対峙の果てに 5
はたと、目蓋を上げる。
見慣れた天井が、カレルを優しく出迎えた。
ここ、は。ぼうっとしたままの視界で、辺りを見回す。……ラウドが寝室に使っている小部屋と繋がっている、カレルが普段使っている従者用の小部屋だ。戻って、きたのだ。
「気が付いたのか?」
不意に聞こえてきた明るい声に、こくんと頷く。顔を上げると、リュングのうねった黒髪が視界に入ってきた。
「全く、レギがかんかんだったぜ。制御できない魔術を勝手に使うなって」
意識が戻るにつれ、夢の中で被った全身の傷の痛みも蘇る。次の瞬間、カレルはリュングの袖を強く掴んで起き上がった。
「ラウド様は!」
目眩とともに、リュングの肩に鼻をぶつけたカレルの耳に、低いリュングの声が響く。
「生きては、いる」
逢わせてやるよ。そう言って、リュングは焦るカレルの身体を難無く持ち上げると、ラウドの部屋に続く扉を開けた。
「カレル!」
明らかに怒っているレギの声を耳にする前に、そのレギの向こうに見えるベッドの方へ手を伸ばす。ラウドは、清潔なベッドの上に力無く横たわっていた。
「眠っている、だけだ」
ラウドの方へと身を寄せたリュングが、小さく呟く。
「何をしても、目覚めない」
悲痛に響くリュングの声に、カレルは低く、呻いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。