第10話 スタンピードの後

ーー  次の街へ



所々魔物が破壊したと思える、施設や畑を見ながら僕らは旅を続けた。


「カムイ様、ここは死の匂いが強いです。」

アイがそう言ってきた。


周囲を見るとここは元々集落があった場所のようだが、ほとんど形跡が残っていない。


するとアイが

「誰かの声が聞こえます」

と耳を済ませた。

僕は気配察知のスキルを使い周囲を探すと、ある場所のちかから弱い気配が。

上の倒木や枯れ木を取り除くと、そこには井戸の形跡が。

どうやら井戸の底に誰かいるようだ。


穴を掘るように瓦礫を片付けながら、井戸の底にたどり着くと横穴が現れた。


横穴を進むと、10畳ほどの空間がありベッドが一つと机がひとつ置いてあった。


ベッドに少女が居間にも聞けそうな呼吸をして眠っていた。

衰弱しきって、意識を失っていたようだ。かなり危険な状況だ。


僕は回復魔法を使いながら様子を見守ると、少女は目を覚ました。


僕の顔を見つけると

「ありがとうございます。女神様。」

と呟いた。その後僕は少女に食事を与え、事情を聞くと。


スタンピード発生直後に、両親にこの井戸の奥で隠れるよう言われ今日まで井戸の底で1人耐えていたようだ。


少女のいた村自体存在が分からないほどの破壊の為、ここでの生活は無理だろうと思いながら、少女を保護しながら先に進むことにした。




             ◇


少女の名は、レミー12歳。


両親や知り合いの生存はほぼ絶望的である。


次の街でどこかの施設に保護してもらおうと考えながら、進むと遠くに城塞都市が見えてきた。


「あそこなら、魔物の進行を防げただろう」

と言いながら城塞都市を目指すと、不穏な雰囲気が漂ってきた。


城門をくぐり町の中に入ると、活気のない雰囲気が漂っていた。


宿を探しながら露天商などに声かけしながら情報を得ると、食糧や商隊が来ないと言うことで、食糧難に陥りかけているそうだ。


城塞の外の田畑は魔物の進行で荒れ果て、魔物が激減した今では食糧となりうる魔物の少ないようだ。


宿を見つけたが

「食事は持ち込みの材料がなければ、出ない」

と言われたほどだ。僕の場合かなりの量の魔物を収納しているし、穀物や野菜に魚まである。


幾らか大型の魔物を取り出し

「これで2日分よろしく。残ったらそちらで使ってもらって良いよ。」

と言いながら食材となる魔物を差し出すと、手のひらを返すように笑顔になった。



             ◇


冒険者ギルドにて、レミー一家または同じ村の生存者の情報を確認した。

現在まで情報はない。


そこでレミーを保護してくれる施設を確認すると、孤児院以外ないがそこもかなりの経営難だと答えてくれた。


僕は不思議に思い聞いてみた

「教会関係者は、別ルートで食料を調達しているようですが?孤児院は違うのですか?」

と。

すると対応した受付嬢が小声で

「孤児院は教会の運営ですが。方針は神父に任されているので・・・」

と口を濁した。

僕は心配顔で僕を見るレミーを見ながら

「心配ないさ。」

と答えながら、ギルドに僕の連絡先とレミーの情報を伝えしばらく旅を共にすることにした。



             ◇


宿に帰り、その旨皆に話すと意外と皆喜んでくれた。


2日後宿を後にした僕らはさらに王都向けて進み出した。



途中、何か呼ぶ声が聞こえた気がした。

「ん!また誰か僕を読んでるのか?」

声が聞こえた方を探すと、そこには瀕死の獣人が三人倒れていた。


よく見ると、

・犬耳の母親

・犬耳の姉弟

だった。

すぐに癒しと回復魔法を発動すると、母親が意識を回復して。


僕を見た途端、警戒し始めたが。子供らの怪我や衰弱が回復している状況にどう対応して良いのか悩んでいた。


僕はレミーの目線を避けて親子の前で姿を、猫獣人に変化させた。

「君たちはどうしてここで倒れていたの?」

と聞くと。どうも魔物に襲われここまで逃げてきたが、今度は人攫いに襲われそうになったと話した。


そこで僕は、

「行くとこがなければ獣人達の国があるが、そこで生活してはどうかと聞くと」

「噂できたのですが。本当にそんな国があるのですか?あればよろしくお願いします。」

と答える母親に、頷いて見せた後。


アリエルに

「少しここで待っておいて。」

と言付けして転移魔法で親子らを獣人国に送り届けた。


