第11話 教会の変化と旅

セリーナは最近教会の雰囲気が変わってきたことに気づいていた。


今まで、「早く亜人を根絶やしにすべきです。」と大きな声を上げていた。

ウルチマ最高司祭が急に大人しくなり他の最高司教にさえ

「亜人を差別することは、教えに背く疑いがある。」

と言い出したのだ。


さらに不思議な事に、次々に最高司祭が隠居したり、高みに登ったりし出したのだ。


かなりの数の最高司祭が様変わりして、代わりに今まで見向きもされていなかった、司祭が最高司祭へと変わっていった。


ある日セリーナは、ウルチマ最高司祭に声をかけられた。今までなら嫌な気分がしていたのだが、その時は何も感じなかった。


「はい。何の誤用でしょうかウルチマ最高司祭。」

と答えると。そのウルチマ最高司祭は、ニコリと笑いながら。

「貴方と獣人などが亜人と呼ばれる人々について、考えをお聞きしたいと思いまして。」

と答えたた。


そこで私は、父皇教が答えてくれない疑問を質問した。

「ウルチマ最高司祭、女神は人をどのように創造されたのでしょうか?私には序列を作ったという話が納得いかないのです。」

と言うと。


ウルチマ最高司祭は。

「良いところに気づかれました。私は最近、女神にお会いした際にこう聞かされました。」

と言う話をし出して。

「私(女神)は、人皆私の子供として創造しました。今「亜人」と呼ばれ不当な扱いを受けている子供達を目にして。悲しく思っています。思い違いを正しなさい。」

と言われたのです。


「私は今まで、人族が最も偉大で神に愛された存在だと信じていたので、驚きました。しかし私は償いきれぬ過ちを犯しています。なので後のことは貴方や若い司祭に任せます。」


