第12話 獣人を守る城壁
ーー 偶には人族も助けるよ
その後僕らは、ギルドの要請に応じて魔物狩りを行うことにした。
毎日僕らが狩ってくる魔物は、今までの数十倍の数と量。
その影響はすぐに現れた。肉屋の店先に魔物や獣の肉が並べられていったのだ。
大量の肉は、価格の低価格化にも寄与し。多くの王国民が肉にありつけるようになった。
この影響は、冒険者ギルド内にも影響を与え出す。
今までは適当な魔物を狩ってきて、ギルドで買い取って貰えばそこそこの金になった。
しかし今では、そんな小物では買取さえ満足にして貰えないほど。
王都のギルドに居る冒険者は、必死になって魔物を狩り始めた。
あの時絡んできた冒険者も、僕らを見ると小さくなっている。
◇
ギルマスの執務室。
今日も夕方、魔物を狩って買取に出すと。ギルマスが呼んでいると知らせが来た。
「連日の魔物狩り感謝する。そこで改めて依頼を受けてもらいたい。」
と言うと、潤沢になった食料を王国内5つの街に運ぶ警護依頼の話だった。
そこで僕は、
「5つの街なら5人を派遣し、緊急性の高い場所のみ警護依頼を受けよう。」
と答えたのだ。
するとギルマスは
「お前達のパーティーは一人一人がそこまで実力があるのか?」
と尋ねるので
「彼女らも個人の実力はAランクですよ。」
と答えておいた。
僕はギルマスの依頼を受け、ここから馬車で5日の街「エルドラド」に向かった。
残りの街4つについては、ドンガとフユーリーを組ませた以外は単独で街に派遣した。
馬を使うより走った方が早いので、猫獣人に変化した後エルドラドの街に向かうと2日で着いた。
先ずはギルマスの紹介状と依頼状をギルドで見せた後、解体場に多くの魔物を出した。
その中には来る途中に狩った魔物も多く含まれている。
その後周辺の魔物を5日にわたって狩り尽くすと、スッカリ魔物の姿を見なくなった。
同じように残り4つの村に派遣された彼女らも同じような感じで。
王国内の食糧危機と魔物の危機は同時に無くなった。
ーー この国の名は何だったかな?
この時僕は初めてこの国の名前を聞いていないことに気付いた。
エルドラドの街のギルドで
「この国の名は?」
と聞くと受付嬢が不思議な感じで
「ここはサザンクロス王国ですよ。王都から来られたと聞いていたんですが・・・。」
と教えてくれた。
周辺の国が記載された地図を見せてもらうと。
オムニバスから深淵の森を挟んで、南南東に位置する小国だと分かった。
魔物が多いのは多分僕がかなりの魔物を狩り尽くしたせいで、溢れ出た魔物がこの国に流れたせいだと思われた。
◇
王都に戻る。
王都に戻り、ギルマスに任務完了の報告をすると。
「お前のランクをSにあの子らをAランクにすることが決まった。」
と言いながら一つの手紙を手渡しながら。
「サザンクロス王国の王家からの感謝状とSランク授与式の招待状だ。」
と言われた。
宿に戻ると、3日のうちにアイらがそれぞれ任務を完了し宿に戻ってきた。
僕は皆に
「冒険者ランクの変更があり、僕は王城でSランクの授与式があるようだ。」
と伝え皆にAランクになったことを伝えた。
◇
サザンクロス王国の王城内。
国王のクリスタル=G =サザンクロスが、宰相に
「3日後の準備はできているのか」
と確認してきた。
この王国の窮地を救った冒険者カムイの授与式の事である。
「国王問題なく準備できております。その後晩餐会も問題ないと申し上げます。」
の言葉に一安心した国王は。
これからの事について悩んでいた。
この様な食糧危機や魔物の増加は今後も予想される事態である。この国の冒険者は実力がないものがほとんどで、同じ事があれば今回と同じ危機を迎える事になる。
そこで何とかカムイの達をこの王国に止めることはできないかと考えていたのだ。
「爵位を受けてくれてこの地に留まってもらえれば・・・。」
と独り言を呟くのであった。
◇
3日後。
僕らはサザンクロス王国の王城に居た。
国王の謁見の間と言う場所で僕らは、国王直々に感謝状を手渡された。
引き続き呼ばれた僕は、国王からサザンクロス王国の法衣の爵位男爵を頂いた。
国王が語る、
「今回の危機は王国存亡に関わる危機であった。それを最小限の被害で収められた僕の働きは、何者にも変え難いものだと。出来れば領地を与えたいとこであるが、何故貧しい王国であるためそれも叶わない。
何か望みがあれば叶えよう。」
と言う話であった。そこで僕は
「深淵の森に接する場所から森の中を開拓しただけ領地として認めてほしい。」
と言うと、
「そんな事でいいなら王国側の領地は魔物が溢れやすいため、王家の土地になっている。そのままそこを領地として与えるので、できる限り開拓してほしい。」
と言う答えだった。
これでオムニバスまでの森を開拓すれば、オムニバスの領地が広くなるし人族の王国からの庇護もできる。
いい事尽くめの話になってきた。
カムイは、めでたくサザンクロス王国の貴族の地位を確保した。
名をカムイ=ロード男爵と改めた。
ーー オムニバスに戻る。