一瞬で風景が変わったことと、周囲にいるものが皆獣人だったことに驚く親子。

「ここで暫く体を休めてから、仕事を探しなさい。お金の心配はいらないから。」

と言いながら、宿に案内し

「3人を暫くお願いするよ。体が良くなったらいつも通り屋敷に案内してくれ。」

と宿の従業員に頼むと僕だけ転移魔法で元の場所に戻った。


レミーは、短い時間だったが。僕がいなかったことに気づいていたが何も聞くことは無かった。




ーー  犬獣人親子  side



私はバリー、アリスト聖王国の東、深淵の森の外縁に在る隠れ里に住んでいた。


隠れ里は、人口60人ほどの集落であったが平和な村であった。


しかし魔物のスタンピードが発生し、集落周辺にも魔物が溢れ出したため。


子供を連れて逃げ出したが、大きな怪我を負いさらに獣人狩りと思われる人族に追われたため、行き倒れすることになった。


子供は、10歳のシーラ、6歳のケニーで父親は3年前に狩りで命を落としている。


昨日、親子で気を失い死を待つだけと覚悟していると。

誰かが私たちに癒しの魔法を行使したのが分かった。

私の怪我はかなり深いものだったので、助からないと諦めていたが、それさえもきえていた。


すると人族の男の子が、その魔法を行使したのがわかった。

ただその子からは危険な匂いがしなかった、いや全ての匂いがしなかった。


混乱している前でその人族は姿を猫獣人に変化させ、私たちのことを聞いた後。獣人国に魔法で送り届けたのだった。


何もかもが信じられない話で、与えられた宿で目を覚ました子供と共に、無事を喜び食事に喜んでいましたが。

その後、少年が話していた宿の人に尋ねた所。


「あの人は、この国の建国の王だよ。明日にでも屋敷に連れてゆくから話はそこで聞くと言い。」

と言われた。

「この国の王様。彼の方が・・・。 」


そして今日、屋敷というとこに案内されると。家宰という人に紹介された。

「今まで大変だったでしょう。王が保護されたのですから、安心してここで生活してください。必要なものや仕事も紹介しますから。」

と言われ、夢のような状態が続いています。


私は女神に祈りました。一神教と呼ばれている女神ではありません、全ての人の想像主の女神を。




ーー   アリスト聖王国



アリスト聖王国の王都を望む所まで来ました。


遠くから見てもそこにある高く立派な教会が見えます。


王国民は先のスタンピードの影響で飢えているというのに、教会関係者はそれを助けることなく、自分たちの身を守ることに力を入れているこの国の。


僕はとても嫌な気がしてきました。

「この国の教えや考え方が、この世界の害悪のような気がする。」

そう思ったのです。


王都に入り、ギルドにてレミーを保護してくれる施設を確認すると。

同じことだった、ここには苦しむ国民を助ける教会関係者はほとんどいないようだ。



ーー この世界の害悪を切除する。



僕は今回、この世界に害悪しかもたらさない者を切除することにした。


皆を宿に休ませると、僕は新たなスキル変化のバージョンアップされた写身を使うことにした。


写身とは、誰かとそっくりに変身する魔法である。


先ずは、小さな教会に訪れる。

寄付をちらつかせ、神父と2人になると首を切り落とし殺す。

死体は収納し、服を洗浄してから神父に変神して服を着替える。


この魔法は相手を殺すことで記憶をもコピーできるのだ。


それから少しずつ、教会のトップに成り代わって行く。



           ◇


聖王国の王都にある大聖堂。


この国では国王は、教皇と呼ばれる。


教皇の下には、10人の最高司祭がおりその下にさらに10人の司祭が。


教皇の選出は、最高司祭が教皇の死後選挙で決めるのである。


今の教皇には、1人の娘がいた。

名をセリーナ15歳。


「お父様。教えてください。」

今日もセリーナは、皇教である父親に食い下がる。


彼女は一神教の教えに対して疑問を持っていた。

女神は本当に人族のみを他の亜人の上に置いたのか。という疑問だ。


何故なら、身体能力でも、寿命でも人族より数倍優れている亜人が存在する。


そこから考えれば、人こそ下になるのではないかと。


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