と言うとサッサとどこかに行かれました。



その後暫くして、ウルチマ最高司祭が亡くなったと耳にしました。




           ◇



僕は今宿に戻っている。


今日教皇の娘に会ったが、あのような疑問を持つこと自体いいことだと思っています。

今後も時々様子を見ながら、信仰を変えさせましょう。



そんなことを考えていると、背中からゲッコウが念話を送ってきた。


「まだ一部の亜人排除を謳う者が武装していると、アイが言っていたよ。」

と。


そうです、この国の正教会の聖騎士と呼ばれる軍隊がおり。それを統率する男が強硬に排除を謳っており、武力に訴えようとしているのだ。


そこで僕は、5人を連れて街の外に出ると姿を獣人の変えてから。

魔法で聖騎士の宿舎めがけてファイア・アローを打ち込みました。


騒ぎ出す聖騎士ら、そしてそれ程せずに街の外の僕らに気づいたのです。


強硬派サザン武闘司祭が率いる、聖騎士の精鋭1000名が僕らの前に並び。

「貴様達が女神を恐れぬ亜人どもか。」

と恫喝してきました。


僕はそれに対し

「女神の使徒として告げる。誤った教えを捨て、信仰を正せよ。」

と。

するとサザン武闘司祭が

「女神の使徒を名乗る悪魔よ。成敗してくれよう。行け殲滅せよ。」

と聖騎士に号令をかけた。


僕が調べたところ、この聖騎士連中もかなり悪どいようでこの再始末する事にしていた。



1000人の聖騎士が殺到してくるが、僕は慌てず先ずは威圧を放つ。

そして重力魔法で20倍の重力をかけると、殆どの聖騎士がその場に倒れ伏した。

それでもレベルの高い10人ほどが僕の方に進んできたので、歩み寄り。


聖騎士の振るう剣や槍を叩き折りながら、1人ずつ手足を砕き動きを止めると。


鎧を剥ぎ取りながら。

「女神はお怒りだ。地獄で待て。」

と言いながら首を刎ねていった。


その後も、残りの約1000人を同じように首を刎ねて殺すと。

最後に残ったサザン武闘司祭に近づき。

「何か言い残す事があるか」

と問えば。

「命だけは助けてくれ。」

と命乞いを始めたので。

「女神はお怒りだ。僕はその執行者である。よく覚えておけ。」

と言いながら姿を人族に変えて驚くサザンに剣を振り下ろした。


僕らはそこで光に包まれるように空に登って消えた。


この様子を見ていた、王都市民は口々に。

「女神の怒りをこの国は買ってしまった。」

「女神の教えを曲げていたみたいだ、誰か早く元に戻してくれ。」

「天罰が次はどこに落ちるのか。」


と騒いだところで、雷撃を大聖堂に叩きつけた。


外の騒ぎで大聖堂には誰もいなかったため、怪我人は出なかった。

しかし象徴の大聖堂が瓦礫に変わった姿は誰の目からも。

「女神の天罰。」

と写ったのであった。


その後亜人と言う言葉を口にする者自体が減り、教えが全ての人に平和をと変わった事がいかに恐ろしかったかわかる。



このアリスト聖王国の話を聞いた他の人族至上主義の国は、半信半疑で対応に苦慮していた。




ーー  次の国へ



僕はアリスト聖王国を出る際にレミーに聞いた。

「レミーはこれからどうする?今と同じように僕らと旅をするかそれともここに残って新しい人生を送るか」

と。

するとレミーは、

「私はまだお父さんお母さんのことを諦めていません。この国で探しながら生きてみます。」

と言うので一つの手紙を渡して別れた。


その手紙にはこれから先の仕事先が書かれていた。


教皇の娘セリーナの世話係と。




            ◇



また6人と1匹になった僕らは次なる国に向かう事にした。


アイが

「カムイ様、次の国はどんな国でしょうか?」

と聞くので

「僕の聞いたところでは、貧しいがとても綺麗なところだと聞いている。」

と答えた。

「美味しい者があればいいのですが」

誰かの声が聞こえた、確かに食べ物がない国はとても悲惨だと分かっている。


そこそこの食料は持ってはいるが、果たしてどうなることかと想いを巡らせた。




              ◇



国境を越えた頃から、魔物が増え始めた。

これはちょうど良いとばかりに、食糧になる魔物を特に多く狩り収納していった。


4日ほど狩りをしながら進むと、村に着いた。

この村は、かなり大掛かりな柵を村の周りに築いているが大分壊れていた。


見張りの櫓にも人が見え、僕らが近づくと。

「そこで待て、何用でこの村に来た。」

と言うので。


「僕らは冒険者で、旅をしている。」

と答えると、

「あの山を超えてきたのか?」

と僕らの来た方向を指差すので

「そうです。アリスト聖王国から来ました。」

と答えると驚きながら門を開けてくれた。


村に入るとそこは、50世帯ほどの集落であった。

村長と言う男が現れこう言った。

「冒険者と言うことだが、この辺りの魔物が溢れ困っている。討伐してはくれぬか。」

と依頼をするので

「依頼を受けるのは構いませんが、この国のギルドには依頼してないんですか?」

と聞くと。


「貧しいこの国では、大した冒険者は居ない。依頼は以前からしているが全く聞いてはくれない。」

と答えてくれた。

そこで僕は、

「住むとこを用意してください。5日ほど魔物を狩って来ましょう。」

と答えた。




              ◇


次の日から、村周辺の魔物を6人で狩り始めると。

5日で500以上の魔物を狩り尽くした、しかも凶暴な物ばかり。

言い換えると美味しい魔物をかなりの数。


その内100匹ほどを村に卸して、村を出た。

村長は大層喜んでいた。ついでに土魔法で周囲の壁を修繕し、今以上に堅牢にしておいた。




