逢わせてやるよ。そう言って、リュングは焦るカレルの身体を難無く持ち上げると、ラウドの部屋に続く扉を開けた。


「カレル!」


 明らかに怒っているレギの声を耳にする前に、そのレギの向こうに見えるベッドの方へ手を伸ばす。ラウドは、清潔なベッドの上に力無く横たわっていた。


「眠っている、だけだ」


 ラウドの方へと身を寄せたリュングが、小さく呟く。


「何をしても、目覚めない」


 悲痛に響くリュングの声に、カレルは低く、呻いた。

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