サザンクロス王国の国王にドーゾン王国に戻り、準備をした後戻ると話をして王都を出る事になった。
皆に
「今度は、オムニバスの領地とサザンクロス王国の僕の領地をつなげる様に森を開拓するので、今後ともよろしく。」
と言うと皆
「「「「「もちろんです。よろしくお願いします。」」」」」
と答えてくれた。
転移魔法でオムニバスに戻ると、旅に出る時よりも栄えている感じのするオムニバスの街があった。
屋敷に入り家宰のアルデヒロ(犬獣人)に挨拶をして、元の村長らを呼んでもらった。
皆が集まったところで僕は、
「今回の旅で、オムニバスから森を挟んだ南側のサザンクロス王国という国で僕は、貴族位と領地を拝領した。そこでオムニバスとその領地を森を開拓してつなげようと思う。」
と話をすると。
元村長が
「カムイ様、このオムニバスも多くの獣人が入植してきて、手狭になって来ていました。丁度良い機会だと思います、領地を広げ可能ならカムイ様の領地に獣人を住まわせてください。」
と言うと他の者も頷いていた。
僕は皆の顔を見ながら
「一番の問題であった、ゼンブラ王国とアリスト聖王国はこれまでの様に獣人を亜人と蔑むことは少なくなるだろう。僕の領地に安住の場所が確保できればさらに良いと考えている。皆の協力を頼むよ。」
と言うと皆立ち上がって拍手で賛成してくれた。
ーー 森の開拓と人族至上主義の発端
僕はアリエルらをオムニバスに残し1人ゲッコウを連れてサザンクロス王国に戻った。
宰相から領地の地図をもらい杭打ちに向かった。
杭打ちと言っても杭を打つ代わりに、土魔法で壁を作る事にした。
これが完成すれば、森からの魔物は壁にゆく手を塞がれる。
目印になる場所に高さ50m程の塔を建ててゆく。
間隔は2kmで、10個ほど建てた所で終了。その後はその間に高さ20mの石の城壁を建てて行く。
流石に大規模な工事のため、1日で一区間が精一杯であったが、終わる頃には2つ3つできる様になっていた。
出入り用の門は、3つ作り詰所をそれぞれ併設した。
道は門を通る道を幅20mで、平な石畳を敷き詰めて行く。
それらが済むと、森の中に入り、オムニバスへ向けて森の中央やや東側に同じような城壁を南北に作って行く。
オムニバスまでの城壁が繋がったのが工事を始めて3ヶ月後。
この頃になると城壁を1日で100km建てることができる様になっていた。
この工事の関係で森の魔物が東西に分断された。
アリエル達には、被害側の領地となる開拓地の魔物を森の木ごと狩ってもらう事にしていた。
西側の魔物はゼンブラ王国とアリスト聖王国へかなりの数が溢れたが、王国を立て直した両国は何とか対応していた様だ。
森は開拓したからと言って、その魔素の影響が消えるわけではない。動物や樹木が異常に速く成長する性質を利用して、サザンクロス王国の穀倉地帯へと変えていった。
魔物さえ定期的に狩れば問題なく大きな成果を手にする事の出来る領地が誕生したのだ。
ーー サザンクロス王国の王家
冒険者カムイを王国の男爵として迎え入れて6ヶ月が経過したが、この報告には信じられないことが記載されていた。
深淵の森の開拓終了報告。
・深淵の森の約3分の2の領地を我がカムイ=ロード男爵領とした。
・北に接するオムニバスと言う獣人王国と国交を開いた。
・開拓地は現在、一大穀倉地として穀物の生産を行なっている。
と書かれ、その収穫の一部を収めにきたとカムイ男爵本人が来ていると。
国王と宰相は、
「直ぐにカムイ男爵に会うと伝えなさい。」
と取り次ぎの者に指示してカムイを待った。
「カムイ=ロード男爵お呼びに応じ参りました。」
と僕は声をかけると国王と宰相は座る様にと言いながら
「この報告書の説明をお願いする。」
と聞いてきた。
僕はこれまでの開拓の進捗状況を説明して、今では穀倉地帯へと一変し速くも収穫できた穀物を収めに来たと報告した。
「それで持ってきた穀物はどのくらいじゃ。」
国王は知りたくてたまらない様子で
「約100tの小麦であります。あの場所は魔素が濃ゆいため植物の成長が早く、約3ヶ月で実ります。ただ魔物が湧きますので、常々狩る必要性があります。」
と答えると
「100tとな。この国の一年の必要量を満たしておる。」
と驚きながらも嬉しそうであった。
さらに僕は、
「開拓地は非常に広く、いかに私でも魔物を全て狩る暇は有りません。そこで獣人王国と協力し、魔物を退治と耕作を依頼しました。」
と答えると宰相はが
「確かに話を聞けば広く危険の伴う開拓地。獣人の力を借りて上手く行くのであれば何も言うまい。」
と両手を上げて賛成してくれた。
さらに僕は、
「森を開拓した際に得る事になった、木材や薬草などの貴重な資源についても、王国を通じて商人に卸、この国の産業とすることを提案いたします。」
と提案すると、外貨を得る手段に納得に様だった。
僕は国王らの話を終えて自領に帰った。
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