              ◇



さらに進むこと、7日で大きな街に着いたがそれまでも、結構な数の魔物が湧いていた。


街は城塞都市のような雰囲気で、魔物の被害のために作物を作れず、食糧難が常の国のようだった。


城門を潜り街に入ると、結構な数の人がいるのが分かったが、活気はなかった。


冒険者ギルドの場所聞き、向かう途中にも飢えた子供の姿がそこらじゅうに見えた。


ギルドの入ると中は閑散としていた。


数人の男らが昼間から酒を飲んで騒いでいた。


受付に向かい声をかける。

「ここに来るまでに魔物を狩ったが、買い取りはしてくれるのか?」

と聞くと。

受付嬢は

「魔物の種類によりますが、食料となる魔物であれば大歓迎ですが・・。」

尻すぼみに言う。


多分僕らの姿を見てそこまで期待できないと、思っているんだろう。

すると騒いでいた男の1人が、アイらに声をかけ始めた。


「姉ちゃんら。コッチでシャクでもしてくれよ。金ならあるぞ。俺らCランクだからな。」

と大袈裟なアクションんで誘うのにアイらが

「クズめらが。」

と呟く声が聞こえたようで、男らが立ち上がり歩いてきた。


受付嬢は慌てて

「皆さん待ってください。ここで暴力は規律違反ですよ。」

と叫ぶが

「何だケリー。俺らがいなくなっても良いのか。食料が手に入らないぜ。」

と叫ぶと、受付嬢も黙るしかないようだった。


アイらが僕を見るので

「良いよ、裏で少しばかり手合わせしてもらいなさい。」

と言うと5人は、明るい顔で頷くと。近づく男らの首を掴み引きづりながら裏に姿を消した。


その様子を見ていたケリーと呼ばれた受付嬢は

「ええ!大丈夫ですか・・大丈夫そうでしたね。貴方は・・。」

と言うのでギルドカードを見せると


「Aランク!それじゃあの彼女らは。」

の言葉に

「Bランクだが既にA相当だと思うよ。」

と答えて、

「買取はどうするの?」

と再度聞くと

「お願いします。出来るだけ多く。」

と言いながら解体場に案内してくれた。


解体場で暇そうにしている、職員に

「今から忙しくなるぞ。早く来い。」

と声をかけ、次々と大物の魔物を取り出し。

倉庫を満たした。


その後受付嬢は申し訳ない顔で

「あれほどの量の魔物を買い取る現金が有りません。口座振り込みでいいですか?」

と聞いて来たので

「構わない。」

と答えてアイらを待つと一汗かいた彼女らが戻って来た。どうやら自分達で模擬戦をしていたようだ。


食堂で料理場の男に魔物の肉を取り出し。

「これで料理を作ってくれ。残りはやるから。」

とワイバーンの肉を差し出すと。

男は首を捻りながら

「これは何の肉だ」

と聞いて来たので

「ワイバーンの胸肉だ。」

と答えると驚きながらも早速料理し始めた。


暫くすると、美味そうな匂いが漂い、

「お待ちどう。先ずはステーキだ。」

と言ってエールと共に持ってきた。


僕は収納からミルクや果実酒を出しながら受け取ったエールを氷魔法で冷やして口をつけた。

「冷たくてうまい」

皆が羨ましそうに見るので皆の飲み物も冷やしてやった。



          ◇



ギルドを出た僕らは、ギルドで聞いた宿に向かった。


「「エルフの棲家」ここだ。」

と言いながら宿に入り声をかけると。奥から1人の女性が顔を出した。


そして暫く僕らを見ると。

「御用は?」

と聞いた。

「ここは宿と聞いたが、違ったのかな。宿なら部屋をとりたいが。」

と言うと、慌てた様子で

「申し訳ありません。少しばかり驚いていて。部屋ですね分かりました。これにお名前を」

と宿長を差し出した。


名前を書いた後、僕は

「食事用の食料は持ち込みだが良いかね。」

と聞くと

「それは願ったりです。余分にお持ちなら買い取りますが。」

と言うので、厨房に向かい

「どのくらい保管できます?」

と聞くと

「幾らでも」

の返事それならと。

100ほどの魔物と穀物に新鮮な野菜をかなりの量出してやった。


すると

「これほどお持ちとはありがとうございます。子供たちも暫くは大丈夫です。感謝します。・・・神よ。」

最後は聞き取れなかったが大層感謝してくれた。


そして

「どれほどココに居てくだされますか?」

と聞かれ

「魔物がいなくなる頃までかな」

と答え鍵をもらい部屋に向かった。



ーー 「エルフの棲家」の店主セザリー



この国ももうダメかもしれない。そう思い出した頃、神が現れた。


私はエルフのセザリー。愛する夫の故郷の宿を守る為に長い間この王都に住んでいる。

しかしもうこの国はダメそうだと思っていた。


子供は飢え、魔物は溢れる。

国は何もせず、ただ滅びを待つだけ。


そんな時に、6人のお客がいやもうお一匹古竜が居ました。

私はエルフで魔力や鑑定が使えます。


その客は若い男1人に女性が5人そして古竜が1匹。


女性らは姿を変えていたが全て獣人やエルフ。

しかもかなりレベルで、この辺りの冒険者では触ることすらできないでしょう。

でも驚きは彼女や古竜ではなく若い男です。鑑定も効かなければ匂いもしない。

これは神以外にない特徴です。この滅びかけた国に最後の時が訪れたのでしょうかそれとも・・・分からない。只今は、彼がくれた多くの食料を使い子供たちの飢えを満たさなければ。



私は裏の教会のシスター達を呼びつけ食料を渡しました。

喜ぶシスター達に一言

「これはこの世に姿を現した神からの施しです。これからこの国に何かが起こると思います。」

と。

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